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俺と魔法と聖剣と 2話

よろしくお願いします!!

2話 不要な一言





今、結希と謎の美少女は公園を離れて俺の住むアパートに来ている。あの後結希が腹部の耐え難い激痛にのたうち回りつつ、誠心誠意の謝罪をした後に周りが騒がしくなりだしたのであの馬鹿でかい剣を担いで人目を忍びながら何とか結希宅にたどり着き彼女に説明を求めるためにお茶とお茶菓子を命じられるがままに用意していた。



「……って、おかしいだろ!? なんで家主の俺が初対面の相手にこき使われてんの!」



思わず手に持っていたせんべいやらなんやらを思いっきり床にたたきつけてしまう結希。せんべいを目を輝かせて見ていた彼女はそれなりに落ち込んでいて、両手を床に着けてうなだれそうな勢いだった。



「そ、そんな……おせんべいが……。なにするのよ! 家に客が来たら何か出すのが筋でしょ! そんなことも分からないの!?」



「黙りなさい!! お前客! 俺家主! 少しは遠慮しろよ!! だいたいまだお前の事もあの剣の事もなんで俺の事を知ってるのか何も聞いてないんだぞ! 説明が先だろ普通」



「何よ、おせんべい一つでそんなに言うことないじゃない!!」



机に手を叩きつけて顔をこれでもかと突きつけあう二人。だがここでさらにがみがみと言い合っても一ミリも話しが進まないと気付いた結希は妥協案を提示する。



「ちゃんと全部話してくれたらせんべい出してやるのにな~~」



その言葉にすかさず反応した彼女は何やら持ってきていた旅行鞄から眼鏡を取りだしてかけると、まじめな顔をして説明をはじめた。



「じゃあ今から公園で起こったことから説明するわね」



「……現金な奴め」



彼女は顔を少し赤くしながら「そこうるさいわよ」と言って今までの説明を始めた。






「じゃあ、今さらだけど自己紹介するわね。セシル・トラヴァースよ。よろしく」



セシルが頭を下げると結希も同じように自己紹介を始める。



「よろしく。もう知ってるみたいだけど改めて……、宿木結希だ」



セシルがよろしくと返事してから話を始める。



「私があなたに会いに来たのには理由があるんだけどそれを説明するにはまずその『剣』と、ある場所について知ってもらわないといけないわ」



「場所? まだ何かあるのかよ……」



長話を予期させる言葉にため息を吐いてしまう。訪ねたのは結希だがもともと校長先生のありがた迷惑な話しは開始数分で寝てしまうタイプの結希にとって長く話を聞いているのは苦痛でしかない。



「とりあえず、その『剣』のどこかに名前が入ってるはずだから探してくれない?」



「剣に名前があるのかよ。どれどれ」



隣に立てかけておいていた剣を改めてじっと見つめる。今までよく見ていなかったが過度な装飾がないのに関わらず、圧倒されるような空気が剣を包んでいる。肉厚な刀身とは裏腹にまったく重さを感じない剣を持ち上げて目を凝らして名前に当たりそうなものを探す結希。しばらくそうしていると柄の部分にExcaliburと記されていたのに気付いた。



「おっ、あった! えーっと……Ex……calibur……エクスカリバー!?」



「そう、あの『聖剣エクスカリバー』なのね。やった!」



乾いた笑みを浮かべる結希とは対照的に喜んでいるセシルは両手をかわいらしくガッツポーズにしている。



「いやいやいや、数千年前に失われた剣が空から落ちてくるわけないだろ。ははは……ははは……」



「ええ、もちろん本物じゃないわよ。だけど、ある意味では本物以上と言えるわ」



「本物……以上?」



「そうよ、その『剣』自体は最近製造されたもののはずよ。だけどそれはただの人の手で作られたものじゃない。その『聖剣』みたいなフィクションノンフィクションを含めたあらゆる伝説の武器が今この世界に現存しているわ」



「つまり、こんなのが世界中に存在してる……しかも人じゃないってことは機械が作ってるのか?」



「分からないわ」



「え?」



「ここからが話の本題よ」



そこから始まった壮大な説明会は結希にとって正気を疑いたくなるような内容だった。まずは問題の『聖剣Excalibur』について。数十年前から突如世界に伝説で語り継がれるような武具が飛来し始めた。これらは必ず誰かのもとに落ちてきている。それも謀ったかのように周りに一般人がいない時にである。ただし知っているものであれば話は違うらしいが。そのような特性から最初に公式に確認された場所のフランスの言語で所持者を選ばれし者の意味の『ルワーナ』、落ちてきた武具を『ルワーナ』から取った『ルワン』と呼んでいる。『ルワン』にはそれぞれ特殊な力が込められてあり、原則的に物品に関係した逸話の力を使い続けるうちに使用できるようになる謎の法則が存在する。これらは総じて持ち主にしか扱えず、秘められた力を引き出すことはおろか持ち上げることも叶わない。そして……



「『ルワン』が造られたのは地上じゃないわ。その場所は地上30kmに浮かぶアフリカ大陸に匹敵するほどの面積を誇る浮遊大陸、アトランティス。そこで造られているわ」



結希は数秒時間が止まったように固まった後ゆっくりと確認するように問い返す。だが帰ってくるのは信じられない現実離れした返答だけだった。



「地上30km? アフリカ大陸? 正直言って信じたくないんだが……。だいたいそんなでかいものどこにあるんだよ、それだけの物ならとっくに大騒ぎになってるんじゃないか?」



「もっともな質問ね。でも地上からじゃ何をしたって見つけられないの。大陸の周りには位相フィールドって言われている特別な障壁が張られているの、分かりやすく言うと透明になって見えなくなるのよ」



透明(ステルス)フィールドだと!?」



またも机に手を叩きつけて、今度は興奮したようにセシルに詰め寄る結希。興奮のあまりセシルが若干引いているのも致し方ない。



「そんなSFみたいな話しがあるなんて!」



夢みたいな話しに胸を高鳴らせる結希。男の子なら一度は夢みることだ。



「その通りよ、SFみたいなオーバーテクノロジーの塊を量産できる物がある大陸が私たちの頭の上を今も通り過ぎている《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》のよ」



「……!!」



「アトランティスには『ルワーナ』とその仲間と認められた者しかいけない、『ルワン』が鍵になってるの。そして数年前の話、大陸にいたチームが偶然近づいてくるスペースシャトルを発見したわ、もうそれは大騒ぎになったらしいわ。それからどうなったと思う?」



顎に手を当てて熟考する結希、そして回答は……。



「騒ぎになってないしやっぱり上手く脇を抜けてったとか?」



「残念でした。正解はアトランティスの真ん中を抜けていったのよ、土も木も山も人すらも(・・・・・・・・・・)すり抜けて、まるで何もないかのように」



「・・・・・・」



何も言わずに身体を震わせている結希に少し怖がらせちゃったかしらと少し反省しているとポツリと結希が何かを言う。



「え、何?」



「そ……そんな男の夢を叶えるような素晴らしいものがあるなんて!!」



「この、変態バカ!!」



「あがっっっ!?」



セシルの鋭い右ストレートが結希の頬に突き刺さる。崩れ落ちていく結希は倒れながら一言。



「素晴らしい拳と……突っ込みだ……」



「うるさいっ!!」



余計なことをのたまう結希に叫ぶセシル。あたしってこんな女の子じゃなかったはずなのに、ホントに調子狂うわねと呟くお嬢様も確認された。


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