10.グレアム登場-2
伯父の申し出。の巻
デルレイが寝た後、男ばっかりでくつろぐ居間でグレアム伯父が用件を切り出した。
「そろそろ、管理の仕事をアレンに引き継ごうと思ってね。とりあえず、あちらの世界の言語と習慣を覚えてもらおうと思って、私なりに資料を作ってきた。」そう言って俺に分厚い書類と画像石を渡す。
「それで、アレンへの引継ぎはいつ頃になりますか」父が伯父に聞く。
「ふむ。それなんだが・・・・今、この家は大変なようだな。」
「そうですね。いっぺんにいろいろあって・・・・妻が昨年亡くなって、王宮で事件が起こって・・・嫁が病に倒れ・・・・正直、アレンがいてくれて助かっています」父はため息をついた。
伯父はしばらく考えて、「ふむ・・・・それじゃあ、アレンにはちーっと大変になるがデルレイの家庭教師と本人の勉強を両立してもらうしかないか」
俺は思わず「伯父上はすぐにあちらに戻るのではないのですか?」と少し驚いて伯父を見た。
伯父は自分で酒をつぎながら「ん~。こっちに来るまでは、アレンに資料渡して進捗状況を見て連れて行こうかと思ってたんだが、今の状況を見捨てるわけにいかないしなあ。アレンが勉強をしている間は、私がデルレイのそばにいるというのはどうだ」
「伯父上がデルレイに魔法を教えてくれるのですか!」兄が驚く。
「なんだ。私では不満か?」
「いいえ!とんでもない。」伯父ににらまれて、兄がちょっとあたふたする。
「・・・とはいえ、私もトシだからアレンと交替制になるが。どうだ、アレン。お前さんはそれでいいか?」
俺は伯父の提案に反対する理由はない。すぐにその場で父や兄も交えて今後の計画を立て始めることにした。
「おじうえ、おはようございます・・・・あっ!グレアムじいちゃん!!」
「おはよう、デルレイ。今日から伯父上もデルレイに魔法を教えてくれることになったんだ」
「どうして?」
そういえば、デルレイには俺の事情を話してなかった。話してもいいんだろうか・・・俺がちょっと迷っていると、横から伯父が口を挟んだ。
「デルレイ。私の仕事を知っているか?」
「えっと、とびらのかんりしゃってちちうえがいってました」
「その扉がどこにあるか知っているか?」
「ちちうえとおじうえ、おじいさましかはいれないへやです」
「私はな、お前さんの父上とはまた違う場所で扉の管理をしている。アレンも私のいる場所で扉を管理する約束なんだ。」
「やくそく?」
「そう。だから、その約束を守るためにアレンは私が今いる場所に住まなくてはいけないのだが、まずはその場所とここを往復して勉強をしなくてはいけないのだ。」
「おじうえもべんきょうするの?」
デルレイに言われた俺がうなずく。
「だから、デルレイに魔法を教える授業を伯父上も手伝ってくれることになったんだ。伯父上の魔法の授業は楽しいぞ?俺も楽しかった。」
「ほんとう?」デルレイが伯父のほうを見る。
「本当だ。私の授業はお前さんの父とアレンに大好評だったんだからな。あとはアイルズバロウの息子にもな。アレン、あの悪ガキは元気か?」
「ランスはオーガスタと恋人同士です。今日辺り顔を見せるかもしれませんよ。伯父上が帰ってきてるのはたぶん耳に入っているでしょうから」
「オーガスタってウェルズの娘か。あの娘は賢くて美人だが、男を見る目はないな」
伯父はにやりとした。ランス・・・・きっと伯父を見て驚くに違いない。“うわあああ!”とか言っちゃってさ。
その後、いつものようにふらっと現れたランスは「アレン~顔を見せにきてやったぜーっ・・・・うわああっグレアム様!!ほんとに来てたんですか!!」と、俺が予想したとおりのリアクションをした。
「久しぶりだな。アイルズバロウの悪ガキ。ウェルズには認めてもらったのか?」
「何で知って・・・・アレン、しゃべったな」焦るランス。
「あんだけ屋敷内で言いまくってるんだから、俺が言わなくても誰かから聞くだろう」
俺がダメ押し。
「おじうえ、ランスがあせってます」
「デルレイ、おもしろいだろ?」
「はい!」
ランスが人にからかわれるという実に新鮮な状況を目にしつつ、俺とデルレイは二人をほっておいて授業を始めたのだった。
読了ありがとうございました。
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ランスを「アイルズバロウの悪ガキ」と言い切るグレアムさんは
意外とすごい人かもです。