13 小学生で百連敗を止める!
そしていよいよ張高野球部のシャク連敗阻止を賭けた、
練習試合が始まろうとしていた。
場所は変わって張高のグランド。
今日は登校初日という事で学校は午前で終わりやったので、
午後一時半から試合が始まる事になっている。
そして今はもう午後一時十五分。
相手チームの小学生達も既にグランドにやって来ていて、
入念にウォーミングアップを行っている。
ピッチャーマウンドの位置から察するに、
グランドは小学生仕様に合わせているみたいや。
対する張高野球部の皆さんは、自軍ベンチの前で円陣を組み、
勝利に向けて熱心に作戦の打ち合わせをしていた。
一方俺は、入部したばかりでユニフォームもないという事で、
張高のベンチで試合を見学させてもらう事になった。
まあこのチームの実力を見せてもらうには、ちょうどええ機会やろう。
小学生相手ではあんまり参考にならんかも知れへんけど。
そんな中グランドの周りに目をやると、意外にも結構な数のギャラリーが居た。
サッカー部や陸上部といった運動部の連中に加え、
放送部らしき生徒達が、こちらにビデオカメラを向けていた。
何なんやろうかこの注目度?
ここの野球部って、意外と人気があるんかいな?
とか思っていると、傍らにやって来たキャプテンが、険しい表情で言った。
「あいつら皆、俺らが百連敗すんのを見に来とんねん」
「え?応援の為やなくてですか?」
「おう、あいつらは俺ら野球部をバカにしとるからな。
むしろ相手の小学生チームの方を応援しに来とるはずや」
「何か、自分の学校のグランドやのに、えらいビジターな雰囲気ですね」
「そやけど俺らはこの程度の事ではくじけへん。
必ず勝って、俺らを邪魔モン扱いするあいつらを見返したんねん!」
「その意気ですキャプテン!
小学生チームの二軍に勝ったとしても、
大人気ないと馬鹿にされるだけかも知れないですけど、
とにかく頑張ってください!」
「おう!任せとけぃっ!」
気合満々にキャプテンは言い、
他の部員達と共に、元気良くグランドへと飛び出して行った。
そして暫くして、試合開始時刻の一時三十分を迎えた。
整列して互いに礼をした後、
後攻の張高野球部ナインは、それぞれの守備位置に散った。
(ちなみにキャプテンのポジションはショートやった)
そして相手チームの一番バッターの小学生
(一年生らしい)がバッターボックスに入ると、
球審の『プレイボール!』の声と共に、
張高野球部の意地と恥を賭けた闘いが始まった!
 




