3.アレンとデルレイ、そしてランス
素直なデルレイ。の巻
部屋のドアからクマが現れて驚かないのはクロスビー家の人間と、うちによく出入りしている人間だけだ。
「おじうえ、おきた~」
「お。デルレイ、昼寝から起きたのか」ランスが声をかける。
「あ、ランスがいる!!」
「デルレイ。“起きた”ではなくて“はい。起きました”だろう?」
「う。ごめなにゃい。はい、おきました。」
「父上と母上から話は聞いているか?」
「はい。きょうからべんきょうをおじうえにおしえてもらうように、といわれまちた」
「ところで、デルレイ。この部屋までヴェラが付き添ってくるのではないのか?」
兄夫婦が不在のときはヴェラが付き添うと確かに聞いていたはずなのに、部屋に入ってきたのはデルレイ一人。
「しやない。」
「は?」俺が驚いていると、外で「坊ちゃま?どこですか?」とヴェラの声がする。
「・・・デルレイ。父上と母上との約束ではなかったか?」
俺はため息をつくと、ドアを開けて探し回っているヴェラを見つけてデルレイの居場所を教えた。
「も、申し訳ございません。時間になりましたので坊ちゃまを起こそうと部屋に行きましたら、いらっしゃらなくて。私がそばにずっといればよかったのに」
「うちは少数精鋭で皆忙しいからね。丸一日デルレイのそばにいられるわけがない。悪かったね。」
「いいえ。アレン様、そのように謝らないでください」
そういうと、ヴェラは何度もお辞儀をして仕事に戻っていった。
「おじうえ、ごめなしゃい」
デルレイはお気に入りのクマのぬいぐるみを抱えてしょんぼりと椅子に座っていた。
「アレン、許してやれよ~。起きたら誰もいなかったんじゃ不安になるじゃないか」
「ランス、悪いが口を出すな。デルレイ、約束を破るのはよくないぞ。父上と母上が帰ってきたら、ちゃんと謝れ。俺が一緒に行ってやるから」
「はい。わかりまちた。おじうえ」
「ふーん、優しいじゃん。おじうえ」ランスが俺をみてニヤニヤする。
「ランス、3歳児のまねをするな」
「おじうえ、ランスはさんさいなのでしか?」デルレイは俺に聞いたあと、ランスをまじまじと見た。
「精神年齢は同じようなものだ。」
「アレン、そういうこと言うか」と、ランスはじろりと俺を見る。
「俺はおじうえと同じ歳だ。25歳だよ」ランスが横から口を出す。
「ふうん。」そういうと、デルレイは俺とランスを見比べた。
「オーガスタもおなじとし?」
「オーガスタは俺たちの1つ下で24歳だ。あ、デルレイ。こんどオーガスタにあったら“おくさま”って呼んでやってくれよ」
ランスが、またしょうもないことをデルレイに教え込もうとしている・・・
「オーガスタは、いずれ俺の奥さんになるからな。今のうちに慣れておけよ?」
「おくしゃん?」
「デルレイの母上みたいなものだ。母上のことを屋敷の皆は奥様と呼ぶだろ?」
「うん。ちちうえとけっこんしてるからおくしゃまってよぶんだって、おじうえがおしえてくれまちた」
「そうそう。だからさ、呼んでやってよ。オーガスタも喜ぶと思うんだ」
そういうと、ランスはそろそろ王宮に戻ると言い出し、俺とデルレイは正門でランスを見送った。
「おじうえ、オーガスタがランスのおくしゃまってほんと?」
前にランスが教えたことをそのまま信じてしまったデルレイに、俺が「ランスに何か言われたら、まず俺に確認するように」と教えたことをデルレイはちゃんと覚えていたようだ。
「デルレイ。今度オーガスタに会ったら、ランスが言ったことをそのまま教えてやろうな」
「うん!」
悪いな、親友。いくらなんでもうちの甥っ子に嘘を覚えさせるわけにはいかないんだ。
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某作品で俺様ヘタレぶりを発揮しているデルレイの小さい頃です。