神様とギフト 2
あけましておめでとうございます!
これからも投稿頑張るので、よろしくお願いします!
「あ~…………まさか学校で寝てしまうとはなぁ」
家に帰ってきた俺はベッドに寝転がり、天井を見上げながら呟いた。
寝るだけならまだしも、夢を見るほど爆睡するってなに? 俺疲れてたのか?
しかも夢見て泣くって……小学生か! 滅茶苦茶恥ずかしいんですけど!?
見られたのが天姫だけっていうのが不幸中の幸いか。
まあ、俺がそう思ってるだけで他の奴らに見られてない保証はどこにもないんだけどな。
……やめよう。
こういうのは前向きに考えるのが一番だ。
誰にも見られてない。それでいいじゃないか。
つーか――
「…………眠い」
なんだ? 学校でも寝たはずなのに、異常に眠い。
そんなに疲れるようなことしたかな……。
他にあるとすれば……いや、夜更かししたつもりもないけど……。
まあ、いいや……少し寝るか。一時間ぐらい。
そうして、俺は眠りについた。
◆◆◆
また同じ夢だ。
花奏に告白され、それを断り、駆け出す花奏を追いかけ、目の前が真っ赤に染まり、血だまりの中に両手をつく。
同時に、絶望や喪失感といった感情が濁流のように押し寄せてくる。
この夢において、俺に選択肢はない。
一年前の出来事をなぞるように、同じ行動しかできないのだ。
もしもほかの選択肢が選べるのなら、起きた時に放心状態に陥ったりしない。
花奏の告白を受け入れる。
それだけでバッドエンドはハッピーエンドへと変わる。
たとえ断ったとしても、駆け出すことが分かっているのだ。家を出る前に手を掴むことは可能だろう。
同じように、トラックに引かれる前に止めることもできる。
そうすれば、花奏が死ぬことはないのだ。
――――それができれば、の話だが。
いや、例えできたとしても、起きたときの放心状態は変わらないかもしれないな。
夢の中で助けたとしても、現実は変わらないのだから。
むしろ現実との差異に余計ひどくなるかもしれない。
まあ、それでも別の選択肢があるのなら、俺はそっちを選ぶとは思うが。
…………考えても仕方ないか。
直に夢も終わり、目が覚めるだろう。
「………………、あれ?」
だが、予想とは裏腹に、何時まで経っても夢が終わらない。
おかしい。何時もなら、花奏が引かれた後すぐに終わるはずなのに――。
『なるほど。これがあなたの願い、他の何を差し置いても成し遂げたいこと、ですか』
「え……?」
顔を上げると、そこには純白のドレスを身に纏った美しい女性が立っていた。
その女性には街灯を抜きにして着ている服が白色とわかるくらいに後光が差している。
なんというか、とても神々しい人だな。
「……誰だ?」
『私ですか? 私は、貴方たちの世界で言うところの《神》に当たる存在です』
「神?」
『そうです。水無月景さん。貴方にお話があって来ました』
お話? 神様が、俺に?
「……悪いな、今はそんな冗談に付き合っていられる気分じゃないんだ。後にしてくれ」
『それはそれは、困りましたね……』
神を自称する女性は、手を頬に当てながらそう言った。
何故俺の夢にこんな奴が出てくるのかはわからないが、生憎と気分じゃない。
必然的に、女性の話を聞く気にはならない。
できることならもう帰って欲しいのだが……。
と、そこで気がついた。
体が動く…………?
それに、よく見ると場所も変わっている。
何もない空間だ。
どこだ、ここ? こんな場所、俺は知らないぞ。
と言うか、どういうことだ? そう言えば、言葉を話せるし会話が成立している。
そんなこと、今まで一度も――
『せっかく、貴方の願いが叶うかも知れないというのに』
「………………願いが、叶う?」
『はい。本当に叶うかどうかは貴方次第ですが。可能性はゼロではありませんよ』
「花奏は、生き返る……のか?」
『それも貴方次第です』
「……そうか」
正直、この女性の言うことはいまいち信じられない。
だが、こうして普段と違う展開なのもまた事実だ。
どうせ夢なのだから、少しくらい夢を見たっていいだろ。
この話に乗るのも、一興かも知れない。
「わかった。話を聞かせてくれ」
俺がそう言うと、女性は優しく微笑んだ。
『喜んで。では、改めて貴方に問います』
「ああ」
『願いを叶えるための、特別な力が欲しくはありませんか?』
「欲しい。それで俺の願いが叶うのなら」
『分かりました。では貴方に力を与えましょう。ですが願いを叶えるためにはもちろん条件があります』
「なんだ?」
『現実世界で、一億ポイント集めてください。方法は問いませんし、どんなことをしてでもいいので、ポイントを集めてください』
「集めれば、願いは叶うのか?」
『ええ。どんな願いでも、この私が叶えて差し上げましょう』
「わかった。そこに花奏を救える可能性があるのなら、俺はどんなことだってやってやる!」
『その意気です。頑張ってくださいね』
この際嘘でもなんでもいい。
縋れるものならモノなら何にでも縋り付いてやる。
「一ついいか?」
『なんでしょうか』
「ポイントを集めるっていうのはわかった。でも、どうやったらポイントが手に入るんだ?」
そこがわからないとどうしようもないからな。
さすがに買い物をして集めるとかではないだろう。
と言うかそれだと無理だ。
買い物で一億ポイントとか、一体何億円かかるんだ。
『ポイントを集める方法は大きく分けて二つあります。”クエスト”と呼ばれるものをクリアした時の報酬と、貴方の”行動”によって付与されるものです』
「”クエスト”に”行動”か」
『はい。クエストにつきましては、目覚めた後にヘルプを御覧下さい』
ヘルプなんてものがあるのか。
どこに? と言いたいところだが、こういう言い方をするということは割と分かりやすいところにあるんだろう。
後回しでもいいかもしれない。
「”行動”で、っていうのは?」
『すみません。”行動”に関しては詳しく御答えできないのです。そういう規則なもので』
「それじゃあ、仕方がないな」
手探りで調べていくしかないか。
あらかた質問は終わったか?
”クエスト”に”行動”。あとは――
「そうだ、特別な力っていうのは? ”クエスト”っていうのを受ける権利とかじゃないんだろ?」
『ええ、もちろんです。名前は《God’s Gift》。お気軽にギフトとお呼びください』
《God’s Gift》、神の贈り物、か。
『ギフトというのは、貴方が能力を使うための道具、云わば媒体です。願いを叶えるための《鍵》ともなるので、ポイントを集める際に御活用ください。また、ギフトの再発行はできませんので、管理には十分御気をつけください』
「わかった。気をつける。それで、能力?ってどんな感じなんだ?」
『人によって異なりますが……それは目が覚めてからのお楽しみということで』
「能力か。何とも胸が膨らむ響きだな」
『そう言ってもらえると、こちらとしても嬉しいです』
「これで終わりか?」
『はい、以上となります。直に目が覚めるでしょう。頑張ってくださいね』
「ありがとう。絶対に一億ポイント集めてやる」
『応援しております。それでは、またの機会に』
女性がそう言うと同時に、俺は光に包まれた。
体が動かず、声も出ない。
恐らく、女性の言うとおり、目が覚めるのだろう。
これが本当なら、是非もない。
有言実行するのみだ。
そう言えば、女性の名前を聞き忘れたな。
まあ、また会えるだろう。
その時にでも、聞いて置くか。