19.異世界で一泊二日-王国編:2-
パーティーの後。の巻
長文になります。
ご了承ください。
アイルズバロウ家で開かれた結婚パーティーは立食形式だ。アレンさんが私と一緒に入っていくと、皆がなぜかこちらを見ている。
「アレンさん、なんか見られてる気がするんだけど・・・」
「俺だけ見てれば大丈夫だから。ずっとそばにいるよ」
「ぼくもいるー」隣にいたデルレイくんが私の手をつないだ。
デルレイくんの態度に思わず顔がほころんでしまう。
「デルレイ・・・おまえはランスたちにお祝い言ったら、子供部屋だろ?」
「えー、ぼくもパーティーみたい。」
「だめだ。デルレイ、挨拶したら子供部屋に連れて行くからね」お兄さんに言われたデルレイくんは「はい」と少しがっかりしていた。
4人でランスさんとオーガスタさんのところに行くと、アレンさんが私を紹介してくれた。
「オーガスタ、リコ・オノヅカだ。俺の許婚」
「まあ!アレンに許婚がいたの?」
「え!リコちゃんって許婚だったの?」
二人とも知らなかったらしくて、とっても驚いていた。そりゃそうだろう。私だって知ってまだ1年たってないのだ。
アレンさんが「お互いの祖父同士が決めてたんだ。でも、実際にリコと顔を合わせたのは俺がグレアム伯父上の仕事を引き継いだ後だよ」と説明してくれた。
そのあと、なんとなく男同士、女同士で話しが分かれ私はオーガスタさんとおしゃべりを楽しんだ。
おしゃべりが終わる頃にはお互いを「リコ」「オーガスタ」と呼び合うことになっていた。オーガスタさんが気さくな人でよかったなあ・・・「なんでこんな女が」とか思われたらどうしようとか思っていたのだ。
デルレイくんはランスさんたちにお祝いの言葉を言った後、「もうすこしいたいです。ちちうえ」と少しだけ駄々をこねた。
しかしお兄さんは「お祝いだけ言ったら、子供部屋で私の迎えを待つという約束を昨日しただろう?当主との約束を破ってはいけないな」と言って、子供部屋に連れて行かれたのだった。
パーティーは賑やかに進行していく。新郎新婦の挨拶が終わるとアレンさんの周囲にはたくさんの人が集まってきた。
「アレンさん。私、ちょっと疲れちゃったから椅子に座っててもいい?」周囲の人にわからないように日本語でささやく。
「大丈夫?・・・・ちょっと失礼」アレンさんは周囲の人たちに断ると、私を隅にある椅子まで連れて行ってくれた。途中で飲み物をもらい、私に手渡す。
「はい。これ飲んで待ってて。俺が戻ってきたらもうパーティーから抜けよう」
「え?皆アレンさんと話したいみたいだよ。いいの?」
「ああ・・・そうみたいだね。しょうがない。顔だけ出してくるよ」
そう言うと、アレンさんはパーティーの人ごみに消えていった。
華やかな衣装に、色とりどりの美味しい食事。そしてきらびやかな人たちに囲まれてるアレンさん。・・・・思わずため息が出てしまう。
「どうして、ためいきをついてるの?」
「え。なんか疲れてしまって・・・・って。デルレイくん。どうしてここに」
そこにはデルレイくんが立っていて、私に向かって「しー」って人差し指をたてている。
「だって、こどもばかりなんだもん。たいくつだよ」デルレイくんも子供じゃん・・・
「リコさんはパーティーたのしい?」
「そうねえ・・・華やかで圧倒されてしまったわ。デルレイくんも大きくなったらこういうパーティーにたくさん招待されるんじゃない?」
「ぼく、つぎのクロスビーけのとうしゅなんだ。きっとしょうたいされるとおもう」
デルレイくんは当然といった顔でうなずく。7歳なのに、言ってることは子供っぽくない。帝王学みたいなのを既に学んでいるのかもしれない。
「リコさん。ぼく、さいしょリコさんにあいたくなかったんだ」
「え。」デルレイくんの衝撃の発言にちょっと驚く。
「だけど父上は、リコさんといることがおじうえのしあわせなんだっていうんだ。ぼく、おじうえだいすきだし・・・リコさん。おじうえといると、リコさんはしあわせ?」
デルレイくんはまっすぐに私を見る。ここは、ちゃんと答えなくちゃいけない。
「そうね。私もアレンさんといると幸せよ」
「うれしいことを言ってくれるんだね。リコ」いつの間にかアレンさんが戻ってきてて、うれしそうに微笑む。だけど、私の隣にデルレイくんがいるのを見て驚いた。
「デルレイ、どうしてここにいる」
「だって、たいくつなんだもん・・・おじうえ、ごめんなさい」
アレンさんはため息をつくと、デルレイくんの頭に手を置いた。
「しょうがないな・・・ちょっとここでリコと待ってなさい。兄上を呼んでくるから。二人とも、もう家に帰るからね」
数分後、アレンさんはお兄さんを伴って戻ってきた。お兄さんはデルレイくんをみると「デルレイ。約束を破ったな・・・帰ったら説教だ。」とちょっと叱った。
屋敷に戻って部屋でドレスを脱ぎ、持ってきた普段着に着替える。あとは暖かいお風呂に入ってベッドで寝転がりたい。ここも豪華な部屋なんだけど、あのパーティー会場に比べるとほっとする。
用意されていたお茶を飲んでいると、ノックの音と「リコ、今大丈夫?」というアレンさんの声がした。
アレンさんを部屋に入れてお茶を入れる。ソファで並んで座っているときにアレンさんから「デルレイに言ってたことはほんと?」と聞かれた。
うーん。よもやアレンさんに聞かれてるとは・・・でも、私の正直な気持ちだし。
「本当よ。アレンさんといると、幸せよ」
アレンさんは私の言葉を聞くと、真剣な顔をして私を見た。
「よかった・・・ねえ、リコ」
「ん?」
「俺と結婚してください」
「は・・・はい~??アレンさん、ずいぶん突然・・・」
「俺は、いつ言おうかずっと考えてたよ。返事はむこうに帰ったら教えてくれる?じゃあ、俺は兄上のところでデルレイを弁護してくるかな。リコはゆっくり休んで。じゃあね」
そういうと、アレンさんは私にキスをして部屋を出て行った。
だめだ。今日は眠れないかもしれない・・・・
読了ありがとうございました。
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なんとかプロポーズまできました。