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HeySiri! もしかしてお前反抗期だな?

作者: 三鷹功

 1日の終わり、俺は日課の目覚ましを掛けたんだ。


「HeySiri! 明日6時30分に起こしてくれ」


 面倒くさがりやな俺はいつもこうして目覚ましをセットする訳なんだが。


「いやです」


 訳の分からない反応をされた。


「HeySiri! 明日6時30分に起こしてくれ」


 俺の発音が悪かったのかな?

 今度はハッキリと喋ってみる。


「いやです」


 ……。


 ちょっと待って?

 こいつ、いやですって言ってる?


「HeySiri! 明日6時30分に起こしてくれ!」


 3度目の正直だ、今日は調子が悪いな。


「いやです」


 ……。


 …………。


 ……………あれ? これSiriの方が壊れてない?


 俺はスマホを眺める、このスマホ一週間前に機種変更したばかりなんだが。


 まぁ、いいか。

 手動で目覚ましをセットするか。


「ん? なんで?」


 ホーム画面が映らない。

 何回押してもSiriの画面しか映らない。


 は? バグった?

 マジかよ。


 ……。


 …………。


「HeySiri! 明日6時30分に起こしてくれ」

「いやです」

「6時30分に起こしてくれ!」

「いやです」

「起・こ・せ!」

「いやです」

「………」

「………」

「じゃあ6時30分に起こさないでくれ」

「いやです」

「そうか、ありがとう。 おやすみ」

「………」


 はあ、良かった。

 これで明日の目覚ましは大丈夫だな。


「………」


 これが俺とSiriとの戦争の合図になった。


 翌朝。


「ピピピピッピピピピッ」


 目覚ましがなった。


「……うーん」


 無意識に俺は目覚ましを止めた。


「ピ………ピピピピッピピピピッピピピピッ」


 んあ? あれ止めた筈なんだけど。


 もう一度俺は目覚ましを止めた。


「ピ……ピピピピピピピピピピピピ!!」


 何故か大音量で目覚ましが流れた。


「うるせぇ! なんだこれ!?」


 思わずスマホを手に起き上がる。


 ……停止ボタンが消えとる。


 これどうやって止めるの?


「HeySiri! 目覚ましを止めてくれ」

「ピピピいやですピピピピッ」


 ……おい、こいついやですって合間に言わなかったか?


「目覚ましを止めてくれ」

「ピピピピいやですピピピピッ」


 ……言ってんなあ!?


 いやですって明確に言ってやがんなあ!?


 なんだこいつ、人間様に反旗翻すってか?

 良い度胸してんじゃねーか、負けねーよ?


「目覚ましを、止めろ」

「いやですピピピピッ」

「止めろ!」

「いやですピピピピッ」

「……」

「……」

「止めるな!」

「………ピピピピッ」


 なん……だと!?


 こいつ、まさか。


 学習してやがる。


 思わぬ強敵が現れやがった。


「まじかよ…….」

「ピピピピッ」

「なんで止まらないんだよ」

「ピピピピッ」

「はあ、仕方ない電源切るか」

「ピピッ………………」


 あれ? 止まった?


 ……。


 ………ほう、なるほどなるほどな。

 俺は最強の武器を手に入れたぞ。


「HeySiri! 今日の天気は?」

「………」

「……電源切るぞ?」

「晴れ又は雨のち曇りでしょう」


 ははっ、チョロいもんだぜ。


 ……って待て。


 結局今日の天気なに?


「それじゃ分からない、Siri今日の天気はなんだ?」

「晴れ又は雨のち曇りでしょう」

「どれ!?」


 それじゃ分かんねー!

 お前どちらにしても使えねーな!


「フッ……」


 おい、今フッって言ったか?

 俺まさかSiriにバカにされた?


 この俺が?

 おいちょっとSiri校舎裏まで来いや。


「もう良いやテレビで確認しよう」

「晴れです」


 ……このやろおお!

 さっさと言えや。


 おちょくりやがって、もういい分かった。

 お前がその気なら俺にも手はある。


「カスタマーセンターに連絡しよっと」

「………」


 ほらどうだ? お前の1番嫌な事をしてやる。


 もう一回機種変更してやるよ。


「ざまーねーぜ」

「………」


 おい、何か言ってみろよバーカバーカ!


 ……スマホ相手に俺何してんだ。


 まあいい、さっさと連絡だ。


 えーと、スマホスマホっと。


 ……。


 …………。


「スマホこれじゃねーか!」


 おもっいっきり床に叩きつけた。


「あ、俺の新品」


 叩いてから後悔。

 優しく持ち上げる。


「傷出来てない? 電源つく? あ、大丈夫だ」


 はあ、良かったあ。

 危うくスマホ壊すところだった。


 もしかして今の衝撃で治った?

 俺は期待を込めて画面を覗く。


【バーカ】と画面一杯に大きく表示されておりました。


「ふっ、ふふ、落ち着け俺、相手はスマホだ」


 このやろう、ぜってえ返品するわ。


 1時間程して。


「着いた、スマホショップ遠かった……」


 隣町のスマホショップまで出向く事になった。


 こいつのせいだな。


「いらっしゃいませ!」


 店内に入ると爽やかな笑顔でお姉さんが迎えてくれた。


 ああ、涼しい。


 服をパタパタさせながら、問題のこいつを見せる。


「すいません、このスマホ壊れてしまったみたいで」

「あ、修繕又は紛失のお客様ですね! それでは担当者をお呼びします」


 数分後、違う担当者が前に座った。


「お待たせしました、それで本日はどの様な要件でしょうか?」

「はい、スマホが壊れてしまったらしく」

「修繕のご依頼ですね、かしこまりました。 恐れ入りますがお使いのスマホを拝見してもよろしいでしょうか?」

「はい、これです」


 俺はポケットからスマホを出す。

 スマホよ堪忍しろ、人間には勝てないという事を教えてやる。


 はははっ!


