15.小池くんのつぶやき
14の小池くん視点です。
一人で戻ってきた俺に、工藤を始め二次会に行くメンバーは皆優しかった。
「次、カラオケ行こうぜ~」と誰かが言い出し、皆でぞろぞろ歩いてく。歩く前にさっきまでいた場所を見たけど、そこにはもう小野塚さんとあの外国人彼氏はいなかった。
3年越しの片思いは何もいえないまま終わってしまった。
新人研修のとき、小野塚さんは工藤や望月さんと一緒の隣のグループだった。この3人がいた班は優秀で、プレゼンをやらせてもディベートをやらせても綻びがなかった。小野塚さんは目立たなかったけど、意見はきちんと述べるし進行役をさせても緊張はしているもののソツがない。 俺と同じ班の女子たちが、もっぱら休憩時間に男子と知り合うことに時間を費やしていた姿とのあまりの違いに興味を持ったのが始まりだった。
同じ勤務先になったら、真っ先に小野塚さんの電話番号を聞こうと決心したのに俺の勤務先はなぜか大阪。小野塚さんは、工藤や望月さんと同じ本社勤務。
ようやく本社に転勤してきたら、小野塚さんは俺が同期だということも覚えていなかった。
確かに同期が50人はいるなかで、地方支社に行った同期を全て覚えていられるかって言うとそれはムリな話。でも・・・ちょっと・・・いやかなりショックだった。
工藤は研修のときに俺と同室だったときに、俺が小野塚さんに片思いをしているのを何故か察したらしく、本社に転勤した俺に協力を申し出てくれた。
歓迎会のときも、俺の隣は小野塚さんの席。話すときに緊張しているのを悟られたくなくて、俺は注がれるお酒をどんどん飲んで、小野塚さんに話しかけた。
小野塚さんはお酒が好きじゃないのか、コップに残っているビールにはあまり手をつけておらず、ウーロン茶を飲んでいた。
酔っ払っているのをいいことに、少しだけ肩に触れてもいいだろうか・・・などと思い、彼女の肩に触れたとたん、手に静電気が走ったような痛みが。
いったい、今のは何だったんだろう。その後は他のテーブルの同期に呼ばれて席を外した。そこでわいわいと飲み、自分の席のほうをみると小野塚さんは、工藤や望月さんそして一部の本社勤務の同期たちと楽しそうに談笑していた。
俺と話しているときより楽しそうなのが、悲しい。
飲み会が終わって、どうしても小野塚さんと話したかった俺は彼女を二次会に誘った。しかし彼女の反応は悪くて、思わず彼女の腕をつかんでしまった。
すると、先ほどの静電気とは段違いの鋭い痛みが腕に走ったのだ。いったい、どうなってんだ??俺が驚いて半分呆然としていると、そこに一人の男が現れた。
175センチの俺より、ずっと背が高く銀色っぽい髪の毛で恐ろしく顔の整った外国人の男。「リコ」と彼女を下の名前で呼ぶ声はやたら甘い。小野塚さんもいきなり男が現れて驚いたものの、その姿を見てうれしそうに微笑んだ。
男と小野塚さんは俺の存在を半分無視して(男は確実に俺をスルーしている)話し始めた。帰ろうとしているので俺は思わず「小野塚、この人は?」と聞く。
しかし、二人の様子からして、本当は分かっていたのだ。案の定、小野塚さんの口から男のことを恋人だと紹介されてしまった。俺のことも同期の小池くんだと彼に話している。
男のほうは「ああ。彼がコイケか」と言ったきり、俺のほうを冷たい視線で眺める。
この視線にいつまでも耐えられるヤツはそうそういないと思う・・・・俺はあわてて小野塚さんに別れの挨拶をすると、工藤たちのほうへ走っていったのだった。
「それにしても、小野塚の恋人が外国人とはね~。」俺の隣で工藤がつぶやく。
周囲も話題はもっぱら小野塚さんの恋人の話だ。
「工藤たちは遠かったから見えなかったかもしれないけど、恐ろしいほど顔の整ったヤツだった・・・。」そして、あの冷たい視線。
「そうなのか?・・・・小池は女性社員の間で人気あるからさ。今度合コンでもやろうぜ」
そう言って工藤は慰めてくれたけど、思いをすぐに消化するのは難しそうな気がする・・・。
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アレンさんに「(理子に下心満載な)虫」認定された小池くん視点の話です。