第16話「修学旅行~怪しい予感~」
今は冬。
修学旅行先は北海道となった。
冷たい吐息を吐きながら、修学旅行一体は北海道へとたどり着いた。
元いた場所とは違い、北海道の寒さは予想と遥かに超えている。
厚めのオーバーを羽織りながら、修学旅行一体はバスに乗る直前だった。
「陽菜、ここが北海道というところなの? 結構寒いわね」
「うん、そうだけど、錐音は知らないの? 北海道を」
「知らないわ。だって、人間界に来たのは今の地元が初めてだったから」
「そうなんだ」
錐音の過去をまた一つ知った。
こうやってだんだん知っていって、一体、私はどうなるんだろう?
この先の将来、上手くやっていけるのか。とても心配だ。
そんなことを考えていくうちに、時間はだんだん過ぎていった。
「あ、あの」
バスに揺られながら、前の席に座っているざくろが口を開いた。
何? というような表情で、桜はざくろに顔を向けた。
「そ、そろそろ手を放してもいいんじゃ」
「あっ! そ、その、ごめんなさい」
「べ、別にいいのよ。これくらい」
少し恥ずかしがりながら、ざくろはデレた。
その横で、桜は顔を真っ赤に染めた。
今までバスの中に入るまで、いや、ずっと桜はざくろの手を握っていたのだ。
まるでカップルのように。
カップル?
そういえば、私は、錐音にどう思われているんだろう?
友達、親友、恋人。選択しはさまざまだ。
たぶん、友達だよね。いや、パートナーだからパートナーしか思われてないのかも。
だんだん頭の中があやふやになり、混乱状態となった。
その横で、声が聞こえた。
「ねぇ、陽菜」
「えっ、な、何?」
「そろそろ着くみたいわよ」
「え、あ、ほんとだ」
考えているうちに、どうやら、目的の場所へと着いたようだった。
もう考えるのは止めよう。
今は旅行を楽しまないと。
修学旅行団体は目的の森林公園秋葉へとたどり着いた。
ここは、もう冬なので紅葉は楽しめないかと思うが、湖があり、広い森林があるのでそれなりに楽しめるだろう。
「さぁ、ここからは自由です。皆さん好きな場所へと移動してもいいですよ」
先生が目の前に集合している生徒たちに声をかけた。
その後、生徒たちは、各グループに分かれ移動し始めた。
私たちの場合、集まって、話しているのだが。
「何処に行こうか、みんな」
「そうね、陽菜に任せるわ」
「そう言われても――」
地元なら分かるが、北海道となるとまた別の世界だ。
何処に何があるのかさっぱり分からない。
ここはとりあえず、学級院長である桜に頼むしか方法はないだろう。
「あ、そうだ! こういう時こそ学級院長である桜さんに頼みたいんだけど」
「私ですか? でも、楽しく案内できるかどうか」
「大丈夫! 桜さん、お願い」
「そう言われると――」
チラっと隣にいるざくろを見つめる。
そして。
「分かりました、私に案内を任せてください」
何が原因で納得したのか、それは私も分からない。
でも、納得してくれたのだから、彼女に任せることにしよう。
森林公園秋葉から出ずに、私たちが向かったのが、湖の一番端だった。
そこには、白鳥の形をしたボートがあり、プカプカと湖に浮かんでいた。
あまり人が混んでいる様子もなく、一番乗り! と言えるようにガラガラ空きだ。
これで儲かっているのか、と、聞きたいとこだが気にせず進むことにしよう。
「たぶん、だけど、錐音とざくろはこのボートに乗ったことないよね?」
「そうね、見るのも初めてだわ」
「死神界ではこういうのなかったからな」
キラリーン。
何か横で息を乱している人物がいるのは気のせいだろうか。
「じゃあ、せっかくだし、乗らないとですね! 思い出のためにも」
桜は二人の前でそう言った。
「そうだね、行こうか、みんな」
錐音とざくろは返事をしなかったが、私は二人を楽しませるために、手を引っ張った。
のはいいのだが、何故か桜さんの様子がおかしいのはどうしてだろう。
四人で白鳥ボートに乗れないので、二人ずつに分けることにした。
私と錐音、桜さんとざくろ。
このペアならいいだろうと思い、早速、ボートに乗り込む。
最初に錐音が乗り、次に私が乗ろうとすると、突然手を出してきて。
「私の手に捕まりなさい。危ないから」
突然の出来事で、私は驚きと、嬉しさでいっぱいになった。
「うん、ありがとう」
遠慮することなく手に捕まり、ボートに乗り込む。
錐音の手は温かった。
ボートに乗り込むと、私たちより先にざくろと桜ペアが漕ぎ始めた。
漕ぎ始めたのはいいものの、スピードが私たちより早かった。
「ざくろ、ガイドブックを見て調べてみたら、いい場所があるからそこに案内してあげるわね。だから、その間、もうちょっと待っててね」
と、何とか、かんとかいい残して、ものすごい速さでビューンと飛ばしていってしまった。
その後に残るのが、スピードで出た高い波だった。
ゆらゆらと私たちのボートが揺れ始める。
「大丈夫かな、沈まないよね、このボート」
不安になり、錐音に問いかける。
「大丈夫よ、落ち着きなさい、陽菜」
そうはいうものの、ボートは高波でゆらゆら揺れる。
落ち着いている錐音がすごいと思った。
「さぁ、私たちも行こうか」
そういって、行こうとすると、突然錐音は漕ぎだした足を止めボートから外へと出た。
どうしたんだろう、と、思い私もボートから離れる。
そして、錐音が見ている方向へと視線を動かした。
するとその先にいたのは、可愛らしい女の子だった。
髪が少し長く、二つの赤いリボンで止めてある。
あれ?
どこかで見たような聞いたような人物だなと思って考えていると、突然、錐音は。
「――あれは、葵」
そう言い残して、その人物を追いかけて行ってしまった。
残された私は、ポツーンと錐音の後ろ姿を見つめた。
そして、大変なことに気が付き、私も錐音の後を追った。
どうして追ったのか。
それは何故か悪い予感と変な気持ちが揺れただけである。
後編は濃厚になるかと思います。
でも、期待し過ぎると、後が下がってしまうのでいつも通りに
読んでいただければ嬉しいです! では。