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異世界転移バーテンダーの『カクテルポーション』  作者: score
第六章

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407/505

決戦当日


 決戦の舞台は、背の低い森に囲まれた見晴らしの良い平野となった。

 名前はバドワイズ平野だったか、どういう由来かは聞いていない。

 ドラゴンゾンビの進行ルートに細い崖なんかがあったら、そこで左右から集中砲火の一つもできたのだろうが、生憎とそういう都合の良い場所はなかった。

 というわけで、人間同士の戦争でも舞台になるような、陣形を作るのに都合の良い平野が選ばれたわけだ。

 とはいっても、地形に利点がないわけではない。背の低い森に伏兵を潜ませることもできるし、急ピッチで作られた簡易砦には、ドラゴンゾンビには効果がなくとも、その他の魔物には効果的な塹壕や塀といった各種設備もしつらえてある。

 これが人間同士のやり取りであれば、即席の砦まで完成させているこんな場所に正面からやってくる敵軍は居ないだろうが、その点は知能が低いゾンビで良かったところか。

 魔王は真っ直ぐに王都に向かっている。こちらはそれを考慮して作戦を立てることができるのだから。


「伝令。魔王軍の先遣部隊が目視確認されました。これから本隊が向かってきます」


 即席の砦に作られた仮設本部(という名の幕に囲われたテント)にて、見張り役の伝令である兵士の報告がなされた。

 敵については、仮称で魔王軍という名前を当てはめている。軍というよりは群なのだが魔王群になると意味が変わってしまう。

 先見部隊とは狼などの動物型で足の速い魔物。本隊はスケルトンなどの、ドラゴンゾンビに呼応するアンデッド系の魔物だ。


「敵先遣部隊との接敵予想までおよそ三時間。本隊は三時間半との見積もりです」

「ご苦労。引き続き警戒をしていてくれ」

「はっ!」


 領主様に労を労われた兵士は、緊張を封じ込めた生真面目な顔で答え、すぐに持ち場へと戻って行った。

 この作戦本部にいる面々は一同さっと目配せをしあった。


「覚悟は良いだろうか」


 領主様は重く、確認を取る。

 この場所に居るのは各部隊の長だ。

 騎士隊の隊長とその分隊長、分隊長としてヴィオラの姿もある。他には、弓兵や歩兵を束ねる兵士長、斥候部隊の隊長、自警団の有志をまとめる自警団長、街に滞在する数少ない魔法使い達。

