3.互いの評価
第一印象から決めてました(byアレン)。の巻
私は着替えるために自分の部屋にいる。階下では父と兄がグレアムさんとの再会を喜びアレンさんとも楽しく会話しているようで、賑やかだ。
挨拶なんだからアレンさんは平気なんだろうけど・・・さっきはびっくりした。指にキスをされたのなんて初めてだった。
「許婚かあ・・・・うあああどうしよう・・・・」
とりあえず、いつまでも部屋にこもってはいられない。私は深呼吸して階下に向かった。
夕食は賑やかだった。我が家は私がメインで家事をしていたんだけど、最近は3人で家事のローテーションを組んで行なうようになった。
今日の夕食当番は父で、父自慢のモツ鍋。グレアムさんは「お。テツオのモツ鍋だ。」と嬉しそうだけど、アレンさんは大丈夫なのかなあ。外国の人って鍋は大丈夫なんだろうか。
しかし、私の心配をよそにアレンさんは「いただきます」と喜んで箸も上手に使っている。
「アレンさん、鍋は平気なんですね」私は思わずアレンさんに話しかけてしまった。
「はい。伯父からこちらの習慣などを教わりまして箸の練習もしました。やっぱりこちらの国で仕事をするにはちゃんと馴染んだほうがいいと思いまして」
「へえ、そうなんですか」
「おいおい。二人とも硬いなあ~。許婚同士なんだから」グレアムさんはちょっと酔っ払っているようだ。
「そうだそうだ。理子、普段どおりにしゃべれよ~。アレン、今のコイツの口調はよそいきだからな~」兄がグレアムさんに同調する。父は一人でにこにこして手酌だし・・・。
結局、酔っ払い3人が賑やかで、私とアレンさんは話をすることがなかった。
「伯父が面倒かけてすみません」
「いいえ。いつも3人が飲むとああですから。ちゃんと朝には起きてくるんですからラクですよ。アレンさんも泊まっていったらいいのに」
「いいえ。あちらの家を空にはできません」
グレアムさんは酔いつぶれ、アレンさんだけが家に帰ることになった。私は門のところで見送る。
「・・・・僕は伯父が録画した画像で2年前にリコさんを初めて見ました。」
「2年前?」
「はい。あなたたちが仲良く食事していました。」
「グレアムさんはこちらにいるときは、たいていうちで食事してますから」
グレアムさん、いつの間に録画なんかしたのかしら。私、ちゃんと化粧してるときだろうか。なんか心配になってきてしまった。
「あの、リコさん。僕もリコって呼んでもいいですか?それとイツキのいうヨソイキ口調じゃなくて、普段どおりの口調で僕としゃべってもらえないですか」
「・・・わかったわ。じゃあ、アレンさんも普段どおりの口調で話してくれる?」
「わかった。それでね、リコ。きみは許婚のことをどう思った?」
「驚いたわ。そして腹がたった」
「腹がたった?」
「アレンさんは腹が立たなかった?自分の知らないところで互いの祖父同士が勝手に互いの子孫を結婚させようなんて軽いノリで約束してさ。私、おじいちゃんは大好きだったけどあれはないって」
「それで、実際に見た許婚の僕はどう?」
アレンさんに聞かれて、私は返答に困った。嫌なやつなら即、解消してやるって思ったのに、この人は・・・・
「父や兄とすぐ仲良くなってたし、悪い人じゃないのかな~と思ってる。アレンさんは私を実際にみてどう思った?」
アレンさんはなぜかにやりとして「僕は最初に言ったでしょ。あなたが私の許婚でよかったって」そういうと、また私の手を取った。
「ちょっ・・・」
「僕はニホンの挨拶をよく知らないんだよね。じゃあ、明日伯父を迎えに来るから」
そういうと、また私の指にキスをして「じゃあね」とにっこり笑って帰って行ったのだった。
後には、一人で顔を赤くして指を見つめる私だけが残った。
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・・・アレンは確信犯です。