10 意外と鍛えられた肉体
「つ~かま~えたっ! 」
そう言って碇は、まるで女の子が彼氏にやる様に、
俺に背後から抱きついてきた。
その瞬間、俺の全身にサムイボ(鳥肌の事 )が立ち、
「何すんじゃい! 」
という怒りの声と共に、俺は碇の手を振り払い、
その華奢な体を突き飛ばした。
「うわぁっ⁉ 」
その衝撃で後ろへよろめく碇。
手加減なしで突き飛ばしたから、そのまま後ろへすっ転ぶかと思ったけど、
意外にも二、三歩よろめいただけで、転ぶ事なくその場に踏みとどまった。
こいつ、見かけによらず下半身が強いな。
と、内心思っていると、胸元を右手でさすりながら、碇は言った。
「うぅ~、ひどいよ正野君 」
「お前がいきなり後ろから抱きついてくるからやないか! 」
「だからって、いきなり僕の胸を触るなんて……… 」
「アホか⁉男のお前の胸なんか触って何が嬉しいねん⁉ 」
「いくら恋人同士だからって、こんな所ではちょっと…………… 」
「だ!れ!が!恋人じゃ⁉お前の胸が何ぼのモンじゃい! 」
こいつのホモさ加減にブチ切れた俺は、
右手でこいつの左の乳首辺りを思い切りつねり上げてやった。
と、その時、こいつの胸板に、
これまた意外にもガッチリと筋肉がついている事に気づいた。
こいつ、こんな華奢な体で何て筋肉をしとるんや。
もしかして中学の時に、何かスポーツをやっとったんか?
とか考えながら、更に碇の乳首を強くつねり上げた。
すると、いくら鍛えとっても痛いモンは痛いので、
その例に漏れず、碇の奴も痛がった。
「イタタタ!痛いよ正野君! 」
しかし俺は構わず碇の乳首をつねり上げた。すると、
「あ……あぁっ♡あ……あ……ガクッ♡ 」
碇はク○バラカズオのように昇天した。
「何でやねんアホ! 」
つねっていた乳首を離して碇の頭をはたく俺。
もうホンマにカンベンしてくれ。
少なくともこれからの一年、
こいつと同じクラスっちゅうのは、あまりに嫌過ぎる………………。
始まったばかりの高校生活に、いきなり大きな不安を感じていると、
碇の奴が俺にはたかれた頭をさすりながら言った。
「激しい愛情表現だなぁ 」
「ちゃうわい! 」
これ以上このアホに付き合うてると頭がおかしくなりそうなので、
俺は再び校舎の廊下をさっさと歩き出した。




