第17話「修学旅行~最悪な結果~」
「きゃああああああああああ」
猛烈な叫び声が森林公園秋葉から聞こえていた。
その叫び声は、あらゆる人物が目撃して、今、目立っている様子となっている。
「ちょ、ちょっと、桜、止めなさい!」
「無理です! 今、行かないと間に合わないですから」
「間に合わないって何が?」
「そ、それは秘密です。でも、特別な場所だと信じていてください」
何を言ってるのか、それは、白鳥の船の速さで上手く聞き取りづらいが、ざくろは信じてみることにした。
「分かった、あなたに任せるわ」
その瞬間、桜はポっと頬を染めた。
「それじゃあ、いきますよ!」
そして、今さっきより速いスピードで、船を漕いだ。
その頃、錐音と陽菜はというと。
錐音の後を追いかけた陽菜がいた。
前方には錐音――そして、その前にはよく見えないけど影がある。
一体誰なのか私には分からない。
でも、あの言葉。そう、あの言葉は絶対、あの人の名前を言った。
――葵――と。
その真実を確かめるために、私は動いた。
白鳥のボートから降り、前方にいる錐音に注目し尾行を始める。
何だか悪いことをしているようで、気になるが、今はそんなこと考えていられない。
今は気になるのだ。二人が。
葵さんと考えられる影は、森林公園秋葉から出ずに、森の奥深くへと入っていった。
「こんなところに入って、無事に出られるのかな」
帰りのことを心配しつつ、コソコソと隠れながら前へと進む。
周りは木ばかりで、もう公園とは思えないような場所に来ていた。
「待って! 葵!」
大きい声で、錐音が言った。
「錐音――」
疲れて吐息が混じりながら、私はつぶやいた。
錐音のあの必死な姿――。
とても遠くに私は感じた。
だが、追っている影は、止まろうとはしない。
ただ、ひたすら前へ進むわけだ。
「はぁ、はぁ――」
だんだんと疲れが溜まってくる。
どれくらい経っただろうか。
今は冬なので、あまり遅いとすぐに空が暗くなる。
早めに済めばいいことなのだが。
「葵! 葵!」
錐音の声だけが、森の中でこだまする。
その声を聞きながら、尾行を続けた。
「待って! 止まって!」
止まる様子は一切見られないが、私は錐音より、耳に入ってくる違う音に集中した。
それは、人ではない。自然か?
チョロチョロチョロ。
その音を頼りに、辺りを見回してみると、そこには小さい川があった。
こんだけ森の中の奥が深いものだから、こういった自然があるのも間違いない。
そう思った。
水が岩の脇から出ているので、ここは上流なのだろう。
「喉が渇いた、飲んでも大丈夫だよね」
そう言いつつ、私は喉を潤そうとしゃがむと、大きい声が聞こえてきた。
「ちょっと、待ちなさい!!」
何だろうと思い、水を飲むのを止める。
そして、錐音が気になり、前を見ると二人の姿は消えていた。
「そこの水は安全なものじゃない、泥が混じっている水よ!」
この声は、恐らく、あの二人だろう。
「ちょ、ちょちょちょちょっと待って、桜――」
クラクラと目が回り体も回りながら、ざくろは混乱している。
「ざくろ! 桜さん!」
水を飲むのを止め、立ち上がる。
桜とざくろはというと、白鳥のボートを漕ぎながら、こちらに向かって上っていた。
しかも、水があまりない川なのに。
よく上って、しかも、場所が分かったなと感心した。
「えっと、教えてくれてありがとう。おかげで飲まないで済んだよ」
「それはよかった。それより、陽菜さん、錐音さんの姿は――」
「あ、そうだった! 二人とも力を貸して」
桜さんに言われ、私は思い出した。
錐音の後を追っていたことを。
今までのことを二人に話、今に至るが。
「じゃあ、ここで錐音の行方が分からなくなったのね」
「そうなんだよ、ざくろ、分かる?」
「分からなくもないわ。死神はその発する香を持っているからね。このまま香を辿っていけば――」
犬のように、ざくろは私の前へと出て案内を始めた。
その後に、桜さんも進む。
「あぁ~、後ろ姿も綺麗♪」
私の後ろで変な声が聞こえたのは間違いだろうか。
とりあえず、気にしないで進むことにする。
くんくんと鼻を鳴らしながら、私の前に立ってるざくろ。
「追ってるのはいいけど、おかしいとは思わないの? 二人とも」
ざくろが先頭で、そう振り替えて言った。
「え?」
思わず私は声を出した。
「だって、葵さんっていう人は過去に亡くなってるんでしょ? 普通、亡くなってる人が現実世界に現れたりしないはず」
それもそうだ。
普通現れたりしない。
そのことは分かってるんだけど、何故か本物のような気がして仕方がないのである。
もちろん、本物なんていないのだろうが、それを認めてしまう自分がいる。
とても寂しい気分だ。そう、何故か錐音を葵さんに取られちゃうような気がして。
「分かってる、そのことは。まずは葵さんより錐音を見つけないと」
二人とも納得し、捜索する。
すると、ざくろに反応があった。
「ちょっと待ちなさい、二人とも」
「どうしたの? ざくろ」
「見て、あそこ。あそこに小屋があるわ」
見ての通り、遠くのほうに小屋があった。
木造の小屋で、怪しげな雰囲気を放っている。
「あそこに錐音さんが?」
桜が問いかけた。
「分からないわ、でも、私の嗅覚があそこを示している」
と、いうことはいるのに間違いないだろう。
三人はその小屋を目指して、歩き始めた。
小屋が見えてから数キロ歩き、私たちは小屋にたどり着いた。
外から見て、とても古気に見える。
本当に錐音がいるのだろうか。
そっと、小屋の戸に手を当て、開けてみた。
すると、そこにいたのは。
「錐音!」
私が声を出すと、錐音は驚いて、こっちを見た。
「陽菜! それに、みんなまで」
私はともかく、ざくろと桜はお邪魔しちゃったかなというような雰囲気を放っていた。
「錐音、一体、ここで何をしているの?」
「そ、それは――」
言葉を詰まらし、さっきまで見ていたのだろうか、手元にある本に目をくれた。
三人ともその本に注目する。
「その本は?」
「この本は――」
と、言いかけたその時!