 そして、新設された魔砲部隊の暫定長になった俺と補佐役の見習い騎士。

 それが、今回の『戦争』における将軍役といったところか。


 部隊の規模は総数で言えば万にも満たない。

 かつて三国志とかを読んでいた感覚では、千や二千という兵は寡兵なイメージがあったが、とんでもない。

 俺が一対一ではとても敵わない、よく鍛えられた兵士達がそれだけいるというのは、とても威圧感のある光景だった。

 そんな人達を束ねる長の一人と数えられてこの場にいるのは、緊張しないわけがない。

 だが、バーテンダーとカクテル──魔砲を一番良く知っているのは俺だ。出来る事と出来ない事を把握しているのも。

 その俺がこの場に居ないと、有効な作戦が立てられないのは分かっている。

 まぁ、この場で行うのは作戦の立案などではなく、何度も練られた作戦の最終確認でしかないのだが。


 戦力は以前に、簡単に話したときとほぼ違いはない。敵が微増しているくらいだ。

 もともとこの街の戦力は集めて千。本来ならここから避難する民の護衛を割かなければならないが、その護衛はローズマリーの私兵が勤めてくれている。

 よって、この場にはこの街の総力が集っている。

 数の上では千対二千強で倍以上の差が付けられているが、こちらには『魔砲部隊』が新設されている。

 敵の本隊であるスケルトンはそれによって無力化される、という作戦になっている。

 つまり、俺達、バーテンダーの出来が戦闘の勝敗を左右すると言っても過言ではない。

 客の前ではあまり緊張しない俺だが、この場で緊張するなというのは少々無茶だ。


 大まかな流れでは以下の通りだ。

 まず、斥候部隊がドラゴンゾンビの進軍のおこぼれ狙いである動物型の魔物を挑発。細く長く引きつけた上で森に潜む弓兵による挟撃で一網打尽にする。

 それでも残ったものは、騎士が盾となって受け止め、殲滅する。

 この動物型は別にドラゴンゾンビの魔力によって生まれた訳では無いので、打撃を与えられれば逃げ去るだろう、という算段もある。もともとそれほど強い魔物でもないので問題はない、とのことだ。

 俺のイメージからしても、実際に戦ったことのある動物型の魔物はそれほど脅威ではなかった。俺は遠くからカクテルで狙い撃ちしていただけなので、肉弾戦をやったら容赦なく殺されるだろうが、少なくともヴィオラなら片手であしらえる程度の敵だ。


 そして、その後に続くのがスケルトン軍団、そして魔王ドラゴンゾンビである。

 こいつらは魔王の魔力に充てられて動き出したと同時に、その魔力の源である魔王を本能(?)的に守ろうと動くらしい。

 そのため、スケルトンの群をどうにかしなければ本丸である魔王への攻撃を妨害される恐れが高いという。

 疲れも痛みも、恐怖も知らないスケルトンは人間が正面からやり合うのは分が悪い。剣撃などが有効でないことも以前の説明の通りだ。

 そんな彼らも体を動かしている魔力ごとぶち壊すような魔法には弱い。とはいえ、この世界で魔法使いと呼ばれる、才能ある人間は少数であるため、このスケルトンが群を成しているとなると、非常に脅威らしい。

 事実、王都で構築している防衛軍の中で、一番集めるのに苦労しているのは魔法使い、という話はちらりと聞いている。

 そのスケルトン軍団を一掃するのが、即席のバーテンダー部隊──魔砲使い達の仕事になる。

 個人的には、バーテンダーという単語が戦士や弓兵、武闘家に魔法使いなんかの戦闘職に混じることに甚だしい違和感があるが、どうしようもないな。


 そして、動物型の魔物とスケルトンを突破できた際に立ちはだかる最後の山が、ドラゴンゾンビそのものだ。

 こいつの脅威については、もはや想像すらできない。

 そもそも、この場所に居る人間で本物のドラゴンゾンビと戦ったことのある人間など居ない。もしかしたら、ラスクイルさんなら経験があるかもしれないが、生憎と彼女はここには居ない。

 だが、過去の脅威を記した文献と、準備期間中の威力偵察によって、おおよその脅威度は分かっている。

 その防御力も魔法適性も相当に強力だが、生きているドラゴンと比べればかなり落ちるとのこと。

 ドラゴンに関する記述で残っているのは撃退のみで、討伐された記録はないが、ドラゴンゾンビには討伐の記録がある、といった程度の話ではあるが。それでも、ドラゴンより脅威ということはないだろう。

