7限目:いけるとこまで。
辰之助「あれ以来、なんかまったくやる気が起きねーんだよな。」
辰之助はけん玉を器用に操りながら独り言を言っている。
辰之助「おりゃ!!辰之助スペシャル燕返し!!」
けん玉は宙を舞い、鮮やかに元にある場所に戻る。
辰之助「で!!ここはあまり人目に着くとこじゃないと思いますけど、何の用ですかね‘先輩’?」
サクマ「あれ?いつから気づいていたのかな?俺は気づかれないように気配殺して尾行してたのに?やっぱオレの存在感ありすぎるからかに?まあ、ピカピカの1年生にバレるようじゃ俺もまだまだって…」
辰之助「だから、何の用ですかね?」
辰之助から殺気が放たれる。これを感じて佐々サクマは表情を変える。
サクマ「いや~。君がさ、いや、1年D組のブラッドハンター君がさ、あの女ノ都君に勝負挑んだらしいじゃん。」
辰之助「だったらどうだって言うんですか?」
サクマ「最初は俺が彼の遊び相手になりたかったんだけど。君に先こされちゃったね。」
「で、やりあった君ならわかると思うけど、彼、女ノ都大善君はどうだった?」
辰之助は笑う。
辰之助「ふふふ。それは自分で確かめたらいいじゃないですか。」
けん玉をさらに器用に操り辰之助は話を進める。
辰之助「そんなことより、僕は先輩にとても興味があるな。今まさにやる気が出てきたところですからね。」
そういうと辰之助は身構える。
サクマ「可愛い後輩が遊んで下さいって言うなら、遊んであげなくともいいよ。」
そう言った瞬間、辰之助の‘剣玉’が空を切ってサクマを襲う。
サクマ「そんな遅さ、柔道だったらすぐに襟を掴まれてるよ。」
サクマは鉄球をすべてかわしながら辰之助のほうに近づいていく。
辰之助「当たらない!?なら、これはどうかな?」
鉄球はサクマの手前の地面をえぐった。飛び散る土埃が一斉にサクマのほうに向かう。
辰之助「おっと。これも効かないみたいだね。」
サクマ「柔道では相手の懐に一瞬で入り込まないといけないときがあるからね。地面にあたる前に、さらに前に出ればなんてことはないよ。」
サクマが涼しげな顔で言う。サクマは辰之助の襟元を掴む。
サクマ「あの女ノ都君を苦戦させたって聞いたんだけど、僕の勘違いなのかな?それとも僕が強すぎたのかな?」
サクマの手は辰之助の襟元をがっしり掴んで離さない。
辰之助「どうだろね?でもあなた相手でも苦戦させる相手ですよ…僕はぁぁあぁぁぁ!!!!」
そう言うと辰之助は何かを無数に弾き飛ばした。
それをかわすためにサクマは襟元から手を話す。
サクマ「ベーゴマ!?」
辰之助「そうですよ!!僕の武器が剣玉だけな訳がないじゃないですが。女ノ都君相手じゃ不利すぎる武器なので使わなかっただけですよ。」
そういうと、またもやベーゴマを弾き飛ばす。
サクマ「これは確かにやっかいだね。避けるのに精一杯だ。でもさ…」
サクマは身構えるとそのまま無数に飛んでくるベーゴマの中を突っ切る。
サクマ「ある程度我慢すれば防げないってこともないよね。」
そしてまたもや辰之助の襟元を掴む。
辰之助「そんな無茶するのは先輩くらいですよ!!」
サクマ「そうかもな。」
そういうとサクマは一気に辰之助を投げ飛ばす。
サクマ「器用だけど、力がないね。やっぱり僕の相手は…」
そのまま帰ろうとするサクマ
辰之助「待てよ!!」
サクマ「!?僕から投げられて動けるんだ。手加減したわけじゃないのに。」
辰之助「よーくわかったよ。オレじゃあんたには勝てないって。でもな、ただやられるだけじゃムカつくんだよ!!腹の虫がおさまらないんだよ!!いけるとこまで…やってやるよ!!!!」
そういうとサクマに飛びかかる辰之助
サクマ(素手!?何かあるのか!?)
辰之助「…ねーよ。」
こうして、誰もいない二人だけの戦いは終わった