急に小屋の中は闇に閉ざされ、さっきまで開いていた戸もガラガラと閉まった。
「どうしたの!?」
「フッフフフフフフ。コレデゼンインダナ、コノヘヤハヤミニトザサレタ」
「この声は葵!」
「えっ!」
錐音の驚きの発言で、私たちもビックリした。
「本当に葵なの!? ねぇ、葵!」
暗闇の中、必死に叫ぶ錐音。
私はそっと見守ることにした。
すると。
「錐音」
「錐音じゃないか」
そこにいたのは、葵さんではなく、錐音の両親だった。
「お、お母様、お父様――」
「やっぱり人間界にいたのね。薄々、気が付いていたわ」
錐音の母親はそう言った。
父親は母親の背後でこっそりとしている。
どうやら、母親がゲームの中でいうとラスボスらしい。
そんな気がする。
「――ごめんなさい、お母様。でも、私は無理やり結婚させるなんて、反対です」
「あの時の会話が聞こえていたようね。じゃあ、今更ですけど、はっきりといいます。今すぐに死神界の男性と結婚しなさい」
ピリピリと熱い母親のムチが飛び舞う会話になっている。
「嫌です、絶対にしません。無理やりさせる結婚なんて、愛情が感じられないただの生贄の儀式と同じじゃないですか。それをさせるなんて、母親のすることじゃ――」
その時、パチーンと大きな鈍い音が響いた。
そう、母親が錐音の頬を叩いたのだ。
私たちは驚いた。
「もう一度言ってごらんなさい! これも一つの愛情なのよ! 反対ばかりしているといずれ死刑になるわ」
「それでも構いません。だって、私は王の結婚よりも既に掟を破ってしまったものですから」
「既に破っただと? 何をしたんだ? ま、まさか、人間を――」
母親の背後にいた父親はノコノコと出てきた。
「はい、遠慮することなく救い続けました。たくさんの人々を」
「な、なん、だと! ま、まさか、私の娘がそんなことをするなんて――」
父親は涙目となっていた。泣いているのか。
「ごめんなさい。だから、死刑になっても構わないんです。王の結婚を断るぐらい」
「そ、そんな、錐音が掟を破ったなんて」
そうだ、まだざくろは知らないんだった。
錐音が今まで人の命を救い守り続けたことを。
ざくろは言葉が出ないくらい驚いていた。
「じゃあ、仕方ないわね。あなた、今から私の娘は死刑人となったことを知りました。これを死神界に知らせねば」
ひどい言い方だ。
錐音の母親はこんなにひどい人だったのか。
初めて出会ったが、こんなにひどい人は初めてだ。
それより、これからどうすればいいのか。
私は検討すら思いつかなかった。
「そ、そうだな。よし、錐音、今からお前は死刑人だ。これから一緒に死神界に行ってもらうぞ」
これは逃げたほうがいいんじゃないのか。
一番先に思いついたのはこれである。
「錐音、行くよ!」
私は錐音の手を強く握って、桜さん、ざくろと一緒に逃げた。
逃げた後、錐音の両親の姿はどうなったのか分からない。
ただ、逃げるだけで精一杯だった。
でも、これで正しかったのだろうか。
本当は逃げなかったほうがよかったんじゃないか。
そう思うが、逃げている間、錐音は私の手を振りほどこうとはしなかった。
ただ、ガッチリと強く手を握り締めていた。
お久しぶりです。
長々と考えながら執筆していたのですが、何だか、話がごちゃ混ぜなお話となりました。
葵から両親へと変わったりと。
まぁ、漫画ならどういう状況が伝えられるのですが、小説って難しいですね。
今でもそう思います。まずは読力がないとダメですね。いろいろと勉強して、頑張ります! あと、桜が言った特別な場所というのは、次話で説明したいと思います。
というわけで、もし、「ここはこういう言葉を持っていったほうがいいんじゃない?」というような場所があれば、言葉を繋げたいと思います。
もし、あったら、教えてください。よろしくお願いします。
それでは。