機会 ~チャンス~
「今日付けで、第3小隊に配属となった、オードラン・ルイ兵長です!よろしくお願いします!」
「同じく、今日付けで第3小隊に配属となった、シャロー・アリス兵長です!お願いします!」
第3師団第3小隊の作戦室に声が響く。
「私は、第3小隊隊長クーベルタン・マリー=アンヌ中尉だ。こちらこそよろしく頼むぞ。まぁ、マリーとか、アンヌとか、適当に呼んでくれよ!」
黒髪でスタイルのいい美少女だ。
「はい!」
ルイとアリスは、大きな声で返事をした。
「それじゃ、右から順に、ドラノエ・エリク少尉、ド=ヴァン・ジュリー兵長、ジャン・ダニエル軍曹、ダルシ・リーズ一等兵....」
ここから、約30人紹介された。
「よろしくお願いします!」
ルイとアリスは、お辞儀をした。
「えーと、君たちは王立バイカル大学出身だよね?そう聞いたけど。」
マリーが、ルイとアリスに問いかけた。
「はい!自分とアリスは、バイカル大学の軍事科出身です。」
「んじゃ、ルイ君は、小隊隊長研修は何度かやってるわけか...なら、ルイ君は第3分隊隊長、アリスちゃんは第3分隊隊長補佐ね!」
ルイとアリスが、返事をしようとした瞬間、大半の隊員が批判をし始めた、
「隊長!待ってください!こんな新人に、隊長など務まるわけありません!」
「そうですよ!こいつの言う通りですよ!」
そうだそうだという声が作戦室に響く。
「そうですよね...」
ルイがそう呟いた瞬間、周りが静まり返った。
この沈黙を破ったのは、マリーだ。
「待て、お前たちの気持ちも、言い分もわかる。だがな、ルイ君の経験値には誰もかなわないはずだ。ならこうしよう、ルイ君が次の模擬戦の時、隊長をしてみようか。それで試してみようか。お前たちがそれでルイ君の能力が納得したなら、継続ってことでいいか?なぁルイ君?」
「...」
なぜか返事ができなかった。
すると一人の隊員は、
「ほらな!返事すらできない弱気なやつが、隊長なんて務めなんて果たせるわけがない!」
といった。
それに続いてまた、そうだそうだ、いった。
止まらないこの掛け声を、マリーが裁いた。
「こんな雰囲気が新人を歓迎する会か?違うだろ?」
「いや、いいんです。この雰囲気を作ったのは、僕が入ったからです...」
「うぬぼれるな!」
そういったのは、いかつい胴体の第3小隊副隊長のエリクだった。
「お前が、士官学校出身なのは経歴見ればわかるが、お前は新人として入ったのは事実だろ!お前は並みの兵なんだよ。理解しろ。」
「...」
ルイは、返す言葉もなかった。
アリスはルイをかばおうと、少し言い返そうと思ったが、あまりにもルイの顔が絶望に満ちていたので、言う気が薄れてしまった。
雰囲気はさらに悪化し、沈黙が前よりも倍くらい続いた後、ルイが沈黙を破った。
「僕は!僕は実力で皆さんのことを納得させます!だから、チャンスをください!隊長の期待に応えたいんです!」
ルイは、今まで出したことのないくらいの声でそう宣言した。
「そ、そのくらいの勢いならチャンス与えてやってもいいと俺は思う。みんなはどうだ!」
さっきやじを飛ばした隊員はそういった。
「そうだな。」
「俺はいいぞ。」
「これでこそ、王国軍だ!頼もしい。」
こんな声を隊員達は、口々に言い始めた。
「ありがとうございます!がんばります!」
ルイがそういうと、マリーは笑いながらルイを見た。
その後、解散し、隊員達は作戦室を後にした。
◇ ◇ ◇
その晩、司令部前の小さな草原で、二つの月明かりに照らされてできた影が並んでいた。ルイとアリスだ。
「がんばってね、ルイ。私がルイを支えるから。」
アリスは、ルイの目を見て言った。
「ありがとう。すごく嬉しいよ。がんばるから。俺は、絶対負けない。」
「うん...約束だよ...」
「おう。もう二度と負けたくない。誰にも。期待を裏切りたくない、誰からのものも。」
こうして配属初日、新人歓迎会は終わった。
◇ ◇ ◇
その頃、アンティヌス帝国の第1実験場で、人体実験が行われていた。
そこへ、黒いマントを羽織ったマルクスが視察に来ていた。実験室長にマルクスが話しかけた。
「状況は?」
「はい、ただいまステージ4にまで進行しています。この実験はもうすぐで終わるかと。」
「そうか、この実験が成功すれば、これから始める戦争は勝ち戦になる。ゆえに、早めに終わらせろ。帝国の未来が決まる。」
「は!陛下の仰せのままに。」