7.アレンの帰宅
帰ってきたアレン。の巻
アレン視点です。
1週間の出張のはずが、結局戻ってくるのに3週間かかってしまった。
テツオさんとイツキが働いている事務所に顔を出してから家に戻ることに決めた。
「アレン、おかえり~」イツキが仕事の手をとめて出迎えてくれる。
「イツキ、ただいま。テツオさんは?」
「お客様を案内中。不動産屋のほうな」
「そうか」
「思ったより時間がかかったみたいだな」
「うん。調査対象が忙しい人間でな。調べるこっちもあちこち移動してた。しかし、依頼主への報告もすませてきたから」
「わかってる。こっちにも報告きてるよ」
「そうか」俺はそういうと、イツキがいれてくれた緑茶を飲んだ。
緑茶は、ニホンにきてから初めて飲んだ。テツオさんの家では食事のあとに皆でお茶を飲むのが習慣で、そのときに出てくるのが緑茶だ。
はじめは、お茶だと言われても、自分の知らない色のお茶に内心ぎょっとしたものの伯父上が美味しそうに持ち手のないカップ(ユノミというそうだ)で飲んでいるので、試しに飲んでみたら、すがすがしい香りと悪くない渋みが実によかった。
伯父上とともに夕食をテツオさんの家で食べるようになると、自分用の食器が用意された。王国では食器は個別に決まっていないので驚いた。使っているうちに愛着がわいてくるのも不思議だ。
「なあ、アレン」イツキも自分のカップにお茶を入れて俺の前に座る。
「なんだ?」
「理子に、いつ本当のことを言うんだ?あいつ、どうもグレアムさんが言った貿易関係の仕事というのに疑いを抱いてるみたいだ」
「そのうち言う。・・・この仕事が終わったら、このへんを案内してくれる約束になっているんだ。」
「ふーん。ま、アレンはあいつの元彼と違って誠実そうだしな。なんたってグレアムさんの甥だし」
「理子、恋人いたのか?」
「ああ。あいつが20歳のころから4年つきあってた。一度家に連れてきたことがあるよ」
「どんなやつ?」今、理子は25歳だから昨年まで付き合っていたわけだ。
「恋人と順調だったのに、後輩の女の子と浮気して恋人にばれたバカな男」
「なるほど。」理子は、どういう対応をしたんだろう。
「理子がバッサリ振って終わったらしい。」俺の内心の疑問を読んだように、イツキが言う。なんとなく、想像ができて思わず笑ってしまう。
そこで、俺はちょっと思いついた。
「イツキ、リコの会社ってここから遠いのか?」
「電車で15分くらいだけど・・・なんで?」
「今日、リコを夕食に誘ってもいいだろうか」
「なんだデートか?いちいち家族に聞くなよ~。王国ではそれがルールか?」
「そういうわけじゃないんだけど、なんとなく」
「どうぞどうぞ。いい店教えてやろうか?」
「そうだな。頼む」
俺は、リコの会社の場所とイツキおすすめのレストランを聞いていったん家に戻ることにした。
リコの会社は5時30分に業務が終わって、残業がなければ6時近くには会社から出てくるらしい。
家に戻って、風呂に入って体を休めてからリコを夕食に誘おう。そのときに、自分の本当の仕事と、素性を打ち明けようか・・・・でも、リコは信じてくれるだろうか。
どうして、テツオさんやイツキがリコに何も言ってないのかは疑問だけど、リコが自分を受け入れてくれるといい。俺は一眠りする前にそう願った。
読了ありがとうございました。
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そういえば登場人物の年齢を書いてませんでした。
理子(25歳)
アレンと樹(29歳)です
デルレイの家庭教師をしていたときが27~8歳くらいです。