幕間:小野塚 理子も待機中
-「おうじさまとおひめさまは、しあわせにくらしました。めでたしめでたし」
私は母が読んでくれるお姫様が王子様と幸せになる話が大好きだった。
「おかあさん、わたしにもおはなしのような、おうじさまがあらわれるかなあ」
私がうっとりしていると、隣にいた兄は「あるわけないだろー。りこはばかだなー」と私をバカにした。
母は「そうねえ。おはなしのような王子様は現れないかもしれないけど、理子だけの王子様はきっと現れるわよ」と言って私の頭をなでてくれた。
「そっかあ~。わたしだけのおうじさまってどんなひとかなあ」私は夜寝る前に夢の中に私だけの王子様が現れますように、ってお願いをして眠りについた・・・・・-
時は流れて、当時幼稚園児だった私も今は24歳の社会人。大学時代からの2歳上の恋人との結婚を夢見るお年頃になった。・・・・が、私の目の前にはついさっきまで私の彼氏だった男と後輩の女子が縮こまって座っている。
「・・・・それで?」
私の切り返しに彼氏・・・いや元彼氏は顔が引きつり、後輩の女子は涙ぐんでいる。
ちょっと待て、そこの二人。泣きたいのは私のほうだ。
「・・・・ごめん、理子。その、つい魔がさして・・・」
「魔が差したからって、彼女以外の女性に手を出すわけ」
「す、すみませんっ。小野塚先輩っ。私、ずっと彼のことが好きで・・・先輩の彼氏だって知っていたんですけどっ。どうしても諦められなくって・・・」
私は、この茶番劇にいつまで付き合えばいいのかしら。後輩に先を越されて泣くことも出来ないってどういうことだろ。ていうか、この子、泣けば許されると思ってるのかしら・・・・
そして、この男。俺には理子だけだよなんて言っておいて、この有様。私は、自分の男の見る目の無さに呆れ、この二人に付き合ってる時間が急にあほくさくなった。
「時間がもったいないわ・・・・別れてあげるわよ。ここは、あんたのオゴリだからね。じゃあ、私は帰るわ」私は元彼にそう告げると席を立つ。
「理子?」
「小野塚先輩?」
あっけにとられる二人を見てると、何だかおかしくなる。節操がないという意味ではお似合いのカップルじゃないか。さっさと捨ててしまうに限る。
「あのさ、私のことをもう理子って呼び捨てにするのは止めてね。これからはただの同じ大学出身の他人だから。それから、あなた。浮気をする男は何度だって浮気するわよ。ちゃんとつなぎとめておくのね」
私は二人にそう言って店を出た。
ふと、小さい頃に亡くなった母親とした会話を思い出した・・・・もう王子様の存在は信じてないけど、それでもやっぱり心のどこかで「私だけの王子様」ってやつを実は待ってるオトメな自分がちょっといる。いつか出会えるだろうか・・・・。
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第二部は理子視点で話をすすめます。