9.グレアム登場-1
煙とともに現れた!の巻
伯父が再び現れたのは、俺が27歳になった年のことで大学を卒業して5年がたっていた。
デルレイは5歳になり魔法の基本をひととおり覚え、現在は魔力の配分を考えながら使うことを覚えている最中だ。
ランスはあれからオーガスタと交際を始めて順調なようだが婚約まではいってない。というのもオーガスタの父親であるウェルズさんが難色を示しているらしい。“ウェルズ夫人のほうは賛成してくれたんだけどさ~。こうなったら実力行使か?”とランスは冗談でもとんでもないことを言っている。
そういうところがウェルズさんの難色の原因だと思うんだが・・・・ランスが気づく日がくるのか。
ランスのことはまあ、多少の壁はあるもののめでたいことだ。しかし、クロスビー家はちょっと大変なことになっていた。
昨年に母(デルレイの祖母)が亡くなり、今年になって王宮でちょっと大掛かりな事件が起きて兄はもちろん、引退した父上も調査に加わることになり屋敷に戻らない日々が続いている。
そして義姉が昨年から体調を崩し始め今年に入ってからはベッドで寝込むようになってしまった。
デルレイも義姉が寝込みがちになったうえに兄が仕事で家にいない日が続いていることで寂しいのだろう。授業のときにベアを持参するようになっていた。
「デルレイ。ベアも一緒に勉強するのか?」
「だめ?」
「いや。デルレイの友達だもんな、いいよ」
「ありがとうございます、おじうえ」
デルレイも言葉遣いがしっかりしてきた。俺が彼の成長に少しでも貢献できたのなら悪くないな。
この日は授業を早めに終えて、デルレイを連れて庭園を散歩することにした。
「おじうえ、ははうえはよくなるよね?」
「・・・・そうだな。よくなるといいな」
俺は、デルレイに嘘をついた。義姉の病気は悪くなる一方で回復の見込みは薄いと治療術士に父、兄、俺は宣告されていた。デルレイには黙っていようと話し合いで決めていた。
「ははうえがげんきになったら、またオレンジケーキをつくってもらうんだ」
「そうだな。母上のケーキはデルレイの大好物だもんな」
「うん!」
二人でそんなことを話しながら、デルレイがきょろきょろしながら歩くのを見守る。すると、そこにボンっという音と共に煙が舞い上がった。
「わあっ?!」デルレイが驚く。
「デルレイ!大丈夫か?」
「おじうえ、けむり!!」デルレイは俺にしがみつきながら指をさす。
「は?」俺は煙の向こうに目をこらした。
もくもくと立ち上る白い煙・・・・その向こうには「よ~。アレン、元気か?・・・・そこで固まってるのはデルレイか。大きくなったなあ」と、のんきな口調で言うグレアム伯父が立っていた。
移動魔法を使うのに、こんな人を驚かす仕掛けを考えるのは俺の知ってる限り、このグレアム伯父とランスだけだ。
「突然現れないでくださいよ。伯父上。久しぶりですね」
「突然現れるのが私の趣味だからな。ところで、デルレイ」俺の苦情をさらりと流して、伯父はクマを持ったまま、俺の後ろに隠れているデルレイを見た。
「そのベアはお前さんのお守りであり、友達だ。いつかベアから離れる日がくるだろうが、それでもベアは友達に変わりはない。絶対に捨ててはいかん。・・・さて、弟が帰ってくるまで屋敷の中で昼寝でもしようかね」
伯父はデルレイにそう言うと、今度は普通の移動魔法で静かに姿を消した。
「おじうえ、いまのだれですか?」
「“いまのだれですか”じゃなくて“あの方はどなたですか”だろう?あの方はグレアム伯父だよ。デルレイが生まれたときにベアをくれた人だ。おじい様のお兄さんだよ」
「ふうん。」
その後、家に帰ってきた父と兄は屋敷でくつろいでる伯父と再会して驚くやら喜ぶやらで、久しぶりに夕食の席が賑やかになった。義姉も突然帰ってきた伯父との再会を喜び明るい笑顔を見せた。
デルレイは、伯父のことをどうよんでいいもんだか悩んでいたようだったが伯父が「グレアムじいちゃんでいいぞ。デルレイ」と言われたことで、いきなり現れた“グレアムじいちゃん”に興味を持ったようだった。
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グレアムさん、登場です。