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触れてくれる人

作者: 三葉

少女は触れることが出来なかった、人に。


少女は触れてもらえなかった、人から。


少女は『人アレルギー』だった。


五歳の時それは発症した。

いつもと同じような平和な休日、少女は少女の両親に当たり前のように触れられた。

その時だった。

急に湿疹が出てきた、痒かった。呼吸もしづらくなった、苦しかった。目が溶けそうだった、痛かった。

少女は意味が分からなかった。

何が起こっているのか理解ができなかった。


少女の両親もそんな娘の様子を見て驚いた。すぐに病院に連れて行った。

病院ではすぐに診察してもらった。

一通り診察が終わり、少女の両親は医者に聞いた。


娘は大丈夫なのですか!?


医者は答えた。


この子は人に触れることが出来ません。

人に触れてしまったら、湿疹、過呼吸、眼球の焼けるような痛み、最悪死に至るでしょう。


この子は『人アレルギー』です、と。


理解が出来なかった。

『人アレルギー』!?なんだそれは!?人に触れることが出来ないって!?そんな馬鹿な!?

治す方法はあるんですよね!?


少女の両親の質問に医者は首を横に振った。そして言った。


彼女に触れることが出来ない分彼女を愛して下さい。

もしかしたら彼女に触れられる人が出てくるかもしれない。

それまで、彼女を愛してあげて下さい。

何も出来ずに


申し訳ありませんと医者は頭を下げた。

少女の両親は何も言えなかった。言うことが出来なかった。

しかし、少女の両親は決心した。娘を一生愛そうと娘は誰にも渡すまいと。


その日から少女の両親は少女のことを更に愛した。

愛して、愛して、愛し抜いた。

そんな自分を愛してくれる両親のことを少女はもっと大好きになった。

そうして少女は人が大好きになっていった。


十数年の年月が経ち少女は女子高生になっていた。

しかし、やはり人に触れることはできない。

そのことで苛められることもあった。

それでも彼女は人が好きだった。


大好きだった。


高校二年生の学校帰り道、少女は一人の男子高校生に合う。

彼女が転びそうになったところを彼は助けてくれた。

彼は彼女を助ける為に彼女の手を握った。


触られた。


彼女は怖かった。またアレルギー反応が出てしまう。

また苦しい思いをしなければならない。彼女は震えていた。

しかし、


アレルギー反応は起こらなかった。


彼女は驚いた。確かに触られた、でもアレルギー反応は起こらない。どうして?

彼女は理解した。この人は私に触れてもいい人なんだ。

やっと見つけた。


気をつけろよ。


彼はぶっきらぼうにそう言って、彼女のもとから去った。


彼女は去っていく彼の背中を見て呟いた。

絶対離さない。一生愛し続ける。

だって、やっと会えたんだもん。

もう、逃がさない。

彼女は彼の姿を追った。


彼女の愛は少し歪んでいた。

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