アダルバードの婚活-4
援護射撃あり。の巻
次の週、仕事を終えて屋敷に戻るとロアナとばったり出くわした。
「あ・・・こ、こんにちは。アダルバード様、お早いんですね」
「やあロアナ。昨日から泊り込みだったんだ」
「そうだったんですか。忙しいのですね」
「・・・・」
「・・・・」
いつもならここで互いに会釈して終わるんだけど、ロアナも何か言いたそうで立ち止まっている。
今日のロアナはなぜか緊張しているみたいだ。
「「あ、あのっ」」二人同時に重なってしまった。
「あの、アダルバード様からどうぞ」
「いや、ロアナから話してくれないか?」
「で、でも。アダルバード様のほうが目上の方ですし・・・」
このままだと、堂々巡りになりそうな気がした俺は「いいんだ。ロアナ、きみからどうぞ。これは当主命令だよ」使いたくはなかったけど、分別あるロアナには“当主命令”と言った方が効果がありそうだ。
「わ、わかりました。」ロアナはそういうと、まず深呼吸をした。
「アダルバード様。この間は、失礼なことを言って申し訳ありませんでした。お許しください」
「失礼なこと・・・・?」
「あ、あの“冗談は性格だけに・・・”と言ってしまった件です」
「ああ、あれ。全然気にしてないよ。」
「でも、私のような者がクロスビー家の当主様に言っていい言葉ではありませんでした。」
「きみのような者って?」
「私のような、魔力も家柄もない庶民がということです」
「ロアナ。僕はきみが僕に媚びたりせずに接してくれるのが楽しいんだ。萎縮しないでほしいな」
「えっ」ロアナが“うそだろう”という顔をする。
「それに、きみにそういうことを言わせた僕のほうが悪い事をしたと思ってる。びっくりしたんだろう?いきなり10歳も年上の男から交際申し込まれて」
ロアナは図星をさされたみたいで、こくんとうなずいた。カルロッタの言うとおりだ、俺って女心に疎いのかも・・・。
「それでアダルバード様、そのう交際の件ですが、私はお断りしたいと・・・」
「僕は撤回しないよ」
「ええっ」ロアナの顔が真っ赤になって驚いている。
「これから挨拶だけじゃなくて、いろいろ話してみようよ。僕はきみのこと知りたいし、僕のことも知ってほしい。僕とのこと考えてくれないか」
ロアナは下を向いてしまった。
二人して、屋敷の廊下で立ち尽くしているとドアから母上が顔を出した。
「ちょっと、アダルバード!あなた廊下で何やってるの!!」
「は、母上!いたんですか」
「いましたよ。あなたたちが廊下でドラマチックな展開になってるから、皆がそこを通りづらいと伝達石で私に報告してきてるんです」
どうりで、誰も通らないはずだ・・・。
ロアナは母上のほうを向くと、「申し訳ありません。アンドレア様」と母にお辞儀をした。
「ロアナ、あなたは悪くないわ。悪いのは、場所を考えてないそこのバカ息子よ。でも、ロアナ?」
「はい。」
「アダルバードは、変な性格してるけど悪人じゃないわよ。できれば応えてあげてほしいわね」
うふふっと笑うと母上は「とりあえず、場所を変えたら?」と言い残して、ドアを閉めた。
「母上に、聞かれてたようだね」
「・・・・・は、恥ずかしいです。次からどんな顔してこちらにお伺いすれば・・・」ロアナはますます赤くなっていた。なんだかすごくかわいい。
「大丈夫だよ。みんな、きみを歓迎してるから。」
「そういう問題ではありません!!」
「そう?まあそれはともかく。僕の申し出、考えてくれないかなあ」
「わかりました」
「へ?」
「アダルバード様と、挨拶以外の話をします。ですが、私の話など面白くありませんよ?」
そうだろうか。俺はロアナをもっと知りたいんだけど。
「よし。じゃあこれからよろしくね?」
「は、はい・・・それでは失礼します。」ロアナはそういうと、早足で玄関に向かっていった。
ロアナは早くここから立ち去りたい一心で俺の申し出を承諾したみたいだけど、俺は言質をとったからね?
「母上にも協力してもらえそうだし・・・図書館にも顔を出すかな」俺は何だか楽しくなって、仕事の疲れも吹き飛んでしまった。
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抜け目のなさはクロスビー家の遺伝でしょうか。