4.二人で餃子作り
初めての共同作業(笑)。の巻
指にキス事件(私にとっては事件である)から1ヵ月がたとうとしていた。あれからアレンさんはグレアムさんと共に、夕食には顔を出す。
仕事のほうも順調に引き継ぎをしているらしくて、私としてはグレアムさんがいなくなってしまうのは少し寂しい。
なにせ、小さい頃から家の夕食には必ずグレアムさんがいたのだから。外国の話やうそ臭いけどワクワクする別の世界の話とか・・・とにかく、たくさんの時を過ごした。
「リコ、伯父上がいなくなるのは寂しい?」
アレンさんは、私が夕食当番の時にはなぜか手伝ってくれる。いつの間にか父と兄もそれが普通だとおもってしまったらしく、台所で二人で並んで作業するのが当たり前になりつつあった。
今日は休みだから手作り餃子にする予定で、二人で私が作ったあんを皮に包んでいる。アレンさんは私が包み方を何個か実践しながら教えると、器用に包み始めた。
「それは寂しいよ。小さい頃からグレアムさんが隣の家にいるのが当たり前だったんだから。小さい頃はお兄ちゃんと一緒によく遊びにもいったわ。」
「へえ、そうなんだ」
「私の家にあるのとは全然ちがう外国風の家具とか、絵とか見るのが楽しくてね。グレアムさんの話も楽しかったし・・・あとは、グレアムさんの入れてくれるお茶が美味しかった。」
「リコ、僕もお茶をいれるのは上手なほうだよ?一度遊びにこない?」
「グレアムさんがいるならお邪魔するけど、アレンさんしかいないときは行かない」
私がきっぱり言うと、アレンさんは「それは残念。」と言って笑った。
最近、アレンさんが私に接近してきている。
許婚の間柄とはいえ、私はまだアレンさんのことを好きとかそういう気持ちはない。いい人なのはこの1ヶ月で分かってきたけど・・・・餃子の皮を真剣に包むアレンさんはやっぱりハンサムだよなあ~。私が許婚でうれしいなんて本当に思っているんだろうか。この人なら選り取りみどりなのではないだろうか。
「リコ、手が止まってるよ。僕の顔に何かついてる?」
アレンさんに言われて慌てて、手を動かした。
「ごめんっ。ちょっと考え事しちゃったよ」
「それって、僕のこと?」アレンさんが目をきらきらさせている。
「ち、ちがうよっ」
「なんだ。許婚なんだから、僕のことを考えてくれてもいいのに」
「そ、そりゃ許婚だけどもっ。・・・・・ねえ、アレンさんは故郷でもモテモテだったんでしょ?」
「僕はそうでもないよ。親友のほうがもててたからね。」
うそ臭い。すっごいうそ臭い。グレアムさんが「アレンはそろそろ一人で仕事ができるな。俺が帰る日も近いな」って満足げに言ってるのだから仕事もできるんだろうし、性格だって悪くない。そしてこの顔立ちだ。これでもてないなんてアレンさんの故郷の女性の目は節穴なんだろうか。
「それに、僕は一人の女性だけにもてればいいからね。・・・ねえ、リコはいつになったら僕のことを“アレンさん”じゃなくて“アレン”って呼んでくれるんだろうね?」
そんなに私を見つめないでください~~。私はアレンさんを無視してひたすら餃子の皮を包むことに専念したのだった。
アレンさんはそんな私を見て「まあいいか。僕は気が長いから・・・といっても、あんまり待たされるのは嫌なんだけどね」と言って作業に戻ったのだった。
その夜、グレアムさんは「リコの作った餃子はうまいねえ~」と喜んで食べてくれた。そして、その席で1週間後に帰ることを私たちに告げた。
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すいません。餃子が食べたくてつい思いついてしまいました。