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詩集『死辺詩編の氷の詩集』

『全力で走れなくなった俺は』・・・『死辺詩編の氷の詩集』から

『全力で走れなくなった俺は』・・・『死辺詩編の氷の詩集』から



全力で走れなくなった俺は、全力で走る人を見て、擬態化する。

まるで、俺が全力で走っているかの様に。

全力で走れなくなった俺は、宇宙を見上げては、明滅する光に追いつこうとする。

まるで、空想の中で、光に近づいたかの様に。

全力で走れなくなった俺は、小銭を投げ捨てては、其れを拾う振りをする。

まるで、さも、小銭に先導去れたかの様に。

全力で走れなくなった俺は、両手を前後に動かして、遠目に、走っている様に見せる。

まるで、こんな詩すら、書く必要がなかったかの様に。



死を前にすれば、全力で走れなくなったことも、心は痛まない。

けれど、生きている間は、俺はもどかしく思うものだ。

それでも、小走りで駆け抜ける街は、俺の振動を感じて、地震を起こすくらに、動態せよ。

そんな、全力で走れなくなった俺は、痛んだ心を、死へと投げ捨てる、詩を書いて居る。

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