第18話「戦いの前日」
翌日。
人間界、つまり、私でいう現実世界には賞金がかけられた錐音の指名手配のポスターがいくつも貼ってあった。
街中、いたるところに貼っており、恐らく、私たちがあの小屋から去ってから貼ったのだろう。
これを見ると錐音の母親はとんでもないひどい人間だということが分かった。
実の娘に賞金をかけるなんて、母親のすることじゃない。これはあまりにも残酷だ。
私は自分の部屋で集中会議をしていた。
「それで、これからどうするの、錐音。両親とはもう合わないような形になっちゃったし、今日、街に行ったら賞金がかけられた錐音のポスターみたいなのが貼ってあるし、このままだと錐音、本当に捕まっちゃうよ?」
相変わらず、ムスッとしている錐音がいる。
「――そんなことより、錐音! あの話は本当なんでしょうね! いくつもの人間の魂を救ったって話」
無言の続きに、ざくろは言い放った。
そうだ、ざくろはまだ知らないんだった。
錐音がざくろに出会う前まで人の命を救ってたという話を。
「ええ、本当よ。隠しているつもりはなかったんだけど、ごめんなさい、ざくろ」
綺麗な瞳で見つめる。
その綺麗な瞳で見られ、ざくろは後ずさりをした。
「うぅ――ま、まぁ、薄々私も気が付いていたわよ。あの錐音のことだから、いつかしでかすんじゃないかとね」
「分かってくれて、嬉しいわ。それより、この問題のことだけど他のみんなは一切関係しなくてもいいわ。私、一人で解決するから」
強気で言ってるけど、実は本当、涙が溢れている少女に見えたのは気のせいだろうか。
いや、錐音のことだから、意地をはってるのに違いない。
「そんなこと言っても無駄だよ、錐音。この前言ったよね、私たちパートナーだから傍にいなきゃいけないって。もう忘れちゃったの?」
「そ、それは――」
黙り込む錐音。
初めて錐音を上から見ているのではないか?
何だか、幼くなった錐音みたいで、可愛い。
「これは錐音だけじゃない、私たちの問題なんだから一緒に解決しようよ。ねっ?」
「――分かったわ」
やっと納得してくれた。
これでこそ、パートナーだ。
そういうふうに浮かれて喜んでいると、突然。
「一緒に解決してくれるのは嬉しいわ、でも、一つ条件があるの」
「何?」
「絶対に私から離れないこと。いいかしら?」
「何だ、そんなことか。もちろん、いいよ」
これでこそ死神パートナーだ。
私は満面の笑みで、喜んだ。
いや、喜ぶにはまだ早い。
色々と事件を解決してからだ。
でも、これから忙しくなり、こうやってみんなで集まることもできなくなるだろう。
そうなる前の会議みたいなものなので、私は精一杯の時間を大切に使った。
死神パートナーを更新しました。
今回は短いお話ですが、少しでも読んでもらえると嬉しいです。
さて、次回はどうなることやら。
とりあえず、大パニックとはいかないと思いますが、色々なシーンが見れると思います。
それでは。