起死回生
一条が立ち止まる。目の前の男が立ち上がったからだ。しかしダメージは受けているらしく、足元がおぼつかない。
……チャンスは、一度きり。
布津は鉄床に足を踏み締めると、ゆっくりと納刀する。
パチンッ。
小気味良い音を立てて、刀が納まる。
スッと、抜刀の構えを取った。
「……最後だ。俺の刃が届かなければ、この命くれてやる」
布津が目を閉じ、神経を集中する。
ガンッ!…それが合図であるかの様に一条が床を蹴った。
迫る一条。さながら重戦車の様であった。拳を引き絞る。
互いが間合いに入り…インパクトする!
布津がカッ!と目を見開く!
ドガァァッ!!
………一条の拳は、布津の胸に深くめり込んでいた。布津は抜刀状態で硬直している。
先に動いたのは一条だ。拳を下ろすと、布津の横を抜け歩いていく。
「………ガフッ」
直後、布津の口から溢れる鮮血。グラリと身体が揺れ、崩れ落ちる。
―――一条の動きが止まった。
ガツン。両膝を付く。と同時にサングラスが落ちた。
パリンッ。
レンズが割れ、砕け散る。
布津はドサリという音を聞きながら、相手が倒れた事を悟った。
「後は、頼むぞ…すめら、ぎ……」
布津の意識は闇に墜ちていった……。