11.アレンの扉
祖父の約束。の巻
第一部完結です。
グレアム伯父が現れてしばらくしてから、義姉が亡くなった。兄とデルレイが最期をみとり穏やかに旅立ったそうだ。
俺はその頃、伯父と一緒に異世界の管理場所に行っており知らせを聞いて戻ってきたものの間に合わなかった。
姉の亡骸を前に静かに座っている兄とデルレイを見たときには、何もいえずに慌てて駆けつけてきた父とともに二人を見守るしかできなかった。
葬儀が終わり、少しずついつもの日常生活に戻っていく。父は別宅に戻り、兄は仕事に復帰。そしてデルレイは伯父に教えられて魔力を調節できるようになってきていた。
そして、俺は伯父からもらった資料と実際に異世界に行って管理業務を学ぶことに専念する時間が格段に増えていく。
そこで、俺は一度も画像石を見ていないことに気がついた。今日はこれを見てみようと俺は画像石を手に取った。
異世界の風景は実際に伯父と行って見学した。王国とはまるっきり違う建物と交通手段。機械と科学が発達し、あの世界では魔法というのは想像の産物にすぎないらしい。自分が今いる世界とのあまりの違いに衝撃を受けたけど、全ての要因であるアダルバードはよほど楽しかったらしく「あっちに永住できたらいいのに」などと日記に書いているし、グレアム伯父も「あっちは堅苦しくなくていいぞ~」と楽しそうに語る。
「異世界ってそんなにいいものかね~」俺は独り言をいいながら、伯父からもらった画像石を見ることにした。
石に魔力を送り、目の前に画面を出す。
そこには伯父が友人と思われる人たちと楽しそうに過ごしている様子が映っていた。
見たことない食器を使い食事をしている姿や町並みの様子・・・・思わず見入っていると、俺はあることに気がついた。
やけに、一人の女性が映っている率が高い。その女性はゆるやかなウェーブのかかった肩より少し長い黒髪で目立つ顔立ちじゃないけど意志の強そうな瞳が印象的だ。伯父や、伯父の隣に座っている中年男性(伯父と同年代くらい)、女性と顔立ちがちょっと似ている若い男性(兄弟だろうか)とも楽しげに会話している。
まだあの世界の言葉を少ししか勉強していないので、何を話しているのかが分からないのが残念なくらい雰囲気が楽しそうだ。
あの女性は誰だろう。とても気になる。画面で、彼女に伯父がなんか言って笑わせたようだ。
彼女の笑顔は、とてもふんわりしていて周囲を和ませている。彼女の周りの空気はとても穏やかで暖かい。
いつの間にか、目は彼女だけを追っていた。
夜、部屋で伯父と引継ぎの話をしていると、流れで画像石を見た話になった。
「伯父上はあちらの世界に友人がいるようですね。不思議な食器を使用しているのを見ました。」
「あ~。ハシだな。これから住む国では皆が当たり前に使うものだ。ナイフやフォークとは使い方が違うから、最初は大変だった。・・・・アレン。お前さんが聞きたいのはハシのことなのかい?」
伯父のニヤニヤが増している。
「・・・・あの女性はどなたですか?」
「女性。はて女性なんて映ってたか?」
「・・・・肩より少し長いウェーブのかかった黒髪で笑顔がふんわりしてる女性です」
「あ~~。リコか。」伯父は今思い出したかのような言い方をする。
「・・・・伯父上。あの映し方は偶然ではありませんよね。どうみてもそのリコという女性の映っている率が高いのですが」
「そうだったか?リコは私の友人の娘さんで、今年23歳だったかな。アダルバードじいさんが最初に仲良くなった異世界人の孫にあたる・・・・ついでに言うならお前さんの許婚だよ。」
今度は俺が衝撃をうけた「はあ?許婚!?一度も聞いたことありませんが」
「そりゃそうだ。お前さんの父親や兄は知らんよ。その昔、アダルバードとリコの祖父コウノスケが“お互いの子孫で同年代の男女が生まれたら結婚させようぜ~”ってした約束なんだから。いや~、孫の代でお前さんとリコが生まれて、俺もテツオも・・・テツオってのはリコの父親だ。一安心ってやつだ。」
「ちょっと待ってください。・・・リコは許婚のことを知ってるんですか?」
「知らないだろうね~。でも、いずれ知ることになるだろうな。あのコは、はきはきとした優しい子だ。ちーっと気が強いところがあってな。でもアレンの好みのタイプだろ?」
「し、知りませんよっ。話したことありませんから」
そう伯父には言ったものの、俺はリコの笑顔が忘れられなくなっていた・・・・。俺のそばでいつも笑っていてほしいと・・・・早い話がリコに一目ぼれをしたのである。
<第一部・完>
読了ありがとうございました。
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第二部より、アレンの恋です!
やっと恋愛物になってきそうです。
次回はヒロイン側のちょっとした小話。