異能者の闘い
「ハァァッ!」
最上段よりの唐竹割りが一条を襲う!
ガキッッ。
しかし鈍い音と共に、刀身はクロスした腕に受け止められる。
直後、腹部に衝撃。ガードガラ空きの布津に、蹴りが襲ったのだった。
「…ガハッ!」
堪らず後方によろめく。視界が歪み、膝を付く。
……くっ…このままでは…。やるしかないか……。
布津は覚悟を決め、意識を集中する。
ジワジワと迫る耳鳴りと頭痛。そして、発動する。
(……跳ベッ!)
瞬間、一条の前から布津の姿が掻き消える。
背後に気配。しかし遅すぎた。
布津は首筋目掛け一直線に刀を振り下ろす!
「……!?」
手応えはあった。インパクトの瞬間は。しかし。腕に斬りかかった時同様、刃は身体を斬り裂く事は無かった。
グイッ。石像の様な手が刀身を掴み引っ張る。今度は布津の反応が遅れた。
肩からのタックル。そのまま強烈なフック!
ドゴッ!!
「ガハァッ!」
数歩よろめくと、堪えきれず膝を付く。
「ハァ…ハァ…ウグッ!?」
直後、猛烈な頭痛。脳が痺れる様な感覚。
「グ、アアァァ」
声にならない声。頭を押さえる。
不意に視界の中に靴先。
っ!!!!
顎を抉る様な蹴り上げが、布津の身体を宙に放り上げる。
ズダンッ!鉄の床に叩き付けられ、意識が飛びかける。
…猛烈な頭痛と身体の痛みの中、思考だけはハッキリしていた。
…このままでは殺られる…。…もう能力は使えん…。何か、無いか…。
その時、左手に何かが触れた。感触を確かめる。…刀の鞘だ。
二度目のフラッシュバック。
何処かの道場で、佇む二人。目の前の男が口を開く。
『良いか純能介。…抜刀術というのは、刀身を鞘で滑らせる事により速度を増し、通常の斬撃よりも威力を高める事ができる。やってみろ』
『分かった。やってみる』
俺は練習用の刀を鞘に納める。そして目の前にある案山子に―――
カツンっ。
足音に我に返る。一条が、一歩ずつ着実に近付きつつある。
……試してみるか…。
布津は刀と鞘を手に立ち上がる。