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第一話
吉田が自宅アパートのトイレに閉じ込められたことに気づいたのは、ある日の早朝、寝ぼけて用を足した後だった。
しばらくスマホをいじっていたので、最初は気が付かなかった。ドアノブを回したら、手応えがなかった。そして、スポッとドアノブが外れて、便座に戻るような格好で尻餅をついた。
吉田はその時、自分の置かれた状況の間抜けさに思わず笑ってしまった。人間、追い詰められたら笑うんだな、と思った。
さてどうしようか、このトイレには窓がない。外へのアクセスはあくまでこのドアだけだ。
「まいったな……どうしよう」
とりあえずスマホを見てみる。電池は満タンに近い。中の良い友達にLINEをしてみる。
『トイレに閉じ込められたなう』と、親友のヨシキに送ってみたものの、既読が付かない。
あーあ、と大きく手を挙げてあくびをした時、トイレの壁に手がぶつかり、「痛っ!」と声を上げた反動で、手に持っていたスマホが便器の中にぼちゃん、と水没した。
スマホは、画面はブラックアウトせずにそのまま表示されているようだが、触っても反応せず、こちらから操作できない状況になっていた。
吉田がトイレに閉じ込められてから、一時間が経過しようとしていた。




