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きみに会うまでの時間、会ってからの時間  作者: 春隣 豆吉
第二部:許婚は異世界男子
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13. 虫除けネックレス

理子、無自覚にのろける。の巻

 1ヶ月前に大阪から本社に転勤してきた小池くんは、仕事もできるし見た目も悪くないのでたちまち女性社員の間で人気が出た。席が隣なのでときどき話すことがあるけど、性格も悪くないと思う。きっと、女の子たちからたくさんアタックされてるんじゃないだろうか。


 麻子と社食でお昼を食べていると、小池くんと営業部の人がお昼を食べている周囲に内勤業務の女の子たちが群がっているのが見えた。

「すごいね~。麻子、見てみて。小池くん人気者だよ」

「あら~。うちの後輩までいるじゃない。そんなにいいかねー、小池」

「そりゃ麻子は彼氏がいるから」

「それは理子も同じでしょ。理子なんか隣の席だから、変なやっかみとかされてない?」

「それがねー、全然ないの。アレンさんのおかげかな」

「は?」麻子がわけわからんという顔をする。

「私もさ、ちょっと嫌がらせされたらどうしよーってドキドキしてたの。でもね、アレンさんがくれたネックレス見てたら、なんか大丈夫って気がしてさ。本当に何もないの」

「・・・・もー、こっちにまで幸せオーラがだだもれ・・・・ごちそうさまだよ」

 麻子はやれやれって顔をしてるけど、本当にあのネックレスをつけてると気分が落ち着いてきて、守られてるって感じなのだ。


 そこに同期であるシステム部の工藤くんが「隣いい?」と声をかけてきた。

 工藤くんは面倒見がいい性格で、同期のなかでもまとめ役。麻子や私と同じずっと本社勤務の仲間なので顔を合わせれば気軽に雑談などをする。

「なんか久しぶりだね、工藤くん。」

「ずっと出張してたからね。昨日札幌から帰ってきたんだよ。」

「さっすがシステム部の期待の星。日本中の支社まわって顔売っておけって?」

 麻子がからかうと、工藤くんは「ちげーよ。人が少ないから俺も飛び回らなきゃいけないの」と言いつつ、期待の星といわれてうれしそうだ。

「ところで、二人とも。今度の金曜はあいてるか?」

「「金曜?」」

「小池の歓迎会をしようと思ってさ。同期に声かけてるんだ。営業部でも歓迎会したんだろ?」

「うん。したよ。といっても、私は最初の1時間で帰ったけど」

「あー、小野塚の家は厳しいんだよな」工藤くんが思い出して笑った。


 会社に入って間もない頃に同期だけの飲み会があって、ついつい調子に乗って帰宅が真夜中になってしまったことがある。こそこそ見つからないように静かに玄関に入ったら、そこに祖父が鬼の形相をして立っていたのだ。普段は穏やかな祖父だけに、あれは怖かった。

 次の日、二日酔いの私に特効薬の我が家特製の苦い青汁を飲ませた祖父から「女性が真夜中までお酒を飲んで帰ってくることの危険性」を懇々と諭され、会社の飲み会は1時間で切り上げて帰ってくることというのを約束したのだった。

 その後、家に何度か遊びに来た麻子を気に入った祖父は、麻子が一緒のときは多少遅くなっても大目に見てくれるようになった。

 後日、偶然お昼に居合わせた工藤くんにも事情を話したので、彼は私の事情を知っているわけだ。

「望月も一緒なら2次会は行けなくても、最初の飲み会は最後まで大丈夫なんだよな」

「そうだね。でもさー、同期の男の子だけで行ったほうが楽しいんじゃないの?」

 男の子だけで行ったほうが、気楽だと思った私は工藤くんに進言してみた。

「そうよ。男だけで行けばいいじゃない。そのほうが盛り上がると思うけど」麻子も私に同意する。

 すると、なぜか工藤くんは「そ、それはちょっと。小池がさ、本社にいる同期たちと久しぶりに顔を合わせたいって言ってるし。な、頼むよ。参加してもらえないかな」と私たちに手を合わせてきた。



「飲み会?」

夕食後に私の部屋で何気なく同期の飲み会の話をしたところ、アレンさんは以前に私が話した小池くんのことを思い出したらしく渋い顔をした。

「アレンさん?渋い顔してどうしたの?」

「え。あ、ごめんね。リコ、ちょっとネックレスを外してもいい?」

「はあ?自分で外すし」

「だめだよ。」そういうとアレンさんはいつの間にか私の後ろにまわっていた。

「アレンさんは、私を甘やかせすぎだよ」

「そう?本当に甘やかすなら、家から一歩も出さないで至れりつくせりだよ。試してみる?」

「・・・試さない。」アレンさんなら、本当にやりそうだからヘタなことを言ってはいけない気がする。

 ネックレスを手にとったアレンさんは、ペンダントを両手につつんで何か念をいれているみたい。

 もしかしてお守りって、ほんとに「お守り」??私はアレンさんの手を思わずじっとみてしまった。

「今つけてあげるね」

 私は素直にアレンさんにつけてもらった。

「アレンさん、このネックレスって本当に“お守り”なの?」

「そうだよ。心外だなあ、もしかしてただの暗示だと思ってた?俺は魔道士だよ。」

「ご、ごめん。ついアレンさんが魔道士だってことを忘れちゃって」

「リコ。この石には防御魔法と通話魔法がかかってるけど、今回もうひとつ加えたから。」

「な、なに?」

「余計な虫がつかないように。防虫だよ。」

「虫?蚊とか?」

「そうだね。蚊にもさされなくなるよ」

「ほんと?わー、ありがと。これで夏の夜も眠れるね」

 私がお礼を言うと、アレンさんは何だか意味ありげに笑った。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


「虫除け」の意味が微妙に食い違っている二人です。


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