11. 見に来たひと
理子、あわてる。の巻
私とアレンさんがつきあい始めて3ヶ月がたとうとしていた。これに関して周囲の反応は・・・
父と兄は「じいさんの念願がかなってよかった~」と大喜びしていた。
アレンさんのほうも同じだったらしく、グレアムさんがやっぱり同じようなことを言っていたらしい。アレンさんには、お兄さんとその息子さんがいるんだけど、お兄さんのほうはグレアムさんから聞かされるまで初耳だったらしく非常に驚いていたとか。
麻子に話したところ(さすがに異世界人の魔道士だとは言ってない)「外国人の彼氏・・・理子、あんたすごいよ。」アレンさんに会わせたら、「理子。あの杉山を捨ててあんたはよかったんだよ!!」と喜んでくれた。
付きあってから私はアレンさんの母国語であるブリードン語を習っている。
アレンさんが困惑した様子で、私に連絡してきたのは土曜日の午後だった。
こちらの世界にも順応するためにグレアムさんが電話をつけたそうだ。
「リコ、悪いんだけど今からこっちに来られないかな」
「いいけど、どうしたの?」
「うん。実は、兄が来ててリコに会いたいっていうんだ。」
お兄さんということは当主様か!付き合ってからわかったんだけど、アレンさんとグレアムさんの実家、クロスビー家は王国では有数の名家ってやつらしい。そう言われるとアレンさんもグレアムさんも楽しいことや冗談が好きだけど決して下品じゃないもんね。どこか品格が漂っているというか。
「えーっ!すぐには行けない。20分後に行くからっ。」なにせ、私の格好はシャツとサブリナパンツ。顔は日焼け止めだけだ。
「僕はリコがどんな格好でも好きだけど。兄も気にしないよ。」
「そういうわけにはいかないのっ。じゃあ、20分後ね!!」
私はアレンさんからの電話を切ると、頭の中で何を着ようか考え始めた。
髪の毛をまとめ、服と化粧をなんとか整え私はアレンさんの家に向かった。
「リコ。急にごめんね」迎えに出てくれたアレンさんがすまなそうに頭を下げる。
「いいよ。それより、この格好で大丈夫かなあ」
「・・・・髪の毛、こんど僕がおろしてもいい?」
まったく、この人は。私があきれた目線をむけるとアレンさんは「ま、それは近いうちに。どうぞ。兄は居間にいるから」そう言って、アレンさんは私の背中に手をあてた。
居間に入ると、アレンさんによく似た顔立ちの男性がお茶を飲んでいた。クロスビー家ってアレンさんもグレアムさんも男前で、当たり前だけどこの人もハンサムだ。ハンサム遺伝子が代々伝わっているんだろうか。確か、甥っ子がいるって言ってたけど・・・・いつか見てみたいかも。
私の下世話な思考を知らないアレンさんから、お兄さんを紹介されて覚えたばかりのブリードン語で挨拶と自己紹介をした。
お兄さんはちょっと驚いて『リコさんは、言葉をアレンに教わっているのかな?』と聞いてきた。
『はい。まだ少しだけですけど』
お兄さんはアレンさんに何事か言うと、アレンさんの顔が私を見た後に赤くなった。
・・・・・お兄さん、いったい何を言ったんだ?
「アレンさん。顔が赤いよ。どうしたの?」
「そ、そうかな。気のせいだよ、リコ、お茶をどうぞ」
その後、アレンさんを介して私とお兄さんは会話をした。帰る頃にはアレンさんを介して「今度はアレンと一緒に王国にも来てくださいね」と言われてしまった。
私が、異世界に・・・そんな日が来るのかなあ。内心不思議に思いつつも「そうですね」と返事をしておいた。
次の日、なぜか父と兄が二人そろって出かけてしまい今日の夕飯は私とアレンさんだけだ。
「昨日はお兄さんと食事をしたの?」
「うん。王国に戻ってね。」
「は?」
「扉を通れば、すぐに屋敷内だからね。日帰りも可能だよ」
そうだった・・・この人たちにとって移動なんて、あっという間なんだった.
「兄が、リコを気に入ったといってたよ」
「そっかあ~。よかった。実は緊張してたんだ。ねえ、どうしてアレンさんはお兄さんの言葉で顔が赤くなったの?」
「う。それは」珍しくアレンさんが言葉に詰まった。
「それは?」ちょっと面白くなって思わず聞き返す。
「兄は僕に“もう彼女にプロポーズはしたのか?”って聞いてきたんだ」
「プロポーズ?ええええっ、お兄さん気が早すぎ!!」
気が早いぞ。お兄さん!!それとも王国では交際3ヶ月で結婚なのか?それともあれか、政略結婚が普通で恋愛がないのか。
「リコ、うちの一族は政略結婚をした人間は一人もいないよ」
いつの間にか、私の心を読んだアレンさんが言う。
「ちょっと!私の心を読まないでよおっ」
「ごめんごめん。あまりにリコの表情が面白くて」そういうとアレンさんは私の隣にきて「ごめんね?」と言った後にキスをしてきたのだった。
読了ありがとうございました。
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兄、ここでも名前なし!!
ていうか名前考えてない・・・