↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/23

第12話「怨霊」

夕方、私と錐音は先に帰った。

 桜さんは今日から泊まりとなったので、自宅に戻り、着替えとか持ってから来るそうだ。

 それにしても、大変なことになった。

 部屋に行き、私服に着替えながら話した。

「錐音、あれで本当によかったの? もしかしたら錐音の正体がバレるかもしれないのに」

「別にいいのよ。バレずに仕事をするってことは不可能なことなんだし、こっちからバラしたほうが楽でいいわ」

 結構あっさりとしているんだな。

 まぁ、確かにこのまま隠したまま続けていくことは無理なこと。

 いずれかは、バレることだし、気持ち的にもこっちからバラしたほうがこれから気楽でいられる。

 錐音の考えは正しかった。

「そっか、錐音がそういうならそうするよ」

 制服から私服へと着替えた。

 私はベッドの上に掛け座り、錐音は窓から外を見ている。

 すると家の中にチャイムの音が響いた。

 恐らく、桜さんが来たのだろう。

 案外早かったな。

「じゃあ、桜さんを連れてくるね」

「ええ、お願いするわ」

 錐音を部屋に置き、私は玄関へと向かった。

 玄関にはふんわりとした服装で、桜さんが待っていた。

「お邪魔します」

「いらっしゃい、さぁ、中に入って」

 そういえばここ最近、錐音とざくろさん以外他の人を部屋に入れてない気がする。

 あれから、錐音と一緒に住むようになったり、仕事とかで他の人を呼ぶことがなくなったな。

 あれこれと思い出しながら考え、あっという間に部屋に着いた。

 自分の部屋だけど、念のためノックをする。

 コンコン。

「どうぞ」

「桜さん連れてきたよ」

 ドアを開けると錐音が座布団の上に座っていた。

「お、お邪魔します」

 部屋に入って急に桜さんは落ち着かない感じになった。

 一体どうしたというのだろう。

 顔を赤く染めながら、座布団へと座る。

「どうかしたの?」

「い、いえ、何でもないです。それより本題のほうへと入らせていただきます。これからずっと二人のことを監視します。いいですよね?」

 監視って、堅苦しい言い方だな。

 もう錐音はバレてもいいといってるし、ここで全て話してしまったほうがいいだろう。

 全てを話す気満々でいると、錐音が割り込んできた。

「構わないわ。好きにしなさい」

「分かりました。私の好きなようにします」

 えっ、何だか、錐音の考えが分かるようで分からない。

 このまま時間の流れに乗れば知ることがくるのだろうか。

 とりあえずこの時間に逆らわないよう、全てを任せてみることにした。



 突然、両親は町の集会所に呼ばれてしまった。どうやら帰りが遅くなるようだ。

 そして弟も友達の家に泊まることになったらしく、さっき荷物をまとめて出て行ってしまった。

 夕食は母が用意してくれていたので、それを食べ、残るはお風呂に入るだけとなった。

 お風呂は既に沸かしてあり、いつでも入れるようになっている。

「そろそろお風呂入ろうか。先に誰が入る?」

 さっきまでテレビを見ていたが、誰も入る気配を見せないので、話題として出してみた。

「陽菜、先に入りなさい。私は後でいいわ」

 錐音が最初に声を出した。

 そういわれても、ここは先にお客さんから入らせるべきだろう。

「う~ん。私も後でいいかな。最初、桜さんが入ってきなよ」

「私ですか、いえ、遠慮します。ここは陽菜さんの家なんですから、最初は陽菜さんからどうぞ」

「いやいや、桜さんからどうぞ」

「そんな、陽菜さんから」

 これは繰り返しループになりそうだ。

 途中、会話が止まった。

「もしかして私に入らせて、二人でどこか行こうとしてないですよね?」

 どうしてそうなる。

「してません。私はただ、お客さんから最初に入ったほうがいいかなと思っただけで」

「本当ですか?」

「本当です」

 いちいちこういう疑いの対応をするのが面倒になってきた。

 私ならここで真実を話すのだが、そういう雰囲気じゃないので胸に閉まっておく。

「分かりました。なら、お言葉に甘えて入らせてもらいます」

 何とか信じてくれた。

 桜さんは着替えを持ち、洗面所へと向かっていった。

 


 桜さんがお風呂に入って七分ぐらいが経とうとしていた。

 相変わらず、私と錐音はテレビを見ている。

 テレビの内容は刑事もののドラマだ。

 最近はドラマを見ることが多い。

 もしかして錐音はドラマが好きなのだろうか。

 ふと、そう思った。

 カチカチ、時計の音が微かに聞こえる。

 刻々と時間は流れ、いつか私がお風呂に入る時がくるだろう。

 そう思っていると、突然、家中が真っ暗になった。

「て、停電!?」

「そうみたいね。陽菜、大丈……そうでもないわ」

 真っ暗で何も見えない。

 だが錐音には何かが見えているようだ。

 様子がおかしい。

「どうしたの? 錐音」

「どうやら悪い魂が出たみたい」

 悪い魂? 