 しかし、単純な攻撃能力に関してはその例ではない。

 生前の力はなくとも、人間がドラゴンゾンビの攻撃をまともに食らえばひとたまりもない。どんな高級な鎧を身に纏っても、衝撃を殺せず死ぬだろうと報告されている。

 防御に徹した魔法を重ねるなり、突き抜けた技術や身体能力で受け流すことができればなんとか耐えられるか、といったくらいに、人間とドラゴンの種族的な性能差は広い。

 この世界には、魔物をたくさん倒したらレベルとステータスが上がるなんて、都合の良い現実はない。どうあがいても人間は人間だ。

 それでも、伝承には時々、ドラゴンを倒したという英雄の逸話が残っている。

 もしその伝承が本当だとしたら、人間はなにをどうしたって攻撃を食らったら死ぬから、攻撃を食らわないで倒すか、食らっても死なない種族だったかの二択だろうな。

 そして、今回の俺たちは後者に縋ることになる。

 ドラゴンゾンビと直接やりあうのは、フィルとサリー。種族として人間の性能を圧倒的に上回る吸血鬼の二人だ。

 人間の俺達にできることと言えば、せいぜい二人に補助魔法をかけて身体能力を向上させたり、遠くから魔法でサポートしたりといった程度。

 それでも、吸血鬼とドラゴンゾンビが正面からやりあったらどうなるのかは、分からないが。

 作戦を立案していたスイの言を信じるなら、吸血鬼の渾身の攻撃でドラゴンゾンビの魔力の核を砕けば、俺達の勝ちとなるらしい。

 俺達は、そうなることを信じて、二人を援護するしかないのだ。



「おい」


 作戦会議という確認を終え、俺達バーテンダー部隊の集まりに向かう道すがら。

 スイはヴィオラと話があるということで別れ、一人のんびり歩いていると、物資を保管してあるテントの中から声がかかる。続いて声の主が姿を現す。

 俺に声をかけてきた男の姿に、俺は驚き目を丸くした。


「ギヌラ!? なぜこんなところに!?」

「大袈裟だぞ貴様」


 果たしてそこに居たのは、見慣れたくもないのに見慣れた、不機嫌な金髪男だった。

 だが、彼がこの本部に居る事は想定外にもほどがあった。

 しかも、俺を更に驚愕させるのは、ギヌラだけでなく、まだ歳若い少女であるクレーベルの姿もあることだ。

 ギヌラのアウランティアカ、そしてクレーベルのサフィーナ商会は、この戦闘に際しての補給部隊だった。

 両者とも、炭酸飲料、そしてカクテルに繋がるベースポーションの開発に巨額を投じている。炭酸飲料の工場や安価なベースポーションの生産工房も稼働を開始しているため、ここで街を放棄するのは甚大な被害となる。

 だからこそ、少しでも勝つ確率が増すようにと、資金やら物資やらで街を強力にバックアップしてくれた。

 特に、俺達バーテンダーは魔砲を使うのに魔石と材料を必要とする。戦闘どころか訓練ですらガンガン金を消費する金食い虫であるのだ。資金や物資の重要性は他の部隊の比ではない。

 そういった意味でも、二人が支援役として参加してくれたのは大変にありがたかった。

 だがしかし、それは戦闘が始まるまでのことだ。戦闘そのものには関わらないのだから、避難民と一緒に避難しているものとばかり考えていた。というかそう聞いていたのだ。


「もう間もなく、敵との戦闘が始まる。二人とも、早くここから離れた方が良い」


 実はギヌラが戦えることを俺はこの身をもって知っているが、それとこれとは話が別だ。

 二人とも、カクテルの未来のためにも、そして二つの企業(と言って良いのか?)の将来のためにも、絶対に失ってはいけない人材だ。

 この戦闘で仮に俺が死んだとしても、フィルとサリー、そしてカクテルを教え込んだ見習い騎士たちが生き残ればカクテルが消えることはない。

 だが、ギヌラが死ねばこれから売り出すベースポーションの生産が、クレーベルが死ねば、既に始まっている炭酸飲料の生産が大幅に出端をくじかれることになりかねない。

 そんなこと、俺が言わなくとも二人とも分かっている筈だ。

 だのに、彼らは戦闘が始まる直前にも関わらず、こんなところにいた。


「貴様に言われなくとも、と言いたいところだが、そういうわけにも行かない」

「どういう意味だ」

「今まで言わなかったが、カクテルという魔法と、その材料の関係性を僕以上に熟知している人間はアウランティアカには居ない。君達バーテンダーが戦闘を続けるなら、後方から戦闘の様子を確認し、物資の補充を指揮できる人間が必要だ。その適任が残念ながら僕だったという話だ」


