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起動
薄暗い部屋の中、多数並んだパソコンのモニターだけが光を発していた。
カタ…カタカタ…カタ。
キーボードを素早く叩く。
ブンッ、という電子音がして、新たな明かりが付く。
……そこには、人一人入れそうなカプセルが一基、鎮座していた。
プシュー…。
カプセルの扉が蒸気音を発し、ロックを解除する。
シュー…、ガコン。
扉が開いた。まるで地獄の釜の様だった。中に人型がある。
…ピクッ。
動く指先。それから腕が動き、内側の囲いを外す。
がちゃ。…スタッ。
カプセルの中にいた人物が降り立つ。
ヒタ…ヒタ…
キーボードを弄っていた人物に近付く。
「やぁ…おはよう」
柊は近付く人影に声を掛ける。相手は答えない。
「フゥ。相変わらずだねぇ、君も。まっ、仕事さえしてくれれば文句は無いけどね」
人影は側の机の上にあるサングラスを取った。それを掛けながら一歩前に出る。
……モニターの明かりに照らし出された人物。
一条 和孝であった。