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『TLS 第二話』  作者: 黒田純能介
15/22

精算


ヒュゥゥ……


屋上には、既に肌寒い風が吹き始めていた。

その中心に、笠原が立っている。


皇は追い詰めたと言わんばかりに口を開く。


「逃がさねぇ。あいつの敵…!」


笠原は肩をすくめる。


「ヤレヤレ…何の事だか?」


その一言に、皇が再び激昂する。


「ふざけんなっ!!忘れたとは言わせねえ。お前が殺した!」


「う~ん…分からないなぁ…」


笠原はおどけて腕を組んでみせる。


「このヤロッ!」


皇が飛び掛かろうとした時だった。


「動くなっ!」


笠原の懐から現われた拳銃の銃口が向く。皇の動きが止まった。


「キミには悪いけど、死んでもらうよ」


ギリギリとトリガーを引き絞る。一瞬、あの時の光景が蘇る。


「ウオオオォォォ!!」


咆哮を上げながら、皇が突進していく!


笠原までの距離は、約70メートル程。到底弾丸が発射される前に到達できる距離では無い。


だが、幸運の女神は皇に微笑んでいた。彼自身の戦闘センスも絡んでいたのだが。


ゴウッ。不意に突風が吹く。


パァン!直後に銃声。


その瞬間、皇は無意識に身体を捻った。


チュイン!放たれた弾丸は、皇の身体を穿つ事なく、ただ頬に赤い線を作っただけだった。


ガチッ!ガチッ!


初弾を外したと見るや、笠原は更に引き金を引く。…が、まだあるはずの弾丸は発射されなかった。


「!?…しまっ…!」


笠原の拳銃はジャムを起こしていた。所謂弾詰まりである。オートマティックピストルによくあるトラブル。空になった薬莢が排出しきれずに詰まってしまう現象。


更に突如吹いた突風。これが弾丸の軌道を反らし、加えて皇が身体を捻った為、命中を免れたのだった。



「オオオォッ!!」


全力を込めて相手の顔面に狙いを定める。


バキイィィ!!


狙いはあたわず、笠原の顔面を捉える。あまりの勢いに、身体が宙に浮いた程だった。


「………ぁ!」


笠原はもんどりうって床に転がると、そのまま動かなくなった。


スタ、スタ、スタ。


皇が注意深く近寄る。笠原は完全に気絶しているようだった。足元に落ちている拳銃を蹴り飛ばす。


「……俺は、誰も殺さねえ…」


呟くと天を仰ぐ。



…これで、良いんだよな……。



心の中で、残り半分の呟きをなぞった。


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