プロローグ 運命の交叉路
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第0話 運命の交叉路
フランスのとある屋敷にて
日も落ちた深夜。フランスの都市圏を離れた小さな村の近くにある森のさらに奥にある屋敷の一室でこの屋敷の主人と思わしき男と一人の少女が会談を始める。
この屋敷の主人である叔父の趣味なのか深夜であるにも関わらず光源が蝋燭しかない客間に通された私は対面に座り、長旅で疲れた体に鞭打って親戚である叔父に頼んでいた本題について体をテーブルに乗り出して問い始めようとする。だが、私の鬼気迫る気迫に彼は苦笑を漏らすと一息つかせるように紅茶を差し出す。
「セシル君、そんなに怖い顔しないで。綺麗な顔が台無しだよ」
そんな言葉を添えながら微笑む彼の態度に焦燥感を募らせるが焦っても仕方がないと思い直し、腰を下ろしてからいただいた紅茶を少量口に含み唇を軽く湿らせてから話し始める。
「ふう……、叔父さんも分かっているとは思いますけど今の私には時間が無いんです。できるだけ手短にお願いします」
「そうだったね。では、結論から言うと見つけたよ」
私は驚きと喜びを交えながら思わず椅子を飛ばすように立ち上がった。その様子を叔父は満足げに見ていると続きを話し始める。
「肝心の人物と場所、それに時間についての情報だよ」
「それは本当ですか!」
私は予想以上の成果に開いた口が塞がらなくなる。確かに叔父は情報通でそこを頼りにして今回の頼みを調べてもらっていたのだがそれにしても期待以上の結果に胸中の喜びは極限に達する。
得意げな表情を崩さない叔父は再度話し始める。
「本当だとも。まず場所はユーラシア大陸にある極東の国日本、その首都に当たる東京。時間は今から約1ヵ月ほど。そして人物についてだが、対象は宿木結城君。東京の高校に通う17歳の青年だね。良かったじゃないか、同年代の男の子だよ」
私は人物の情報を聞いたところで体の熱が急激に冷めていくのを感じた。男、それも同年代なんてやりにくいにも程がある。思わず別の人を探してと言いかけるが理性で抑え込み、熟考する。本来『ルワーナ』についての情報がこんなに詳細に判明することは少ない。これも叔父の手腕があってこそのはずだ。こんな機会はもうこないかもしれない。いや、まず起こらないだろう。この情報はそれほどの幸運の結果に舞い込んできたものと言える。ましてや、今の私が陥っている状況を鑑みれば答えは最初から決まっていたようなものだ。それは叔父にも分かっているはずなのにいたずらをする少年のような顔をして私に問いかけてくる。
「どうする? 行くのなら飛行機のチケットを用意させるけど」
「わ、私は……」
今日の日付が変わるころ、私と一人の青年の運命が交わり始めた。