 それってつまり。

「それって……」

「怨霊よ。上手く成仏できなかった魂が悪い怨念を持ってこうして現れることがあるの」

「そうなんだ……怨霊…何とかして成仏してあげられないの?」

「できるわ。方法はこの鎌で倒すこと。これだと本当の死神みたいな行為になるけど、救うこともできる」

 カチャリ、大きい鎌を錐音は取り出した。

 暗闇の中でも、雲で隠れていた月が出てきて家の中を照らし始めたので、見ることができた。

 錐音が鎌を出すのはこれで二回目だろうか?

 いつもの仕事は鎌を使わず、手を胸に当てて救っているので鎌は必要としない。

 本当は鎌を持っているこの姿が死神といえるのだろう。

でも、私は何も持ってない錐音のほうがよかった。

「来るわよ」

 そういうと、錐音は鎌を構えた。

 あ、そういえば、桜さんは大丈夫なのか?

 今は真っ暗、しかも、怨霊がいるとなると彼女が危険かもしれない。

 私は、どうか無事でいてと願い続けた。



 その頃、桜は暗闇の中お風呂場にいた。

 全裸で暗闇の中動くことができず、ただ、シャワーの前で立ち尽くしている。

 何も見えないので、少しでも動いて滑ってしまったら大変だ。

 もし滑ったら怪我だけでは済まないかもしれない。

 桜は、濡れた体がだんだん冷えていくのを感じた。

「……さ、寒い……急に家の中が真っ暗になって…まだ電気が直らないのかな」

小刻みに桜の体は震えていた。

 今は夏であまり寒いとは感じないが、どこからか冷気が漂っている。

 そのせいで、冬並みに寒いと感じるのだ。

「……早く戻って、二人を監視しないといけないのに……クシュン」

 寒さで軽くくしゃみをした。

 このままだと風邪を引くだろう。

 何とかして戻りたいが、そうもできない。

 じっと寒さにこらえて、待っていると、背後に気配を感じた。

(誰かいる。もしかして陽菜さんかも)

 そう思い、声をかけようとする。

だが、突然背後から首を絞められた。

「……うっ……く、苦しい…」

 桜の首を誰かが強い力で締め付けている。

 何とかして抵抗しようとするが、桜の力ではどうすることもできない。

「…ごほっ……うっ…」

「ワレ、オンリョウナリ。オマエノイノチガホシイ。オマエモシンデ、ワレトオナジニナレ」

 背後で声が聞こえたと同時に、桜は鳥肌を立たせた。

「誰か……」

(助けて!)

 助けを求めようとしたが、声が最後まで出なかった。

 桜は心の中で叫んだ。

(お願い、誰か)

「ワレトオナジヨウニナレ」

 だんだんと力が強くなり、桜は少しずつ意識が薄れていく。

 両腕にも力が入らず、だらんと落とした。

 その時、お風呂場の入り口がバンっと開いた。

「まったく世話がやけるわね。今頃、私が助けにこなかったら、どうなっていたことか」

 声が聞こえた。

 桜の背後にいる怨霊は、慌てて後ろを振り返る。

 その時、桜は薄っすらと目を開け、謎の声の人物を見ようとしていた。

(あ、あれは……)

 お風呂場の窓から差し込む光に照らされて、ツインテールの女の子が映し出されていた。

 手には大きい鎌を持ち、月明かりの反射で光っている。

(き、綺麗な子……美しい……)

