合流
この管理施設は一階、二階、三階、屋上と計四層に分かれている。セオリー通り布津は下層から索敵をしていた。しかし敵の姿は見当たらなかった。北口にて皇と合流する。
「よう。こっちは何も無かったぜ。そっちもダメそうだな?」
「あぁ…。気配すらない」
布津は無線に手を掛ける。
「こちら布津。月野、聞こえるか」
少し間が空いて、ノイズと共に無線から声が聞こえる。
『ザザッ……はい。こちら月野、どうぞ』
「そちらでのモニターはどうだ?何か映っていないか?」
『ザッ……いえ。特に動きはありません。それと、何台かのカメラが故障してしまって、映像が出ない区画があります』
「そうか…分かった。何かあったら報告してくれ」
『ザッ…了解です!』
プツッ。交信が切れる。布津は無線を懐に収めた。皇が言う。
「いい加減な施設だな…。壊れてもほったらかしかよ」
「いや…敵が破壊した可能性もある」
布津が周囲を注意深く見回す。
「一度戻るぞ。中央通路がある。管制室までここから一直線だ」
「あれ?上には行かねえのか?」
布津がすぐさま切り返す。
「この階層で見当たらなければ、上にいる。もしくは逃げたか。いずれにせよ敵がトラップを張っている可能性もある」
「あ…そっか」
皇は妙に納得した顔でうなずく。布津はそれを見て渋い顔をする。
「訓練で習わなかったのか…?この先、生きていけんぞ?」
皇は苦笑いを浮かべる。
「いや、ちょっとド忘れだよ、ド忘れ」
布津はふう、と溜息を吐くと、管制室へと歩き始めた。