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第11話

***



 周りを警戒する2人を見て、私は立ち上がった。



「いったい何があったんですか?」


「どうやら敵に囲まれてしまったらしい。相手もやることが姑息だね。まさか待ち伏せとはね」


「さっきのやつとは違う匂いがする」


「いつから番犬みたいになったの?」



 その言葉が響くと、誰も言葉を発しようとはしませんでした。重たい空気の空間に私もどうしていいのかわかりませんでした。



「……」


「冗談だって! 気にしないでってば!」


「3時の方向」


「了解、シミルちゃんは休んでていいよ。きっと今回は弱いやつだと思うし」


「いえ、私も戦います!」


「ここは私たちに任せて!」



 2人の真剣な顔、何より自信に満ちた笑顔が私には忘れられないほど輝いて見えました。けれど、倫也さんたちは今何をしているんでしょう。



「シャアァァー!」



 現れた敵の姿は人ではありませんでした。身に鎧をまとったような光沢と硬さ。そして牙に長い爪。私達に現れたのは龍軍でした。



「今日は爬虫類鍋になりそうだね」


「……美味しくなさそう」


「そんなことないって! 追尾の業火!」



 地面にたたきつけられた炎たちが鼠のように彼らの背を追いかけていく。龍たちは壁を巧みに使いその火を自爆させ、安堵を付いた時、黒鎖が姿を見せた。



「やっぱり爬虫類鍋は嫌だ。変な触感がしそう」


「キェエエエ!」



 ピエラさんが1つずつ敵の顔を取ってゆく。私は怖くて背中を向けることしかできなかった。龍たちの最後の発声が耳に響く。



「カラッと一揚げ! 蛇天火!」



 彼女の放った火は蛇のように龍たちを囲み、彼らを熱で焼き切った。私は見ることができなかったけれど、そこには爬虫類鍋の材料が転がっていた。


 いつの間にか龍たちは姿を消していた。これで全滅なのかな?



「思ったより手ごたえなかったね」


「同じサイズならそういうもの。種族が違ってもあんまり意味ない」


「そうかな? それはピエラだけだと思うけど......」


「どういう意味?」


「いや怒んないでよ。私も少しくらい良いことは考えてるんだから。ピエラは色の弱点とかないから、どの敵も条件の不利有利なく勝てるってこと」



 その言葉を聞くと、ピエラさんは私達の方向に嬉しそうな笑顔に近い輝かせた目を見せてくれました。私はそれに笑顔を返すと、彼女は目を逸らされてしまいました。けれど、それは私達を嫌ってのことではないのはわかっていました。



「それなら構わない。あなた、どこから来たの?」


「実は......」



 その先の言葉が出ませんでした。いえ、出せませんでした。事実、私には倫也さんたちの場所がわかりませんでした。それもそのはずです。ずっと私達は旅を続けてきたのですから。



「ま、言いたくないならそれでもいいよ。私達も信頼されるほどの何かをしたわけじゃないし」


「譲歩してどうする。話が進まない」


「逸れただけよ。少しは進みを得ているわ」


「……」



 息をこらして私は大口を開けた。



「倫也さんのところに、仲間のところに私を連れて行ってください!」



 不思議と声うるさいくらいに響いていた。2人は嫌そうな表情をすることもなく私を見ていた。



「ほら、逸れてなかったでしょ?」


「……」


「負けを認めなさい。冗談だけど。オッケーシミル。私達はあなたをそのリンヤって人のところまで送るわ。まぁもしかしたらまた敵が来るかもしれないけど、今のあなたなら問題ないわよね?」



 彼女の差し伸べた手を取り、歩き出した。倫也さん。今から向かいます。バキリアさんとケンカばかりしていなければいいけど。


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