6.思わぬこと
理子、連続で寝耳に水。の巻
アレンさんは出張が長引いているらしくて、2週間たっても戻ってこなかった。
数ヶ月ぶりで父と兄、私の3人だけの夕食が続いている。
「アレンさん、忙しいんだね。1週間で戻るって言ってたけど」
「お?気になるのか。そうだよなあ~許婚だもんなっ」
なぜかうれしそうな兄。
「許婚とか関係ないしっ。貿易の仕事って忙しいんだね」と私が言ったとき、なぜか二人は微妙な顔をした。
私がお風呂に入るため階下に行くと、ダイニングでビールを飲んでいる父と兄の声が聞こえる。小さい声で話しているつもりなんだろうけど、丸聞こえ・・・
「グレアムは貿易関係って理子に話していたんだな」
「アレンにも彼女がいただろうし、理子はあの浮気男とつきあってたからね。じいちゃんもグレアムさんも許婚は口約束で終わるんじゃないかと思ってたんじゃないかな」
「・・・・アレンから言うまで理子には黙っていたほうがいいよな」
「そうだね。父さん、俺たちからは言わないほうがいいよ。」
どうやらアレンさんの仕事は貿易の仕事じゃないらしい。私は、自分だけが知らないことがちょっとショックだった。
家は祖父が不動産業を起こして今は父と兄が二人で家の近くにある事務所で仕事をしている。
町の不動産屋だと思っていたのは私だけ?・・・そういえば前に事務所の駐車場に運転手さんが待機している黒塗りの高級車が止まっていて、事務所の中ではなんだか偉そうな人が祖父と仲良く話してるのを見たことがある。
あれは・・・どうみても家を探しに来た感じではなかった・・・・。
でも、父と兄を問い詰めてもきっとはぐらかされちゃうんだろうな・・・いいや。アレンさんが帰ってきたら何が何でも聞き出してやるっ!
次の日、私は会社でも麻子から寝耳に水のことを聞かされることになった。
麻子はあのとき行った合コンがきっかけで、彼氏ができた。
その麻子がなにやら神妙な顔をして、書類を持って私のいる部署にやってきた。
「・・・理子」
「どうしたの。営業部になんか用事?」
「あ、うん。清水部長から営業部長に書類を持っていくように頼まれてさ・・・今日、お昼どうする?」
私と麻子は時間が合えば一緒にランチをすることが多い。
「今日はお弁当持ってきてないから、社食かな」
「外、行かない?ちょっと、耳に入れておきたいことがあるんだ」
真剣な顔をする麻子を不思議に思いつつ、私は断る理由もないので承諾した。
会社の近所にある美味しいうどん屋さんで食事をして、コンビニで飲み物を購入後にやっぱり近所にある公園に向かう。
公園に到着すると麻子は、なぜかきょろきょろと周囲を見回し知ってる人間がいないことを確かめると口を開いた。
「先週の土曜に、彼氏と駅で待ち合わせをしていたの」
「うん。」
「で、私のほうが先に到着したので彼氏を待ってたの・・・そしたら、杉山に声をかけられた」
「杉山って、まさか」
「あんたの元彼。浮気男の杉山よっ」
杉山先輩・・・大学生のときに所属していたサークルの先輩で、私のはじめての恋人だった男。
やつが同じサークルだった後輩の女の子と浮気したのが原因で、私の4年越しの恋愛は終わった。
麻子には一度紹介したことがあるし、当時部屋においてあった二人の写真(今は燃えるゴミに捨てた)を家に何度か遊びに来ている麻子は見ている。
「すごい偶然だね。向こうもデートだったんじゃないの?」
「そう思ってさ、聞いてみたわけ。そしたら今は彼女いないんだって。それでね、あんたのことをいろいろ聞かれた」
「ええっ!いまさら??」
「もう1年も前でしょ?私も何でいまさらって思ったよ。思わず今さら理子の現状を知ってどうすんのよって言っちゃったわよ・・・・で、その後彼氏が来たから杉山から離れたんだけどさ・・・もしかしてヨリを戻したいんじゃないの?あの男」
「えええ~っ、勘弁してよ~。でも、杉山先輩って去るものは追わないタイプかと思ってたよ」
「浮気相手と付き合って、理子のよさを再認識でもしたんじゃないの?さすがに家のほうには姿を現さないと思うけど、仕事の行き帰りにばったり会うかもよ。」
麻子からの思わぬ話に私は、困惑するしかなかった。
読了ありがとうございました。
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元彼、なんか流れで出してしまったので苗字だけ考えました。