9 伊予美とは違うクラス
そして、その日の放課後。
張高での第一日目を無事に終えた俺は、
そそくさと教室を出て、早足で廊下を歩いていた。
すると、そんな俺を背後から、女の様なカン高い声で呼び止める男が一人。
「正野く~ん、待ってよ~ぅ 」
その男の名は松山碇。
今朝他所の学校の不良に絡まれていた所を俺に助けられ、
それがキッカケで同性の俺に一目惚れしたという、かなり困った奴。
体格は小柄で声は女っぽく、瞳がツブラでクリッとしてるから、
パッと見た感じ女の様に見えなくもないが、
こいつは正真正銘の男(アレを確認した訳やないけど)。
そんな奴に惚れられても、俺は嬉しくも何ともない。
大体、俺が想いを寄せてるのは、幼い頃から伊予美ただ一人。
たとえ俺に言い寄ってくるのが、
碇みたいなホモやのうてちゃんとした女の子やったとしても、
俺は丁重にその申し出をお断りするやろう。
ただし、実際今まで誰にも言い寄られた事ないけど。
ちなみに、そんな俺の大本命である伊予美とは、
残念ながら同じクラスになる事は出来へんかった。
一年六組の俺に対し、伊予美は一年一組。
よりにもよって教室の距離が最も離れているクラス同士。
俺と伊予美の距離は、高校に入ってからも縮まる事はないんやろうか…………。
一方、何の偶然か、それとも神の悪戯か、
俺と一緒の一年六組になったのが、今俺の後をついてくる、
あの松山碇なのやった。
カンベンしてくれよホンマに…………。




