6限目:狂喜
ももり「えっ!?現川さんの家に言ったの!?」
昼休みの食堂で、ももりが大きめな声で話すので周りの何人かは大善とももりのほうを見ている。
大善「行ったっていうか、傷の手当てをしてもらっただけだよ。」
大善はブラッドハンター日宇辰之助との激闘の傷が、いたるところにある。
大善「日宇とちょっとやりあったって昨日言っただろ?最初に現川を逃がしたんだけど待っててくれて。治療してあげるから家に来てって言われたから。最初は断ったんだけど、どうしてもって言うからさ。」
ももりは微妙な顔で言う。
ももり「し、しょうがないよね!!大ちゃんは傷だらけだったんだしね。だから女の子の部屋にあがりこんでもしょうがないよね!!」
大善「上がりこんでないって!!」
ももり「じゃあ行ってないって言うの!?行ったんでしょ!?」
ももりヒートアップ
「確かに傷だらけだからって女の子の家にあがりこむのは、僕もよくないと思うな。君にはこんな素敵な彼女がいるのに。」
大善「日宇辰之助!!!!」
横にはいつの間にか日宇辰之助が食事をしていた。
ももり「彼女じゃないし!!」
ももりが反応すると、すかさず辰之助が切り返す。
辰之助「あぁ、そうなんだ。その言い方からてっきり彼女なのかと思ったよ。嫉妬の仕方が尋常じゃなかったしね。」
ももり「なっ!?」
ももりの顔がみるみる赤くなっていく。
辰之助「でも、女ノ都が彼氏じゃないとするなら、よかったら僕の彼女になってくれない?」
ももり「えっ!?」
ももりの顔がますます赤くなっていく。
その時、大善がテーブルを叩きながら言う。
大善「お前まさか、この前の仕返しに来たのか?あれでもう決着ついただろ!?」
辰之助は笑いながら言う。
辰之助「まさか。仕留め損ねた獲物にはもう興味はないよ。まあ、完全に興味が無くなったかって言ったら嘘になるけど。」
大善が身構えながら言う。
大善「じゃあ何しに来たんだよ?」
辰之助はパンを一口かじりながら言う。
辰之助「君らとお友達になろうと思ってね。こうして昼飯を一緒に食べるとこから始めようと思ってさ。」
「なんなら放課後に‘波佐見バーガー’にでも行くかい?」
言い終わったあと牛乳を飲みながらニヤける辰之助。
大善がため息つきながら言う。
大善「放課後の波佐見バーガーは遠慮しとくけど、友達なら別にかまいやしないぜ!!」
辰之助「!?」
辰之助は意外な言葉にとまどっていた。
ももり「大ちゃんはそういうとこあるもんね。喧嘩した相手とすぐ仲良くなっちゃうんだからね。」
ももりがパスタをフォークで巻き取りながら言った。
辰之助「僕があんな事したのに君は許してくれるのかい?」
大善はお茶を一気に飲み干してから言う。
大善「はぁ?ムカつくに決まってんだろ!!でも傷ついたのはお互い様だ。」
大善は辰之助の脇腹あたりを見ながら言う。
大善「あとはお互いここからどうしていくかだろ?」
「友達に敵も味方もねぇんだから。」
辰之助はまた笑う。
辰之助「変わってるんだね君は。」
大善「ブラッドハンター様ほどじゃありませんよ。」
大善も笑う。
辰之助「じゃあ友達として君に忠告しとくよ。」
辰之助の雰囲気が変わる。
大善「なんだ?」
辰之助「D組には柔道部のやつがいるんだ。そいつから今朝聞いた話なんだけど。」
ももり「柔道部?」
辰之助「そこの主将の佐々サクマって人は知っているかい?」
大善とももりがハッと思い出す。
辰之助「彼は柔道でこの学校の特待クラスに入ってる。ここの部活動はどれをとっても全国レベルだ。」
「それをあの佐々って人は2年ながらにここの柔道部の主将をしている。それがどういう事かわかるよね?」
大善「もしかしてすげー人?」
ももり「もしかしなくてもスゲー人でしょ!!」
大善の答えにももりは即答する。
辰之助「彼はその強さうえに、相手の強さに飢えている。だから強いやつとは迷わず闘うらしいよ。」
大善「迷惑な話だな。」
辰之助「だから女ノ都君、君も気をつけた方がいいんじゃないの?」
ももりの顔に不安が出てくる。
大善「大丈夫だよ。あの人前に絡んだことあるけど、良い人そうだったぜ。」
辰之助「それならいいんだけどね。まあ、一応、心のどこかに入れててよ。なら僕は。」
そういうと日宇辰之助は食堂を出ていった。
ももり「大ちゃん…やっぱりあの上級生が言ってたのって佐々先輩の事じゃ…」
大善「まあ、どうにかなるでしょ!!代々、スポーツ選手が素人なんか相手にしないって。」
大善はまったく気にもとめてない。
ももり「ならいいけど。」
しかしこの後、ある切っ掛けを境に、大善VSサクマの激闘が繰り広げられるのであった。