 と、心底嫌そうな表情ながら、頑として譲らない視線を向けるギヌラ。

 俺は何か言い返そうかと考えたのだが、彼の決意を否定できるほどの材料はなかった。

 そう。バーテンダーの戦闘には魔石と材料が必要だ。

 それらを【弾薬化】して持ち歩かなければいけないのだが、戦闘においては、一つ致命的な欠点がある。

【弾薬化】自体は、ヴィオラの例を見れば分かるように、簡単に習得できる。

 だが【弾薬化】の精度は個人差があり、それによって個人間で大きな問題が発生していた。

 平たく言えば、弾薬化した状態であっても材料の『温度』がどんどん変化していってしまうことだ。

 時間が経つと材料の『氷』が溶けてカクテルが『不味く』なる。

 そしてカクテルが『不味く』なるということは、魔法は『弱く』なるということだ。

 短期決戦で一気に決められるなら問題なかろうが、そう都合良く転ぶ保証などどこにもない。

 故に、バーテンダー部隊は、魔法の威力を維持するために、定期的な『氷』の補充をしなければいけない。しかし、その度に砦に戻っていては戦線が崩壊してしまう。

 だから、砦から状況を確認し、適宜『氷』を補充してくれる補給部隊が必要だ。

 もちろん、氷だけではなく、減ってしまう弾薬の材料、特にレモンや各種炭酸飲料などの汎用的な材料も、状況に応じて適宜補充する必要が出てくるだろう。

 それなので、そういった部隊の必要性は分かっているのだが、その指揮をまさかギヌラが取るなどとは全く考えていなかった。


「ふん。イベリスの奴がさっさとポーチを改造していれば良かったものを。なまじ貴様がその欠陥品を扱えてしまうから、機人が興味をなくしてしまったんだぞ」

「う……」


 相変わらずの恨みがましい言い方だが、それでいてその通りだからぐうの音も出ない。

 俺のポーチ──【弾薬化】したカクテルそのものが入っているそれは、イベリスが作った特別製であり、温度変化が起きない。というか、時間そのものが止まっているので、カクテルも完成したその直後の状態で維持できている。

 ただ代償に、あのスイですら軽く引くくらいの燃費の悪さで、第五属性の魔力を吸い続ける代物だ。

 だが、俺はその第五属性の魔力だけ垂れ流すくらいに余っているらしいので、それで何の問題もなかった。

 後々改良をする、という予定はしっかりあったのだが、特に問題ないから後回しにされ続けているうちに、イベリスが興味を失っていた。

 その結果、今回のバーテンダー達のために、改良されたポーチを開発量産する時間が残っていなかったのである。


 といっても、完成したカクテルそのものを【弾薬化】して放てる俺と違って、彼らは【弾薬化】した材料をその場で混ぜ合わせて放つことになる。

 ということは、完成度を保つために時間を止める必要もなく、ただ冷やしておけば良い。要求される技術や魔力は全然違う。

 今回は間に合わなかったが、そういう方面のポーチの改良であれば、それほど難しくないだろう。小型の電池式冷蔵庫の魔法版みたいなものを作れば良いだけだ。

 まぁ、俺はポーションの勉強で魔法をちょっと齧っただけなので、素人考えだが。

 とにかく、今回はそれ以前の話で、イベリスをはじめとした機人たちには、銃の量産を依頼していたのだ。ポーチの新規開発をする時間等はじめからなかった。


「とはいえ、機人達が率先して協力してくれた事実を考えれば、ポーチの改良など瑣末な問題だろうがな」


 ポーチについて俺を軽くなじったあと、ギヌラはしみじみとそう零す。


「『銃』がないのに、ポーチがあっても意味ないからな」

「そういうことだ」


 今回の戦争に先だって、俺達は機人の協力を得ることが一つの課題になると考えていた。

 イベリスは、俺の専属ということでほぼ無条件に俺に協力してくれているが、他の機人たちはそうではない。

 そして彼らは金で動かない。物作りに没頭するあまり金が無くて行き倒れ寸前になっているくらいなのに、金に頓着はしない。


 そんな彼らに『銃』の量産を頼んでも、素直に引き受けてくれるかはわからなかった。


 しかし、蓋を開けてみれば、想像よりも遥かに容易に機人たちの協力を取り付けることができたのだ。

 その点に関しては、彼ら自身も住む場所を失いたくなかったというのが一つ。

 これまであまり説明してはいなかったが、機人も立場としてはベルガモ達獣人と似たようなものだ。常にある種の差別的な目線で見られることが多く、この街のように自治的な集落を認めてくれるところは少ない。

