表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

プロローグ

 プロローグ


 ネットゲームが終わるときっていうのは寂しいもんだ。

 昔はプレイ人数も多く、キャラ同士の交流も盛んだった。

 だが、今はレベルキャップも二百になり、ゲーム内通貨で一千万を超えるような値段の装備を使用しないと、まともにモンスター狩りもできない。

 課金アイテムを使ってキャラの強化をして、やっとこのゲームでは一人前。

 そんな猛者ばかりが残る。

 このゲームにそんな金をかける事のできないユーザーはどんどん辞めていく。そして、遂にはサーバーも一つだけとなり、このゲームのサービス停止が宣言された。

 コンビニバイトで口に糊をしている俺は、課金なしでやってきた。

 このギルドは、周りからの理解もあり、課金をしてついてくる事を強要してこなかった。

 そんな仲間たちに感謝し、なつかしさからこのゲームを離れられなかった俺は、細々とやってきたのだ。

 だが、それでもこのゲームは終わる。

 前々から『そろそろだろう』と諦めていた俺は、このゲームからはじき出されるまで、ブラウザを消さずにギルドの砦の中で、昔からの仲間とチャットを楽しもうと決めていた。

 そして、それに賛同してくれる仲間も多かった。

「昔はもっと露店も多かったなぁ」

「モンスター召喚をして町中で暴れる奴も、今となっては懐かしい」

 自分の持ち物を売る露店商も、いまは数もまばらだ。しかも、昔と比べて値段も跳ね上がっている。

 このゲームも終わりとなると、そういう感慨も生まれてくる。

 仲間の一人がログアウトをした。

 青色の光に包まれて姿が消える仲間。終わりの時がどんどんと近づいてくるのを実感する。

「ロートさん。落ちたか」

 ロートはドイツ語で『赤色』の事を言うらしい。

 自分のキャラに、必ずロートの文字を入れる人だった。

 ロートさんから始まって、次々に仲間がログアウトしていく。

「もう二人ですか」

 最後に残ったのは春さんという人だ。

 春風というキャラで俺と会話している。

 だがそれも長くはできないだろう。

「もう一度、このゲームをやり直したいと思った事はないですか?」

 ふと春さんが聞いてきた。

「ゲームシステムも、アップデートもまだの時代に戻って、これからアップデートしていったり、次はどんなダンジョンが実装されるのか? ってワクワクしたり」

 確かにそれは考えたことがある。

 ネットゲームでの稼ぎ方というのが深く浸透していなかった時代から、このゲームはある。

 よくある、難易度を高くすれば、ユーザーは、意地でもクリアしようとする。

 または、課金アイテムを強力なものにすれば、こぞってみんなゲームに課金をする。

 いまやそんなものばかり。

 あの手この手でユーザーに課金をさせようとする今のシステムには食傷気味だ。

「このゲームもこんなに難しくなくて、ライトな人が大勢いたり」

 そして、春さんのいうライトな人達と一緒になって狩りに行き、みんなを助けてそのパーティでヒーローになったり。

 そこまで考えたところで春さんもログアウトしていった。

「一人か。でも追い出されるまで粘ってやる」

 最後にこの砦には俺だけが残る。

 名残惜しいこのゲーム。自分から離れてしまうのも忍びない。ゲーム画面をぼうっとして見つめ続けているうちに、俺はうつらうつらと眠りについてしまう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