任務前
「………ッ!」
ガバッと起き上がる。…どうやらまた悪夢に苛まれていたらしい。…全身汗びっしょりだ。
最近妙だ。今になって悪夢を見る頻度が増えている。
「………。」
布津はソファから降りると、窓を開ける。
秋も終わり、また凍て付く冬がやってくる。
「俺は……」
一つ、呟く。だが考えを振り払う様に頭を振る。
ズキリ。
頭の芯が痛みを発した様な気がした。…まだ悪夢の中にいるのだろうか?
「いや…とうの昔から、か…」
その言葉を聞いていたのは。名残を惜しむ秋の風だけだった。
少し経ち、勢い良く部屋のドアが開けられる。
「イョーウ!…を?」
現われたのは皇と月野だった。
「オマエ、最近起きてるコト多いな?」
布津はチラリと皇に視線を送る。
「別に起きていてはいけないという事でも無いだろう?」
「…ハッハ!そりゃそうだ。っつー訳でメシ買って来たぞ~!」
その言葉を皮切りに皇と月野がビニール袋の中身を広げる。
「………」
「?…大丈夫ですか?顔色悪いですよ?」
黙りこくっている布津。様子が気になった月野が問い掛ける。
「……む。大丈夫だ。…スマンが食事はお前達だけでやってくれ」
布津は二人に背を向けると、例の倉庫へ入っていった。
「変な奴。まぁいいや。食べようぜ裏葉ちゃん」
「はい…」
月野は布津の消えていった倉庫をしばらく見ていたが、やがて目を反らしたのだった。