 桜は彼女の姿を捉えると、目を閉じ気絶した。

「オマエハシニガミ。イツモワレタチノジャマヲスルモノ、ココデウラミヲハラス」

 怨霊は桜を放し、ざくろに飛び掛かった。

「アゥアーーーーー」

「私を倒せるならやってみなさい! はぁぁっーーー」

 ざくろは大きい鎌を持ち上げ、怨霊に横から突き刺した。

「ウワアアア」

 すると怨霊は倒れ、サァッと砂のように消えてしまった。

「あっけなく終わったわね。ふぅ、さて」

 ざくろが見た先には、全裸の桜が倒れていた。

「……ほんと、間に合ってよかった」

 桜の元に近づこうと歩き出す。

 このままでは風邪を引いてしまうからだ。

 早く運んでここから出さないといけない。

 ざくろは暗闇の中、歩を進めると、途中せっけんに足を乗せ滑ってしまった。

「きゃっ」

 そのまま桜の元へ倒れる。

「すーっ、いたた。石鹸で滑るとか、ほんとかっこ悪い」

 何とかして少し起き上がった。

 今のは恥ずかしいもので、誰も見てないし内緒にしようとざくろは思った。

「今のはなかったことに。よし。この子を運ばないと」

 本題を思い出し、桜へ手をかける。

 まだ電気が点かないので、周りも自分の足元も分からない。

 だが、少しずつでも彼女を移動させないと、風邪を引いてしまうので急いだ。

 すると柔らかい物体に手が触れた。

「ん? これは何?」

 いくら触っても柔らかい。

 そして弾力がある。

「こ、これは」

 プニュプニュ。

 ざくろは感動していた。

 今、自分にないものがここにあり、触っている。

 こんなに柔らかいものなのか。

 不思議な気分でじっくりと楽しんでいると、気絶していたはずの桜が目を覚ました。

「うっ……んぅ~」

 意識が戻ったことに気が付き、ざくろは慌てて手を離した。

「よ、ようやく起きたのね」

「え、あ、え?」

 そのまま見つめ合う。

 すると三十秒後、桜は大きな声を出した。

「きゃああああ」

「な、どうしたの? 急に」

「し、知らない人がここに」

 桜はまだざくろと会ったことがない。

 どうやら泥棒かと思われているようだ。

 軽く溜息をつき、立ち上がった。

 また月明かりで照らされ、ざくろの顔が見えた。

「あなたのことを助けてあげたのよ。助けられたことに感謝することね」

 そういうとざくろはお風呂場から出て行った。

 その頃、桜は思い出した。

 あの姿は月明かりで照らされ見たものだと。

 そして大きい鎌を持ち、桜を見つめていたこと。

 ツインテールと綺麗な容姿は忘れられない、存在となりそうだった。



 あの騒動から数時間後、ようやく明かりも付き、桜は洋服にやっと着替えることができた。

 みんな陽菜の部屋で集まっている。

「でも、みんな無事でよかった。桜さん急にこんなことになって、ごめんね」

「いいえ、大丈夫です。気にしないでください」

 そうはいうけど、もうこんなことになってしまったんだから、隠すことも無理なことだろう。

 私は全てを話そうとした。

 だが、またそこに。

「もうこの話は終わりにしましょう。今日は疲れたから早めに寝るわよ」

 錐音がそういった。

 確かにいろいろなことがあって疲れた。

 また錐音とは私と一緒にいたから分かるけど、強敵だったらしく何度も押されそうになっていた。

 このまま負けるかもしれないと思ったが、恐怖を破り、私は信じることを諦めなかった。

 そのおかげか、錐音は怨霊に勝つことができ、私たちは助かった。

 


 錐音の誘いにより、みんな一緒に寝ることになった。

 といっても、四人も私のベッドで寝るには狭すぎるので、ざくろさんと桜さんは床に布団を敷いて一緒に寝てもらうことにした。

 私と錐音はベッドだ。

「おやすみ」

 電気を消し、ベッドへと戻った。

 その頃、桜はもんもんと考えていた。

(あれから何も話せなかった。ちゃんとお礼を言いたいのに)

 ずっと桜はざくろの背中を見つめている。

 そして。

(少しだけならいいよね)

 そう思い、ざくろのお腹に手を回した。

 だが、思いっきりではなく、ほんの軽くだ。

 その頃、ざくろはというと。

(ちょ、ちょっと、この子は急に何を)

 ピッタリと桜とざくろはくっ付いている。

 ドキドキとざくろが感じていると、背後から声が聞こえた。

「……今日は助けてくれてありがとうございました……」

 とても心が籠った声で、ざくろはふっと軽く微笑んだ。

 そして心の中で。

(どういたしまして)

 その後、二人はぐっすりと眠りについた。




甘いお話が少なかったですね。

でも何とかして部分的に入れてみました。

次回も頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。