10.アレンさんの話-2
関係変化。の巻
アレンさんは扉のできた理由を話し始めた。
「・・・・・というわけなんだよ」
「いつ、おじいちゃんに出会ったのかしら」
「祖父は日記を残してるんだけど、コウノスケさんがきょろきょろしていた祖父に声をかけたのが始まりらしい。自分を遠巻きにしている人ばかりだったから、余計にうれしかったそうだ。あっという間に仲良くなって親友になったらしい。祖父が後に自分が異世界人だと言ってもその態度は変わらなかったそうだ。」
「なるほどね~。うちのおじいちゃんらしいよ。」
おじいちゃんは人種や性別、年齢で人を判断しないように心がけるんだぞって、兄と私にもよく言っていた。言うだけじゃなくてちゃんと実践していた人だった。
「で、コウノスケさんと仲良くなった祖父は、王国とつながった雑木林を購入してこの家を建てた。」
「そうなんだ。」
「お金には困ってないけど、こちらでお金を稼いでみたいと考えた祖父は商売を始めることにした。ちなみに、その商売は代々受け継がれてるんだ。」
「・・・・その商売は貿易じゃないの?」
「違うよ。こちらでクロスビー家が代々やっているのは調査会社。」
「調査会社?」
「もともと、クロスビー家は王国でも魔道士として似たような仕事をしている。ただ、知らない世界でトラブルに巻き込まれるのはゴメンだったから、祖父は親友のコウノスケさんに窓口を頼んだんだ。」
「その窓口ってもしかして今は父と兄がやってる?」
「うん。不動産屋の傍ら、窓口のほかに経費の面倒も見てくれて助かってるよ。」
私の知らないところで、そんなことしてたのか。でも、どうして私には誰も教えてくれなかったんだろう。なんだか悲しくなってきた。
「どうして、私には誰も教えてくれなかったの?なんか家族から疎外されている気がする」
アレンさんはがっかりした私の様子に困ったようだった。
「うーん。それはテツオさんとイツキに聞いてみたほうがいいよ。僕が憶測でものを言っても真実じゃないかも知れないだろう?」
アレンさんの言うことは正しいんだけどさ・・・・私はため息をついた。
「・・・・アレンさんは、あのとき先輩に魔法をかけたんだね」
私はふいに金曜日の先輩の操られているような動きを思い出した。
「うん。ちょっとね。体に害はないよ。接近されたくないならリコに近寄ると空気に跳ね返される魔法でもかけてあげようか」
私に近寄ると、跳ね返される??どこのSF映画だ。そんなことになったら周囲に誰も近寄ってこないじゃないか。今後の生活に差し障りがある。
「ううん。大丈夫。アレンさんが彼氏のフリをしてくれたから、きっと先輩はもう私に近寄ってこないよ。金曜日はありがとう、アレンさん」私はあわてて断った。
「リコ。このまま、僕を恋人にしない?けっこうお得だと思うけど」
「え・・・」
「僕はリコが好きだよ。このまま許婚同士として過ごしてもいいけど、その前に恋人同士になりたい」
この数ヶ月、アレンさんと過ごしてきて驚くことばかりだった。一番驚いたのは今日だけど、その驚きだって不愉快というより、どきどきするほうが多くて。
いつの間にかアレンさんが、しっかり私の心に入り込んでる。
アレンさんは、すごく真面目な顔をして私の返事を待っている。
異世界人で魔道士なんて、びっくりな話だけど・・・私、怖いとかじゃなくてわくわくしてる。
「アレンさん。私があなたの恋人でいいの?他にも素敵な人は、この世界にたくさんいるよ。」
「僕はリコがいい。きみのそばにいたい」
-その夜の小野塚家-
アレンさんが夕食を食べて帰ったあと。
「お父さん、お兄ちゃん。今までグレアムさんやアレンさんが異世界人だってどうして私に教えなかったのよ」
「えーっと。それはだな、イツキ」父が兄を見る。
「え?俺が言うの?それは違うだろ。父さん言いなよ」
「あ~、こんなときじいさんがいたら」
どうもアレンさんが来る前のやりとりとパターンが似ている・・・・
それでも何とか父を問い詰めて聞き出したその真相は、なんのことはなかった。おじいちゃんが、私が20歳になったらアレンさんとの許婚話を父やグレアムさんと一緒に話をしようと決めていたらしいんだけど、私が先輩と付き合い始めたために言いづらくなって現在まで至ってしまったらしい。
後日アレンさんにその話をしたら、「テツオさんや伯父上らしいというか・・・」とちょっとあきれていたのだった。
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なんとか二人をくっつけました。