序章
事故と事件は違う
事故は唐突に発生するものだ。
ならば事件はどうだろうか?
事件も「誰でもよかった」、「ムシャクシャしてた」など、捕まるのを覚悟して犯罪を犯す者もいれば、この世の中、完全犯罪が難しいと言われるこの御時世で、知恵を絞り、罠を張り、完全犯罪をやってのけようとする。
では完全犯罪とはなにかー。
簡単だ。
見つからなければいいのだー
「ーというのはどうかしら?」
「いや、ダメでしょう…」
「あら?どうして?」
「探偵が完全犯罪を促してどうするんですか…」
「大丈夫よ。そんなこと絶対できないから」
「そうは言っても…しかもその前置きどっかの推理小説に載ってた気がしますよ」
「パクリよ。私はキメ顔でそう言った」
「それもパクリですからね?」
「…気にしないのよそこは…」
溜息しか出なかった。
俺は常盤勇吾。高校二年生であと半年で三年生になる。都会から少し外れた位置にあるひっそりとした探偵事務所のバイトをしている。
高校生につとまるのか疑問なのだが、彼女曰く、「探偵には助手がつきものでしょ?」という。なんとも無茶苦茶な。ちなみに給料は依頼がない限り貰えない。なんで俺がそんな溜息事務所でバイトしているかというとー。
「ねえ、常盤くん、密室殺人は古いかしら?」
彼女は嶸山佑衣。美女コンテストで優勝が狙えそうなくらい綺麗な大学二年生でこの探偵事務所の主だ。先月二十歳の誕生日に突然「探偵やるわよ!」と言い出し現在に至っている。ちなみに依頼は未だ0を更新している。なので彼女は推理小説を書いて出版社へ持って行こうとしている。…まあ無理なんだろうけど。
「佑衣さん慣れないことをするのはやめましょう。なんでよりによって小説を書こうなんて言い出すんですか」
「出来ると思ったからよ」
と彼女は白紙の原稿用紙を突きつける。
「なにも書いてないじゃないですか」
「私にはまだ無理だったみたい」
「少し考えれば分かるとおもいますけど」
「第一客が来ないから悪いのよ」
「この事務所のせいだとおもいますよ」
「あら?なんで?」
「だってー」
そうこの探偵事務所、看板が無い。
そう、看板が無いのだ。
「だって取り付けだけて結構お金かかるのよ」
「でも看板無いと何の店かわからないですからね」
「あ…それもそうね…。なんで常盤くんもっと早く教えてくれなかったのよ!」
「いや三日に一回は言ってましたからね?毎回取り付けるとか言いながらも忘れてるんじゃないですか」
そう、彼女は自分に関係ないことは覚えようとしない。覚える気がないのだ。まあこの件は彼女に多いに関係があるはずなのだがー。
「まあ、また今度でいいわよ。それよりなにか事件はないの事件は」
「あっても探偵の出番なんてそうそう無いですよ」
「むぅ…。つまんないわ」
「そもそもなんで探偵なんですか?」
「それはあなたが一番分かっているでしょ」
ーどくんー心臓がはねる。
「それに契約があるんだし、私はめんどくさいから常盤くん看板作っといてね」
「……分かった」
ーその契約こそが彼女と俺の関係で、俺がここにいる理由だったー。
ピピピピピピピピ……
目覚ましの音で目が覚める。
「朝か…。ふぁぁぁ…あ?」
欠伸をしながら横を見ると佑衣さんが寝ていた。
「なにやってんすか…」
「スゥ…スゥ…ん…あぁ…おはよう」
「おはようじゃないですよ。ちゃんと自分のベットで寝て下さい」
「だって遠いんだもん…」
「いやそんな変わらないですって、隣の部屋じゃないですか。それより先輩も女性なんですから」
「大丈夫だよ…常盤くんにそんな甲斐性ないし」
…本当に一回襲ってやろうか。こっちだって高校生なんだ。
「それより早く朝ごはん作ってよ…」
「…はぁ…。わかりましたよ」
俺は半分ヤケクソになりつつもベットに佑衣さんを残して部屋から出る。実はこの探偵事務所が家なのだ。つまり俺と佑衣さんは同棲生活を送っている。そう言えば響きはいいが家事は全部俺がやることになっていて、朝ごはんと弁当をつくらなければいけないので朝起きるのは割と早い。
「…よし、ご飯できた。あとは佑衣さんか…」
俺は佑衣さんを起こしに行く。
「起きて下さいよ。佑衣さんー」
「んー。あと三分…」
「ダメですそんな時間ないですから」
「おはようのキスはぁ…」
「…寝ぼけてないで起きて下さい」
俺は無理やり佑衣さんを立ち上がらせてリビングへ連れて行く。
「いただきます」
「いただkwg¥°…」
「何語ですかそれは…」
仕方なく俺が佑衣さんに食べさせることになる。これが俺のいつもの日常だ。そしてこれがずっと続いていくものだと思っていたー。
読んでいただきありがとうございます。まだ始まったばかりで評価もつけられないと思いますがどんどん追加していきたいと思うので出来たら応援よろしくお願いします。