おはよう、僕も、私も。
春休みだというのに、私は入院中である。
白い天井に白い床。白いベッドの上に白いシーツを体にかけて座っている。
私はぼーっと、窓の外を見ていた。
今日は、ぽかぽかしていて眠たくなるような日だ。
でも、もうすぐ回診の先生が来るので、起きていなくちゃいけない。
「眠いなぁ…。」
私は、大きな欠伸をした。
お母さんが倒れた私を見つけ、救急車を呼び、私が病院へ運ばれてきたのは、昨日の昼過ぎのことだった。
私の目が覚めたのはその日の夜で、私が眠っている間に何があったのか分からない。
先生は何も説明してくれないし、お母さんは昨日、既に帰ってしまっていて、今日もまだ会っていない。
私、何か病気なのかな…。それともただの風邪?
そんなことを考えていると、先生と看護婦さんが病室に入ってきた。
「おはよう。調子はどうですか?」
柔和な笑みを浮かべた先生は、私のベッドの横に置いてあるパイプ椅子に腰掛ける。
眠いです、と私が答えると、ははは僕もだよ、と笑った。
聴診器をあてられている間、私は自分が病気なのか聞こうと思った。
でも、私が口を開いた途端、病室にお母さんが入ってきた。
振り返った先生は、お母さんに頭を下げてから、
「はい、お疲れ様。今日は天気も良いし、散歩でもしてくるといいよ。」
と私に言って、出て行ってしまった。
「おはよう。調子はどう?」
お母さんは、さっきまで先生が座っていた椅子に腰掛けながら、私の顔を覗いてきた。
眠い、と答えると、お母さんもよ、と笑った。
「ねぇお母さん。私って何か病気なのかなぁ。」
さっき先生に聞けなかった質問を、お母さんに投げ掛けた。
「まだ検査の結果が出てないの。でもまぁ、疲れが出ただけでしょ。ゆう、最近勉強ばっかりやってたじゃない。」
お母さんは、持ってきた鞄を探りながら答えた。
そっか、と私が言うと、お母さんは鞄から私の着替えを取り出した。
「しばらく検査入院しなくちゃいけないみたいだから。着替え、ここ入れとくわね。」
お母さんは、持ってきた私の着替えや歯ブラシを、テキパキと片付けていく。
その間、私はまた窓の外を見ていた。
私の病室は一階で、窓のすぐ外は中庭だ。
看護婦さんが、車椅子をゆっくり押して歩いているのが見える。
「…静かだな。」
病院は本当に静かだった。静かで、白くて。
ふいに私は、寂しい、と感じた。
「…お母さん。」
片付けが終わったらしいお母さんは、持ってきたリンゴの皮を剥いていた。
「なぁに?」
お母さんは手をとめて、私の方を向いた。
「私の部屋にさ、クッキーがあると思うの。それ、持ってきてほしいな。」
お母さんは、一瞬考えるような顔をしたけど、
「まぁ、食事制限とかは特にないし、いいか。」
と言って、明日持ってきてくれることを約束してくれた。