表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/22

第4話「転校生」

狭い、それが第一の感想だった。

 何やら右側に誰かがいるようで、とても狭く感じられた。

「う、うぅ」

 私は右側に顔を向け薄っすらと目を開ける。

 すると横にいたのは、あの少女だった。

 綺麗な顔立ちをした少女がぐっすりと寝ている。

 とても可愛らしく寝ているので、何だか、ほっぺをつねっていじわるしたい気持ちになった。

「……可愛いな」

 ポツリ、独り言をつぶやく。

 すると彼女は目を覚ました。

 さっきの独り言を聞いていなかったか気になる。

「おはよう」

「あ、お、おはよう」

 よかった、と安心の溜息をついた。

 目を覚ますと彼女はベッドから離れ、昨日とは違った服に着替える。

 女の子同士だけど、見てはいけないと思い私は反対側を向いた。

「昨日はごめんなさいね、急に陽菜の家に泊まることになって」

「あ、大丈夫だよ。あまり気にしないで」

 そう伝えると彼女は、そう、と返事をした。

 今日は月曜日、これから学校に行かないといけない。

 まだ七月に入ったばかりなので、夏休みはもう少し待たないといけないのだ。

 彼女が着替えてるので、私も学校の制服に着替える。

 私が通っている高校は、新林高校。

 ごく普通の共学で、大会などはまぁまぁといった成績だ。

 その高校で私は平日授業を受けている。

「これからどこに行くの?」

「高校だよ、今日は月曜日だから」

 制服に着替えてる私を見て、彼女は気になったようだ。

「高校? つまり、私の世界でいうと育成する場所っていうところね」

 育成って、まぁ、こっちもそうかもしれないけど。

「そういうところかな」

 思うけど、彼女のいた世界や学校はどんなのだろう?

 やっぱり死神とかいっぱいいるのかな?

 彼女を見ながら考えてると、そろそろ家を出発しないといけない時間になった。

「もうこんな時間。じゃあ、私は学校に行ってくるから、あなたは家でお留守番してて。詳しい話は帰ってから聞くから」

 そう部屋を出ようとすると、彼女は止めた。

「待ちなさい。私は陽菜の死神パートナーとして決められたのよ。パートナーなんだから、ずっと傍にいないといけないわ」

「えっ、急にいわれても……」

 ずっと傍に、ということは彼女も学校に連れて行くことになる。

 私は構わないけど、彼女を学校に連れていって大丈夫なのだろうか。

 だって彼女は死神なんだから、そのことがみんなにバレたらと思うと心配だ。

 バレてもいいのなら、連れて行ってあげてもいいんだけど。

「私が学校に行って何かまずいことでもあるの? それか、陽菜が私の傍にいるのが嫌だとか?」

「違う、そうじゃなくて。あなたが学校に行って大丈夫なの? 死神の正体がバレたらとか」

「そういうことね、なら大丈夫よ。そうやってバレるということはないでしょ。死神といっても、私はあなたと同じ肉体を持ってる。それに、吸血鬼のように牙もないわ。どこから見ても普通の人と変わらない。そうでしょ?」

 彼女のいうとおりなので反論できない。

「うん」

「なら、早く学校に行きましょう。遅れるんじゃなかったけ?」

「分かったよ。それで学校に来るなら転校の手続きとか取ったの?」

「ええ、もちろん。あなたが学校の話をし始めた時に、もう手続きは済ませたわ」

 いつの間に! と突っ込みを入れたかったが、本当に遅刻しそうなので止めた。



 新林高校。

 高校の通学路を生徒が歩いている。普通と変わらないこの光景だが、私の周りはものすごく変わった。

 その変わった原因が隣に歩いている彼女が来てからである。

 今日は転校初日。

 すごいことについさっき転校手続きを済ませ、しかも、私と同じ新林高校指定の制服を着ている。夏らしい薄いスカートで、襟元には真っ赤なリボン。

 彼女はとても綺麗なので、私と歩いていて様々な人が見てくる。それほど綺麗ということなのだろう。男子の目線は彼女に釘付けだ。

「私、陽菜のクラスに転校するわね」

「え、でも、クラスとか先生が決めるんじゃ」

「もう決めちゃったから、変更できないわ」

 ということは、自分でクラスを決めたのか。

 何だか、彼女なら何でもできそうな気がする。

 校門をくぐり校舎の中へと入った。

 私は下ばき、彼女はスリッパへと履き替えると、廊下で立ち止まる。

「私はクラスで待ってるね。あなたは先生と一緒に来て」

「分かったわ。それじゃ」

廊下で彼女と別れた。

一人にして平気なのだろうか。

すごく不安で心配だが、ずっと彼女のことを気にしてるわけにはいかない。

たまには彼女のことを忘れて、自分のことを考えよう。

少し気にする重い足取りで、私は自分のクラスへ向かった。

クラスの中に入ると、お馴染みのクラスメイトが会話している。

この風景が現実なのだ。

みんなの笑い声を聞いてると死神とか嘘のような、夢に思えてきた。

そう、あれは幻だったんだ。

と、心の中に言い聞かせ、自分の椅子に座る。

すると、友達である、藤影葵と間宮すみれが寄ってきた。

「おはよう。今日はギリギリだったね。どうしたの?」

「ちょっと寝坊しただけかな。あはは」

「そうなんだ。陽菜が寝坊するなんて珍しい」

「そうだよね。疲れてたのかな」

 やっぱりこの二人と話していると落ち着く。

 いろいろな話題で話していると、ガラガラと教室のドアが開き、先生が入ってきた。

「あ、また休み時間ね」

「うん」

 二人は自分の席に戻り、私は先生が話すのを待った。

 そして、チャイムと同時に始まった。

「今日は連絡事項を話す前に転校生を紹介します。どうぞ、入ってきなさい」

 転校生、という言葉に反応しみんなが騒ぎ出す。

 本当に私のクラスに来たんだ。

 あまり変なことを言わないでほしいと願いながら、彼女を見守った。 

「初めまして、この学校に転校することになりました。浜川錐音といいます。よろしくお願いします」

 名前、錐音っていうんだ。

 私はこの時、彼女の名前を初めて知った。

 今まで聞かなかったのが悪いが、とてもいい名前だ。

「錐音さんは、とても遠いところから来ました。皆さん優しくしてあげてくださいね。じゃあ、錐音さん席は」

 先生は錐音の席をどこにしようか悩む。

 すると先生の横を横切り、影が私の元へやってきた。

「私、陽菜の隣にするわ。よろしくね」

「え、あ」

 私の隣といっても、隣には他の生徒が使っている。

 もちろん、錐音が使えそうなスペースはないのだが。

 私が困っていると、錐音は隣の子に席を退くように言い、その席に座ってしまった。

 退いた生徒は困りながら、その場に立ち尽くす。そして、何分かして状況を理解し、他の空いてる席に移動した。

「ええと、それでは、連絡事項を話しますね。今日は……」

 先生は何事もなかったかのように話を進める。

 そんな中、クラスは冷たい空気が漂っていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