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揺らぐ魔力と、微細な歪み

午後の環術実習は、

基礎的な魔力球の形成だった。


レイルが手をかざすと、

胸の環紋がかすかに熱を帯びる。


(……まただ)


数日前までは感じなかった脈動。

それが魔力の流れに微妙な“ノイズ”を与えているようだった。


隣の生徒が魔力を練っている。

その流れが、なぜかレイルの胸と“共鳴”するように揺れた。


(ん……? なんか変な……)


その瞬間、生徒の魔力球がぶれた。

ほんのわずか。

だがその揺らぎは予想以上に大きく膨らみ始める。


「……危ない」


レイルの胸の奥が、

心臓とは別のリズムで強く跳ねた。


次の刹那、破裂音が走る――


はずだった。


(あれ……?)


耳元の空気が柔らかく変形する。

光の膜がレイルの周囲に“だけ”ふっと広がり、

余波が吸い取られるように消えた。


視界の隅で揺れる白銀――


「セラ……?」


瞬きすれば消えそうな薄さで、セラが立っていた。


彼女は魔力の衝撃を遮るように片手をかざしている。

が、その指先は崩れそうに揺れていた。


(……無理してる)


レイルが動いたというより、

胸の音に導かれた、という感覚だった。


暴走は収まり、生徒たちがざわつく。


アゼル先生が駆け寄り、


「レイル。今の……“見えて”いたのか?」


鋭い視線が向く。


「いえ……ただ、胸の音が……変で」


(言ってしまった)


だが先生はその言葉を否定しなかった。


「……音、か。

 その感覚は、普通の魔術師は持たない」


レイルの胸が跳ねる。


そのとき、セラがそっと嘴だけ動かして言った。


「……あなたの流れが乱れると、周りにも影響が出る。

 だから……気をつけて」


次の瞬間、彼女の姿は光の粒になって溶けた。


残されたのは、

胸の奥で不規則に鳴り続ける音だけだった。

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