2.ご対面
二人の出会い。の巻
次の日、私の頭の中は仕事をしていてもお昼を食べていても、見たこともない許婚のことが常に頭の片隅にあった。
「理子!」
ちょっと息抜きしようと廊下に出たところ、開発部で事務をやっている同期で親友の望月麻子から声をかけられた。
「麻子も休憩?」
「まあね。理子も?」
「そう。」
私たちは一緒に自販機に向かった。自販機の周辺はちょっとした息抜きスペースで座れる場所もあったりする。
「ねえ、今日は定時?」
「そうだねえ、今のところ定時かな」
「じゃあさっ。合コン行かない?」
「合コン~~~~?」
「総務のコからメンツが足りないからって誘われたんだけどさ、どう?」
「・・・・パス」今日は許婚が来る日だ。いろんな意味で私の今後がかかってる。
「えー、なんでよ~」さすがに親友でも、見たこともない許婚に会うからとは言えない。
「今日はさ、グレアムさんが帰ってくるから家族で食事って決まってるんだよ」
麻子は何度か家に遊びに来たことがあるので、ちょうど居合わせたグレアムさんを知っている。
「グレアムさんか~。じゃあしょうがないね、よしっ。私だけ参加しよっと」
「そうしなよ。私は当分合コンはいいや」
「あんた、まだあの浮気男を引きずってるの?もう1年だよ。女の恋は上書き保存って言うじゃない。理子は名前をつけて保存なわけ?」
「それはない。でも恋愛をする気がわかないよ」
「は~~。なんだか枯れてるわねえ」麻子はそういうとため息をついた。
定時になり、特に残業もないため私は上司や残ってる人たちに挨拶をして、さっさと帰ることにした。
“じいさんだって生きてれば、いくら友人の孫だからって嫌なやつに可愛い孫娘を押し付けるようなことはしないはずだ”
父の言葉を思い出す。
嫌なやつだったらほんとに断ってくれるんだろうか。でも、グレアムさんが楽しくていい人だけに甥っ子さんもいい人であってほしい・・・勝手に許婚が決められていたことは未だに納得できないけど。
家に到着すると、ちょうどグレアムさんが家の前に到着していた。
「リコ!!」
「グレアムさんっ!!」小さい頃からのクセで私はグレアムさんに抱きついた。
お互いのハグが終わり、その場で立ち話になる。
「リコ~、また一段ときれいになったなあ。」
「グレアムさんは相変わらず口がうまいよね。」
グレアムさんと話している途中で、私はグレアムさんの後ろにいる人物に気がついた。
私とグレアムさんのやりとりを静かにニコニコと聞いているその人は、シルバーグレイの髪の毛に穏やかな緑色の瞳。そして、とてもハンサムである。
・・・・今までのやり取り、見られていたのか・・・・ううう、恥ずかしい。
急に恥ずかしくなって、私はグレアムさんに「グレアムさん・・・後ろにいるのはどなたですか?」と聞いた。
グレアムさんが答えるまえに、その男性が口を開いた。
「初めまして、リコさん。僕はアレン・クロスビーと申します。グレアム伯父がお世話になっています。どうぞ、アレンと呼んでください・・・あなたが私の許婚でよかった」
流暢な日本語で話したあと、アレンさんは私の手を取り指にキスをした・・・・グレアムさんは「アレン、ここではその挨拶は一般的ではない。やめなさい。」とアレンさんをちょっと叱り、固まった私を見て「リコ、すまん。アレンはちょっとニホンの挨拶をまだよく知らないのだ」と謝ってきたのだった。
読了ありがとうございました。
誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。
ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!
デルレイの「おじうえ」だったアレンは
恋愛をすると、どうなるのか・・・を書けたらいいなと思っています。