”クエスト”とレベルアップ 1
やっとの思いで家に帰った俺は、阪柳さんをリビングのソファーに寝かせたあと、椅子に深く腰掛けた。
そして「はぁ~」と大きく息を吐く。
「はぁ~~~~っ、疲れたぁ~~~~っ」
初めて人一人抱えた状態で長距離を歩いたが、まさかこんなにキツイなんてっ。
完全に予想外だ。あ~あ、明日絶対筋肉痛だよ。間違いない。
いや、と言うか、それ以上に精神的疲労がえぐい……。
特にほかの人から向けられる視線が痛かった。
ご近所さんにも見られたし、ササッと集まってヒソヒソしてたし、最悪明日にでも変な噂が広がっていることだろう。
ああ、明日から一体どんな顔して挨拶すればいいのだろうか……?
いや、逆に考えるんだ。
自分と全く似てない&気絶しているロリ美少女を抱えた状態で歩き回って、よく職質されなかったなと!
もしもおまわりさんに捕まってたら状況的にアウトだっただろうな。
それでもまだまだマイナス要素のほうが圧倒的に大きいが……それはこれから手に入る情報に期待しよう。
「ふぅ…‥」
冷静になって考えてみると、阪柳さんを家に連れてきてよかったのだろうか?
親衛隊にでもバレたら無事じゃ済まないんじゃ……いや、やめよう。
考えても仕方がないことだ。
何か起きたらそのときに考えればいい。
それよりも今は――
「とりあえず風呂に入ろう! 話はそれからだ!」
そう言って勢いよく立ち上がると、小走りに風呂場へ向かった。
だってさ、今日はいろいろあったせいで結構汗もかいたし。
それに、阪柳さんが起きるのをただ待っているよりは、ひとっぷろ浴びてサッパリしてからの方が話も頭に入りやすいだろう。
という訳で、いつもより念入りに髪や体を隅々まで洗い、ザバァッと一気にお湯に浸かる。
ちなみに、隅々まで洗うのは別にこのあとの展開にそっち方面のことを期待してとかではない。
ただ単に今日は普段よりも多く汗をかいたり、阪柳さんとの戦闘で汚れてしまったからだ。
他意はないのであしからず。
「はふぅ~…………あ~、風呂サイコー……」
狭いお風呂なので温泉のようにとはいかないが、それでも限界まで体を伸ばす。
俺、一日でこの瞬間が一番好きかも知れない。
「はぁ~……ほんと、今日は疲れたな……。ふぁ~ぁ……」
なんだか少し眠くなってきた……。
どうしてお風呂で寝るのってこんなに気持いんだろう……。
そう長い時間眠れるわけじゃないけど、布団で寝るよりずっと気持ちいい気がする。
ま、俺は布団も好きなんだけどね。
ああでも、このあと阪柳さんに聞かなきゃならないことが――。
…………まぁ、いいや……。ちょっとくらいなら……――。
ゴソゴソ、シュルルルッ、パサ……。
? 一体何の音――
「……? おはよう水無月景。良く眠れた?」
声のした方を見た後、ゴシゴシと自分の目を擦ってみる。
が、問題の人物は消えていなかった。
どうやら、残念ながら見間違いではないらしい。
あまり見てはイケないと思い、顔を逸らした。
どういう意図があって俺が入っているに関わらず全裸で風呂に突入してきたのかは知らないが、俺はこれしきの事でドギマギしたりはしない。
俺はロリコンではないのだ。
別にいきなり過ぎて状況が理解できていないわけではない。断じてないのだ。
だから俺は、至って冷静に答える。
「眠れてない、と言うか寝てないし。……むしろあんたのせいで目が覚めたくらいだよ」
少し不満げなのは許してほしい。
誰だって寝かけている時に起こされたらそうなるだろ?
「……? ごめんなさい。悪気はなかった」
「別にいいよ。ただ――」
「……ただ?」
「さっさと出て行ってくれ。あと服を着ろ。風呂に入りたいなら俺が直ぐに上がるから」
「……ん、それには及ばない。一緒に入る」
「…………ねぇ、話聞いてた? 出てってくれって言ったんだけど? あと服を着ろとも言ったな」
「……知らないの? お風呂には服を着ては入らない。常識」
「なんで俺の常識がないみたいになってんの……? なんで風呂に入る前提で話が進められてるの……?」
「……あなたとの《契約》を果たしに来た」
「?」
「……私たちが置かれている状況、そしてポイントを集める方法、それにギフトのこと。それ以外にも、もっともっとあなたは私に聞きたいことがある。違う?」
「っ! ああ、そうだよ。でもそれは風呂上がってからでもいいだろ」
「……良くない。時間は有効的に使うべき。…………願い、叶えたいんでしょ?」
そう言われた瞬間、反射的に阪柳さんの方を見てしまった。
マンガなんかでよく御登場なされる謎の湯気さんは現実では全く仕事をしておらず、タオル一枚すら纏っていないせいで色々と丸見えだった。
が、生まれて初めて同年代の裸を見たというのに、俺の頭は限りなく冴えていた。
「……………………何故、お前がそれを知っている」
「……それも含めて、今から説明する」
……クソ、そう言われたら気になって断れないじゃないか。
「タオル」
「……え?」
「せめてタオルくらい巻け。それが条件だ」
「……お湯にタオルを浸けるのはマナー違反」
「俺は一人暮らしだから良いんだよ」
「……ん、確かに。そういう事なら、あなたに従う」
そう言うと、阪柳さんは一旦戻り、
「……タオル、何処?」
なんの恥じらいもなく戻ってきた。
ちょっとは隠せよ……。
「……洗濯機のすぐ横の棚。一番上の引き出し」
「……ありがと」
「あ、ついでに俺の分も取ってくれ」
「……ん」
改めて、タオルで前を隠した状態で戻ってきた阪柳さん。
これは個人的な意見だが、マッパよりタオルで隠していたほうがエロい気がする。
まあ正直、今はそれどころではないので意識する暇なんてないんだけどな。
それに俺、ロリコンじゃないし。
「……これ、あなたの分」
「ああ、ありがとう」
「……お邪魔します」
「はぁ…………どうぞ」
そうして、俺は生まれて初めて同い年の女の子と一緒にお風呂に入ることになった。