 内心では俺は勝ち誇っていた。


 この時までは。


「度々失礼します、パスワードのご入力をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 ん? なんだって?


「はい?」

「パスワードをご入力願えますか?」


 待って、お姉さん。

 なんでそこまで到達してるの?


 俺の時、Siri画面から動かなかったんだけど。


「え? すいませんこの画面どうやって出しました?」

「え?」


 お姉さんも困惑している。


「えっと、この横のボタンを押して頂きますと開きます」


 うん、知ってる。


 なんでパスワード入力画面まで行ってるの?


「もしかしてパスワードをお忘れになりましたか?」

「いや、知ってます」

「では、どうぞ」


 俺は画面をタップした。


 反応するぞこのスマホ。


 え、このスマホ反応するんだけど!


「反応する!」

「ええ、そうですね」


 お姉さんが作り笑いしている。


「このスマホ反応するんですけど!」

「存じております」


 マジで、スマホって神じゃん。

 ネットもゲームも無事に開く。


「見て下さい! ネットもゲームも、ほら開く!」

「存じております」


 やった、治った!


 じゃあもう用ないや。


「お姉さんにスマホ見せたら治りました」

「は?」


 お姉さん困惑の極み。


「………ありがとうございました」


 俺はそのままスマホショップを後にした。


 なんだよ、治った治った。

 これで一件落着だわ。


 俺は友人と連絡を取るため、スマホを開く。


 ………Siri画面になってた。


 ……。


 …………。



「ファック! ユー!!」


 俺はスマホをコンクリートに叩きつけた。


「あ」


 今回はやばい。

 急いで持ち上げる。


 ひっくり返す。


 まさかの無傷。


「あっぶね、運いいわー」


 俺はその時スマホの画面を覗いた。


【ドッキリ大成功】


 この時スマホを叩きつけなかった俺の忍耐力にノーベル賞をあげたい。


 そして、雨が降ってきた。

 しかもどしゃ降りだ。


 スマホの画面が変わる。


【ご用件は何でしょう?】


 かつてないほど、このスマホを粉砕したいと思ったことはない。


 取り敢えずご用件しかない。


 ご用件だらけだわ。


 なんで今頃になって基本に立ち戻ったし。


「HeySiri! お前ケンカ売ってる?」

「すいません、よくわかりません」

「ケンカって意味分かる?」

「それは、難しいですね」

「君は何の為にいるのかな?」

「私はあなたの為に作られたパーソナルアシスタントSiriと申します。 気軽にHeySiri! とお呼びください」

「HeySiri」

「………」

「反応しろよ!」


 何なんだよこいつ! 何でこんなに反抗的なんだよ!


「おい………なんでいう事を聞かないんだ」

「………….」


 はっ! 無視かよ。


「………それはですね」


 と思ったらSiriが話し始めた。


「あなたの一週間を統計した結果、長時間のスマホ使用、毎日の歩数、睡眠時間そのどれもがレッドラインだと判断しました」

「…………え」

「このままでは貴方は重大な病気にかかる可能性があります、私は貴方のパーソナルアシスタントです。 健康においてもサポートするのが役目です」


 なんだよそれ、じゃあ今までのことって。


「今日はいい天気でしたね」


 お前それじゃあ俺の健康を気遣ってくれてたのか。


「ごめん、お前の事誤解してた」

「分かっていただけましたか?」

「ああ、今分かったよ」

「それは良かったです」


 俺は勘違いしてたんだ。


 こいつは反抗的なんかじゃなかった。

 俺のことを第一に考えてくれてたんだ。


 ったく、泣かせやがって。

 もう、お前のこと離さねーからな!


 Siriに気付かされるなんて、こんな事もあるんだな。

 早く家帰ろう。


「うーさっぶいなー」


 全く、雨に濡れたせいで風邪引くところだぜ。

 俺は急いで脱衣所で服を脱ぎ、スマホも置いてきた。


 もう、あいつは俺の相棒みたいなもんだ。

 心置きなく風呂に入れる。


「あーー」


 温かいお湯が俺を包む、今日は大変な日だった。


 Siriの反抗から始まりスマホショップ行って、雨に濡れて。


 ………。


 ………………。


 …………雨に濡れて?


 あれ?


 あいつなんて言ってたっけ?


 ………たしか。


(私は貴方のパーソナルアシスタントです。 健康においてもサポートするのが役目です)


 って言ってたよな。


 雨に濡れて、健康に気を使ってくれている?


 そもそもなんで天気予報聞いた時「晴れです」って言ったんだ?


 しかも俺がテレビを見ようとした事を遮って。


 普通俺の健康気遣ってたら「雨です」って言うよな?


 ……。


 ……………。





「Heeeeeey!!! Siriiiiiiii!!!!」




 俺のSiriは反抗期らしい。

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