17.異世界で一泊二日-出発編-
アレンのお願い。の巻
小池くんの酒癖が発覚して1ヵ月後のこと。私はアレンさんの家で彼が入れてくれる美味しいお茶をごちそうになっていた。お菓子は私が作ったバナナスコーンだ。
彼氏と二人でグリーンゲイブルズ風の家で、ソファに座ってまったりティータイム。幸せ~。
「親友の結婚が決まったんだ。リコも一緒にパーティーに出席しない?」
まったりのんびりした雰囲気のなか、アレンさんの発言に私は背筋がのびた。
「へ。アレンさんの親友って」
「うん。王国在住で王宮で魔道士をしてる。」
「へー、そうなんだ・・・じゃなーい!!王国って異世界よね」
「そうだよ。だって俺異世界人だもん。二人で旅行なんて初めてだよね」
「いやいやいや。確かに二人で旅行は初めてだけどっ!異世界に行くんだよね?」
「やっぱり最初はニホンがよかった?俺、自分が育った国をリコに知ってほしくて。それにリコのことを親友に自慢したい。」
アレンさんの育った国、見たいかも。王国にいるアレンさんの友達も見てみたい。で、でもアレンさんの家って確か「名家」ってやつよね・・・。
「リコ?もしかして、気後れしてる?」アレンさんが心配そうに私を見る。
「・・・・うん。だって、アレンさんの家って「名家」ってやつでしょ。私、ど庶民だし・・・その、」
「リコ。俺の家族や友人はそんなこと鼻にかけるような人間じゃない。兄やグレアム伯父上を見て分かるだろう?」
アレンさんは真剣な顔をして私の手をとる。爽やかな風が入ってきて心地いいはずなのに、アレンさんに手をとられて顔が熱くなる。
「う、うん。それは・・・分かってる。」
「俺と、王国に一緒に行ってくれるよね?」
アレンさんの笑顔で強制する技に私が勝てる日が来るのかなあ・・・
「理子。これをグレアムにこれ持っていってくれ。」
王国に行く前日、父が私の部屋に日本酒のビンを持ってきた。
「これって、グレアムさんの好きな銘柄だね」グレアムさんは、父と一緒によくこの日本酒で晩酌していた。
「王国には日本酒なんてないしね。あいつも飲みたいだろうから」
「そうね。」
「理子。今さら聞くのもなんだけど、アレンと一緒に王国に行くってことは周囲にアレンの許婚として認識されるってことだ。いいのか?」
「お父さん。私はアレンさんと付き合うって決めたときに、許婚になることも受け入れたの。だから大丈夫だよ」
「そうか?・・・じゃあ、気をつけて行っておいで」
「うん」
父からのプレゼントをグレアムさんが大喜びで受け取る姿が頭に浮かんで、なんだかちょっとプレッシャーだった王国行きが楽しみになってきた。
アレンさんの家にある「扉」の前に立つ。一見普通の扉なのに、その向こうが異世界だなんて、やっぱり信じられないや。
「リコ、行こうか」
アレンさんの差し出した手をとって、私は扉のなかに入った。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
理子が異世界に行きます。
まずは出発するところまで。