プロローグ:扉のできるまで
全ては、この人が始まりです。の巻
アダルバード・クロスビー(35歳・独身)は、クロスビー家当主らしく魔道士としての評価も高かったが、それよりも有名だったのは本人の人騒がせな性格がもたらす騒動だった。
空を飛ぶ雲を作って王国の上空を周遊して大騒ぎになったことや、星が見たくて作ったはずの望遠鏡で王宮内をのぞいてしまったりというのは、世間に知られた話。
しかし、アダルバードがもたらしたのは、思わず笑ってしまうものだけではなかった。何を思ったか錬金術にはまってしまった彼は当主しか入れない書庫兼倉庫の隣にあった空き部屋を実験室とし、日々王宮に行く合間・・・・いや、錬金術の合間に王宮に行っていたというのが正解らしいが、とにかく実験に明け暮れる日々を送っていた。
その日も、彼は王宮勤めを適当におえて実験をしていた。
いつもならちょっと液体の色が変わるくらいで終わるはずの実験が、その日は違っていた。混ぜ合わせた液体が、赤い煙を出し始めそれはたちまちに部屋を覆ってしまったのである。
「・・・げほっ!うわっ・・・なんだ、これ・・・おっかしいなあ。この本によれば液体が固まり弾力が出るはずなのだが・・・・また分量を間違えたんだろうか・・・・げほげほっ!」
しょうがねえなあ~。また魔法で消すか・・・とアダルバードが水の魔法を使おうとしたときに赤い煙は不吉な音を立て、部屋を揺らし始めた。
「うわっ・・・うそだろ?」
周囲に変なにおいがし始めたそのとき、ボボボボンっ!!とすごい音がした。
同時に実験道具が吹き飛び、部屋が揺れ赤い煙はますます充満していく。アダルバードは机の下に潜り、防御の魔法を自分にかけて身を守った。
どれくらい時間がたったのか・・・・赤い煙は消えたものの、部屋の中は割れた実験道具とあたりに散らばった本、そしてきな臭いにおいが部屋に充満している。
「ううう・・・またじいに怒られてしまうな」アダルバードは周囲を片付けようと机の下から出た。そのとき、彼は自分の目を疑った。
壁に穴があいてる・・・・しかも、穴の向こうには森が広がっている・・・。
「うわー、何がどうなってんだ」元来、好奇心旺盛なアダルバードは穴を発見して見てみぬフリなんて出来るわけがなく、彼は穴の向こうを見るべく飛び込んでいった。
そこは森・・・いや、森ほど木は多くない。雑木林・・・のようだった。とりあえず、出た場所に目印の魔法をかけて、彼はどんどん雑木林を進んでいく。
ふと、道らしきものをみつけて彼は今度はそこを道なりに歩く。歩いていくと、急に林が途切れそこには王国にあるような洋館と見たこともない人種がおりなす不思議な空間が広がっていた・・・。
黒い瞳と黒い髪の人が自分を見て驚いている。どうやら自分と同じ髪や瞳の人間はここでは珍しいようだ。アダルバードは最初こそ見知らぬ世界に戸惑って、すぐに目印のある場所に移動魔法をかけてもどったものの、どうしても気になってしまい仕事の合間に穴に入って、不思議な世界を行き来するようになっていった。
始めは彼を見ても、ただびくびくしていた黒い髪の人たちは彼が害を及ぼす人間じゃないと(うまく魔法でごまかしたりとか、身振り手振りで相互理解につとめた)分かってきたらしく、それなりに親しくなった。
さらに、数少ないが自分と同じような顔のつくりの人とも仲良くなって(こちらも同じような手段を使った)、その人の国に招待されたり(どうやって行けたのかは不明である。が、魔法は便利なシロモノだ。)楽しい日々を過ごした。
後にアダルバードはその雑木林を買い、家を建てて穴を隠すために扉を作り当主もしくは扉の管理者が管理をしていくことに決めた。
そこで自分が結婚しないと次の管理者がいないということに気がつき、ようやく結婚する気になった。動機は不純なものの、彼はその後結婚し2人の息子に恵まれたのだった。
こうして、クロスビー家は当主としての仕事と「扉」の管理者を代々引き継ぐことになっていく。
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