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きみに会うまでの時間、会ってからの時間  作者: 春隣 豆吉
第一部:アレン・クロスビーは待機中
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4.静かに怒る看板娘

ランスの大好きなオーガスタ。の巻

 俺がデルレイの家庭教師になってから1週間が過ぎた。兄と打ち合わせをして、今日から魔法の練習をすることになった。

二人で庭に行こうと廊下を歩いていると、向こう側からオーガスタが歩いてきた。

「あら、アレン。こんにちは、デルレイ。」オーガスタはデルレイと話すときは必ずデルレイの目線までかがむ。

「こんいちは。オーガスタ」

「今日はアレンと一緒なの?」

「うん!」

「デルレイ。“うん”じゃなくて“はい”だろう?」

「いいじゃないの。私相手なんだから。まったくアレンは頭が固いわね~」

「おじうえ、あたまがかたいの?」デルレイは、俺の頭をさわろうと手を伸ばす。

「デルレイ。今のはたとえだ。ほら、俺の頭をさわってみろ」

 俺はデルレイを抱えると髪の毛をさわらせた。

「あう?おじうえのあたま、やらかいよ?」

「デルレイがさわっているのは髪の毛。頭が固いというのは、融通がきかないってことだ。」

「ん~??」

「ま、大きくなれば分かる」

 俺はデルレイをおろす。

 その様子をみているオーガスタは笑いをこらえている。


「今日は、どうしてここにいるんだ?」

「奥様に依頼された洋服のデザイン画をお見せしてたの。そしたらお茶に誘われてね。今まで楽しくお話していたのよ」

「そうなのか。」

「ぼくたちはにわにいくところなの。」

「庭でなにをするの?」

「まほうのれんしゅうをするー」

「アレン。こんな小さいうちから魔法って練習するの?」オーガスタは不思議そうな顔をして俺のほうを見た。

「魔力をいかにバランスよく出すかというのは体で覚えるのが一番だからね。あとは、体力もつけないと、魔道士としてはやっていけない。俺も兄上もだいたい3歳くらいから練習していたし。ランスもそれくらいから練習しているぞ。」

「いちいちランスを話題に出さなくていいから。昨日もランスが店に来たんだけどね、ちょうど元彼女が来店していたのよ~。そこだけ気まずい雰囲気でさあ。まいったわよ」

 オーガスタが呆れた表情で話し出す。

 自分の思惑通りにことを進めるのが大好きなランスが、どうもオーガスタに関しては本人が画策するとおりにことが進まないらしい。

 ランスには悪いけど、傍からみているとかなり面白い。


 正門までオーガスタといっしょに行くとデルレイが言い出したので、3人で正門まで行くことになった。

「あのねオーガスタ。ランスからオーガスタのことをおくしゃまってよんでっていわれたよ」

「は・・・?」一瞬あっけにとられたオーガスタは、デルレイの目線までかがんだ。

「どうして、私が奥様って呼ばれるの?」

「んとねー、オーガスタはいずれランスのおくしゃんになるからってランスがいったよ」

「そう・・・・ランスがそんなこといったの・・・・へえ・・・」オーガスタはランスの話を聞くと立ち上がって、俺を見た。

「アレン。ランスがまたデルレイに変なことを吹き込んだようね」

「・・・・そのようだね。」オーガスタの落ち着き払ったその態度が逆に恐ろしい。

「オーガスタ、それだけランスは本気ってことだと思う。あいつは、どんな女性と付き合っているときでも、結婚をにおわせるようなことは言ったことないからね。」

「ふーん。・・・・ま、次にランスが店に来るときが楽しみね。」ちょうど正門に到着したので、オーガスタは帰っていった。


「おじうえ。ランス、おこられるのかもしれまえん」

「どうして、怒られるんだ?」

「オーガスタはいつもわらってるのに、さっきはわらってなかったです。ははうえがおこるときとおなじー」子供の目は侮れないな・・・・。

「・・・・次に家に来たときには励ましてやろうな。さて庭で魔法の練習をするか。」

「はい!」

「よし。デルレイ、ちゃんと“はい”と言えたな」

「うん!」

「・・・デルレイ」まだ、かなり遠い道のりかもしれない・・・・。



 その後、屋敷に来たランスは「オーガスタに“子供に嘘を教えるなんてよくない”って怒られちゃってさ~。“デルレイにオーガスタを奥様と呼ばせる作戦”は失敗だったな~。でも怒ったオーガスタの顔もかわいくてさ~」と全然めげてはいなかった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


基本、ランスはポジティブ思考です。

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