 それ故に、彼ら自身がこの街を失い難く思ってくれていた。


 そして、そんな『建前』のもとに、多くの機人を動かしたのが先日完成した『銃』という構造物、そのものである。


 彼らは、物作りに異常な執着を示す。

 そして、出来上がった物に関しては急速に興味を失う性質がある。


 彼らは、未知のものが好きなのだ。

 そして、未知の物を学び、そこからさらに未知のものを考案し、作り出すのがまた好きだ。

 だから、出来上がったものには興味を失う。それは既に既知のものとなるからだ。

 イベリスの師であるゴンゴラ曰く『一から十まで構造を知り尽くしているものに、どう興味を持てと?』とのことである。

 自分の作った完璧な物よりは、他人の作ったゴミのような失敗作のほうが価値があるし、なんならその辺の石ころのほうがまだ興味深い、とまで言ってのけた。


 そして、彼らにとって『銃』は大いなる未知であった。

 彼らだけではなし得ない、エルフによる魔法理論を積み込んだ構造物は、彼らの知的好奇心を大いにくすぐった。

 そして、彼らは俺達への協力を了承した。

 つまりは『銃』を調べたくてたまらないから『銃』を作るのを了承したのだ。

 彼らにとっては、銃の設計を学び、作ることそのものが報酬みたいなものだったのだ。


 そうして新しい『おもちゃ』を手に入れて熱心に遊びはじめる彼らに、ポーチの改良などを頼む余地ははじめから無かったのである。

 なお、ポーチの改良は無かったが、銃に関しては面白い改良を加えてくれたとだけ言っておこう。俺も後付けで、俺が貰った最初の試作銃『ヴィクターフランクル』に取り付けて貰ったくらいだ。

 話がそれてしまったが、便利なポーチがなければ、補充は必要だ。

 とにかく、補充の問題は最初から残るべくして残ったというわけだ。


「不本意だが、僕が指揮することはセージ氏にも伝わっている。父上も了承済みだ」

「ヘリコニアさんが……」

「母上は最後までごねていたが、なに、危なくなったらさっさと逃げると約束したら渋々許して貰えたよ」


 過保護だという話しか聞いてないギヌラの母親の様子を軽く想像しつつ、俺はギヌラのため息顔を眺める。

 口ではこう言っているくせに、今のギヌラはいざとなっても逃げ出さないような気がした。最初はカクテルの詰まった銃口を向けられただけで、意識を失ったこの男が。

 初めて会った時と比べて、一番変わったのはやはりこの男なのではないだろうか。


「ギヌラのことは、分かった。大変な役回りだけど、よろしく頼む」

「貴様に言われるまでもない」


 憎まれ口を叩くギヌラとの会話から、俺は視界の中のもう一人に声をかける。


「それで、クレーベル嬢は、なぜここに?」


 ギヌラについては、戦場に必要な役割ということで了解できたが、クレーベルは違う。

 彼女の仕事は、物資を仕入れ、領主様の部隊に提供したところで終わっている。

 だから、この場にいる必要はまったく無い。

 果たして、俺に尋ねられたクレーベルは、にこりと笑って言った。



「私、家出してきましたの」



 その言葉に、俺どころか連れてきた筈のギヌラまで驚いているのは何故なのか。


ここまで読んでくださってありがとうございます。

更新遅くなって大変申し訳ありません。推敲に思わぬ時間を取られてしまいました。

まだ書き溜めは残っておりますので更新止まらないです。大丈夫です。

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